SAI〜 この手がキミに届くまで 3 「悪い。オレアキラを怒らせるようなまずいこと言ったんだな?」 謝罪はしたものの彼は僕の言ったことを全く 理解してはいないだろうことは想像がついた。 謝ったのも僕の機嫌を損ねたと感じたからだろう。 そう思うとそれ以上何もいう気になれず僕は小さくため息をついた。 その時だった。 ケタタマシイほどの警報音がこの静かな川のほとりまで響いたんだ。 全く似つかわしくない音だが、僕の緩んだ緊張感を取り戻すには 十分だった。 「悪いけど僕は行くよ。」 「何だよ。アキラ何があったんだよ?」 「堕天使たちが街に現れたんだ。」 僕がその場から走り出すとヒカルも僕のあとを追ってきた。 「待てよ。お前サイに載るんだろ?だったら俺も行く。」 「君は今日来たばかりでそれに・・。」 一瞬振り向いた僕は彼のなりを見て、こんな時だというのに 苦笑してしまった。 全身水を滴らせながら彼は懸命に僕を追いかけてたんだ。 全く彼といると調子が狂ってしまう。 「今日きたばっかでもオレ、サイの事お前よりよく知ってるぜ。」 「それはどういうことだ?」 「こういうことだって。」 彼は得意げにいうと僕の腕を突然掴んだ。 握られた手から不思議な感覚が流れ込んでくる。 何かとてつもなく大きな力にのみこまれてくような。 「あっ・・・くぅ」 その力を拒むことは出来なかった。 心の奥でヒカルの声がする。 『これがサイ?!アキラわかった。今すぐそこに連れて行ってやるから。』 その瞬間僕とヒカルは眩しい光に包まれていた。 「これは・・?」 「しっかり掴んどけよ。でねえと歪みに落っこっちまうからな。」 光の中ホンノ数メートルばかり先、ぽっかりと開いた空間から見慣れた風景が覗いていた。 『あれは・・・サイ?!』 開けた視界に悠々とその背に大きな翼を持つサイが立ちはだかっていた。 「これがサイ!?すげえ。」 ヒカルはサイを眩しそうに見上げた。 さっきの軽い好奇心ではなくヒカルのそれはサイへの憧れのような もののような気がして僕はなぜかそれが気に入らなかった。 「ヒカル、僕が行かないといけないのはここではなくて 司令室で・・・って聞いているのか、君は!?」 僕が声を掛けてもサイに見惚れたままのヒカルに僕は大声を上げた。 「えっ?ここじゃなかったのか?」 全く彼と会話していると頭が痛くなりそうだ。 「堕天使の構造に合わせてパイロットの組み合わせは マザーコンピューターと司令が決めるんだ。 だから急いで司令室にいかないと。」 「ふ〜ん。よくわかんねえけど面倒くせえんだな。」 ヒカルが小首をかしげたその時突然なんの予告もなくサイが作動し始めた。 パイロットがサイに転送されるんだ。 「今度は何だよ?」 「司令室にいるパイロットの誰かがサイに載りこむんだ。 ここにいたら巻き込まれる。ヒカル、こっちへ」 差し出した手はパンと払いのけられた。 「ヤダよ。オレサイに載りにきたんだぜ?なのに何で逃げなきゃなんねえ んだよ。」 「君はまだそんなことを・・・。」 「オレはあいつに用があるんだ。」
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