ネット最強戦の予選が始まったのはアキラがストレートで棋聖を制した
後だった。
予選は至ってシンプルだった。
期間中にログインしてランダムで当たった相手と
対局し3人勝ち抜けば第一予選突破になる。
ネットにプロ登録さえしていれば申し込みも何も必要なかった。
勲も新初段なので登録して出場したが2人目に中国の王星と
当たって敗退した。
ヒカルはぎりぎりまで待って最終日に入場し難なく3人を勝ち
抜き第1予選を突破した。
「やっぱ兄ちゃん強えなあ。」
勲は初めて参加した棋戦を前に溜息をついた。
「勲は運が悪かったよな。王さんだとオレでも難しかったさ。」
「うん、でも世界のTOP棋士と対局できたし満足かな。」
勲はこの棋戦でプロの世界に踏み入れたことになる。
ただネットという事もあってその手ごたえは薄いようだった。
「勲はこんなことで満足してちゃダメだぜ?
これからどんどん世界に出ていくんだからな。」
「あはは、そうだよな。けど最強戦は兄ちゃんに任せる。」
「あのなあ、」
そんな話をしていると大会運営部からのメールが届いた。
メールには対局日時の希望やこれからの規則や注意が細かく書かれ
ていた。
次の対局からは日程は本人の希望が出せるようだった。
「兄ちゃんどうしよう?」
「そうだな・・・。」
勲の都合のつく曜日と時間を選んでクリックするとすぐに
対局日と時間が送られてきた。
「えっとなんだって。」
メールを追ってたヒカルの視線が対局相手で止まった。
「TOYA KOYO・・・って塔矢先生!!」
「塔矢行洋って塔矢先生のお父さんの?」
「ああ、そうだな。」
ヒカルは胸が高揚するのを覚えた。先生はプロを退いたが
フリーで今も世界で活躍している。
今は中国棋戦に参加してるはずで
この最強戦の事を知って中国から参戦してきたのだろう。
いや、もしかしたら『sai』との自分との対局に賭けてきたかも
しれなかった。
「オレだけじゃなかったな、」
「どういう意味?」
「この棋戦に塔矢先生も参戦してきたってことさ。
緒方先生には感謝しねえとな、」
ネット最強戦のsaiVS塔矢行洋の対戦カードはすぐに話題となり
広まった。
研究会でも和谷が興奮気味にこの話題を口にした。
「saiと塔矢名誉名人の対局だぜ。こんなの普通の棋戦じゃ
ありえねえからな。
臨時研究会開いてリアルで検討しようぜ、」
「先生ごめん、オレその日は学校終わるの遅くて、」
ヒカルはわざと勲の小学校のある日に対戦を選んだ。
母さんは「まだ小学校なのに」と嘆いたが、プロを決めた
勲にはそこまで強く言わなかった。
それはヒカルがプロになった時の経緯もあるからだが。
「ええ、そうなのか?勲学校なんて休んじまえよ、」
和谷の何食わぬ言葉に伊角が顔をしかめた。
「和谷何言ってるんだ。勲はまだ小学生なんだからな。今は学業が
優先だろ?4月からはプロとして活動するんだし、」
そう言ってくれた伊角に勲はひどく申し訳ない気持ちになって話題を
変えた。
「それより伊角先生の次の相手は決まったの?」
「それなんだけどな、」
そう応えたのは伊角でなく和谷だった。和谷は残念ながら3人目で
敗退していて勲は首をかしげた。
「楽平なんだ。」
「れぇぴん?ってどこの国のプロ?」
勲が疑問に思ってる隣でヒカルが声を上げて笑っていた。
和谷も苦笑していて真面目なのは伊角だけだった。
勲にはさっぱりわからなかった。
そんな勲に伊角が説明してくれた。
「楽平っていうのは中国棋院所属のプロで和谷そっくりなんだ。」
「和谷先生に似てるの?」
「ああ、もうそっくりでさ。兄弟いや、双子か、」
「ええっ?!」
勲は思わず和谷の顔をじっと見た。
「和谷先生と同じ顔の人が中国にいるんだ。」
感心する勲にヒカルがこっそりつけたした。
『楽平は伊角さんを慕ってて、和谷の事を目の敵にしてるんだ。』
勲は思わずヒカルに声を掛けた。
「そっくりなのに?」
『だからライバル意識を燃やしてるんだろな。』
勲の一人ごとに和谷が首をかしげた。
「勲どうしたって?」
「ううん、何でもない」
慌てて勲は首を横に振った。
「でもオレ伊角先生と楽平の対局興味あるな。」
それに伊角が苦笑した。
「オレは楽平とはよくネット碁で打つから
和谷と楽平の直接対局が見たかったけどな、」
「確かに、二人で対局してたらどっちか先生なのかわからなくなったり
して面白そう!!」
「勲まで、伊角さんもう勘弁してくれよ。」
和谷はげんなりして溜息をついた。
後だった。
予選は至ってシンプルだった。
期間中にログインしてランダムで当たった相手と
対局し3人勝ち抜けば第一予選突破になる。
ネットにプロ登録さえしていれば申し込みも何も必要なかった。
勲も新初段なので登録して出場したが2人目に中国の王星と
当たって敗退した。
ヒカルはぎりぎりまで待って最終日に入場し難なく3人を勝ち
抜き第1予選を突破した。
「やっぱ兄ちゃん強えなあ。」
勲は初めて参加した棋戦を前に溜息をついた。
「勲は運が悪かったよな。王さんだとオレでも難しかったさ。」
「うん、でも世界のTOP棋士と対局できたし満足かな。」
勲はこの棋戦でプロの世界に踏み入れたことになる。
ただネットという事もあってその手ごたえは薄いようだった。
「勲はこんなことで満足してちゃダメだぜ?
これからどんどん世界に出ていくんだからな。」
「あはは、そうだよな。けど最強戦は兄ちゃんに任せる。」
「あのなあ、」
そんな話をしていると大会運営部からのメールが届いた。
メールには対局日時の希望やこれからの規則や注意が細かく書かれ
ていた。
次の対局からは日程は本人の希望が出せるようだった。
「兄ちゃんどうしよう?」
「そうだな・・・。」
勲の都合のつく曜日と時間を選んでクリックするとすぐに
対局日と時間が送られてきた。
「えっとなんだって。」
メールを追ってたヒカルの視線が対局相手で止まった。
「TOYA KOYO・・・って塔矢先生!!」
「塔矢行洋って塔矢先生のお父さんの?」
「ああ、そうだな。」
ヒカルは胸が高揚するのを覚えた。先生はプロを退いたが
フリーで今も世界で活躍している。
今は中国棋戦に参加してるはずで
この最強戦の事を知って中国から参戦してきたのだろう。
いや、もしかしたら『sai』との自分との対局に賭けてきたかも
しれなかった。
「オレだけじゃなかったな、」
「どういう意味?」
「この棋戦に塔矢先生も参戦してきたってことさ。
緒方先生には感謝しねえとな、」
ネット最強戦のsaiVS塔矢行洋の対戦カードはすぐに話題となり
広まった。
研究会でも和谷が興奮気味にこの話題を口にした。
「saiと塔矢名誉名人の対局だぜ。こんなの普通の棋戦じゃ
ありえねえからな。
臨時研究会開いてリアルで検討しようぜ、」
「先生ごめん、オレその日は学校終わるの遅くて、」
ヒカルはわざと勲の小学校のある日に対戦を選んだ。
母さんは「まだ小学校なのに」と嘆いたが、プロを決めた
勲にはそこまで強く言わなかった。
それはヒカルがプロになった時の経緯もあるからだが。
「ええ、そうなのか?勲学校なんて休んじまえよ、」
和谷の何食わぬ言葉に伊角が顔をしかめた。
「和谷何言ってるんだ。勲はまだ小学生なんだからな。今は学業が
優先だろ?4月からはプロとして活動するんだし、」
そう言ってくれた伊角に勲はひどく申し訳ない気持ちになって話題を
変えた。
「それより伊角先生の次の相手は決まったの?」
「それなんだけどな、」
そう応えたのは伊角でなく和谷だった。和谷は残念ながら3人目で
敗退していて勲は首をかしげた。
「楽平なんだ。」
「れぇぴん?ってどこの国のプロ?」
勲が疑問に思ってる隣でヒカルが声を上げて笑っていた。
和谷も苦笑していて真面目なのは伊角だけだった。
勲にはさっぱりわからなかった。
そんな勲に伊角が説明してくれた。
「楽平っていうのは中国棋院所属のプロで和谷そっくりなんだ。」
「和谷先生に似てるの?」
「ああ、もうそっくりでさ。兄弟いや、双子か、」
「ええっ?!」
勲は思わず和谷の顔をじっと見た。
「和谷先生と同じ顔の人が中国にいるんだ。」
感心する勲にヒカルがこっそりつけたした。
『楽平は伊角さんを慕ってて、和谷の事を目の敵にしてるんだ。』
勲は思わずヒカルに声を掛けた。
「そっくりなのに?」
『だからライバル意識を燃やしてるんだろな。』
勲の一人ごとに和谷が首をかしげた。
「勲どうしたって?」
「ううん、何でもない」
慌てて勲は首を横に振った。
「でもオレ伊角先生と楽平の対局興味あるな。」
それに伊角が苦笑した。
「オレは楽平とはよくネット碁で打つから
和谷と楽平の直接対局が見たかったけどな、」
「確かに、二人で対局してたらどっちか先生なのかわからなくなったり
して面白そう!!」
「勲まで、伊角さんもう勘弁してくれよ。」
和谷はげんなりして溜息をついた。