続・BOY&GIRL

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向こうのヒカルと夢で会ってから7日が経過した。


元の体に(世界)に戻るのに
「そんなに掛からない」と思っていたヒカルは少し焦り始めていた。
というのもこっちの世界(男)になってからあまりにもアキラとの
接触が少ないのだ。

結婚する前からアキラとは半同棲状態で
結婚してから出張や遠征でお互いに行き違いになることは
よくあった。

だがそんな状態だったからこそ一緒にいられる時間を
大事にしてきたし
お互いを独占しようとする気持ちが強かったのだと
今さら感じてる。

アキラとの生活が当たり前になっていた自分にとってこちらの
毎日は味気なくて、『会いたい』という想いが日々募っていく。

向こうのヒカルが動いてくれないことにはこのまま
元の世界に戻れる糸口がつかめないような気さえする。

そんな人任せに頼るのも歯がゆかった。

その危機感のような思いは朝を迎えるたびに
膨らんでいく。いつになったら戻れるのか?
アキラに会えるのか?




今日棋院でアキラもオレも対局があった。
ひょっとしたら捕まえられるかもしれないと思ったオレだったが
結局アキラの対局は思った以上に早くてオレは肩すかしを
食らった気分だった。

このままではダメだ。
自分から何か起こさないと。
オレは携帯を握っていた。


『進藤・・どうかした?』

アキラの声はいつもと変わりない。その声を聞いただけで
少し前向きな気持ちになった。

「あっいや。今日お前に会えるかなって思ってたからさ。」

あれこれと考えてた言い訳の一つだ。

『ああ、早く終わったんだ。君の対局を観戦していたんだけど
思ったより時間がかかりそうだなっと思って席を外してる間に
君の対局も終わってた。』

苦笑したアキラの声を聞いてヒカルはホッとした。
アキラも会いたいと思ってくれていたのだ。

「・・・明日会えねえかな。」

会えない?って聞いた瞬間ドキッとした。対局したいと
誘った方がが良かったかもしれない。

『明日夕方なら・・・。いつもの碁会所でどうだろう。』

「出来れば二人で会いたいんだけど。」

言ってしまった後、もっと心臓がバクバクした。
変に思われたんじゃないか。期待を持たせてしまうのも不味い。

『だったら僕のマンションに来る?』

「あれ、お前って・・・。」

『一人暮らししてたっけ?』と聞こうとしてオレは口を閉じた。
前に来たときは両親と一緒に暮らしてたのだ。
でももしかしたらこちらのヒカルは知っていたかもしれない。

『最近一人暮らしを始めたんだ。』

「そっ、そっか・・・。」

明らかに挙動不審な自分の物言いに内心焦った。
会えばもっと辻褄の合わないことがあるかもしれない。

「明日駅まで迎えに行こう。」

「わかった。」



電話を切ってヒカルは深い溜息を吐いた。

オレはアキラを渇望してる。それは自分の世界のアキラに対してで
こちらのアキラに
その想いをぶつけてもいいのかヒカルにはわからなかった。





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