ヒカルの碁パラレル 暗闇の中で 

  パートナー1






               
押し寄せた暗闇に飲み込まれる。

贖う術などない。もがき苦しむことを諦めるとやがて心地よくさえ思え
闇に体も意識も預ける。

刻まない、広がり続けてく漆黒は永遠のようで、
死ぬことも許されなくて。
何も感じなくなった瞳がそれでも何かを求めていた。


昇る日の光を、この手を差し伸べる誰かの手を・・










ヒカルはどこか緊張した面持ちでそのマンションの部屋へと向かった。
今日初めて会うのは、これから仕事のパートナーとなる人物だった。

「もう来てるかな」

少し高鳴る胸を抑え、飛び込んだエレベーターの中はヒカル一人だった。

『先回りしてみてきましょうか?』

そういった佐為はエレベーターの中ふわりと浮く。

「いいよ、どうせそんな事しなくてもこれから会うんだぜ?」

『そうですが』

「佐為も気になるんだろ?」

『そりゃそうですよ。ヒカルの仕事のパートナーになる相手ですよ。
いわば私にとっても相棒です』

ヒカルは苦笑する。エレベーターの扉が開き1歩を踏み出す。
夕暮れ時、高層の風が強く吹いてた。見渡せば高台の見晴らしに遠く賑わう港まで見えた。


「いいところだよな。こんな所借してもらえるんだ」

隣で見ていた佐為が柵を乗り越える。
ヒカルもお化けだったらやっていたかもしれない、と思う。

『うわあ、いい眺めですね。でも、地に足が着かないのは怖いです』

もともとお化けなのだから『地に着いてないだろう』という言葉は飲み込んで
ヒカルは笑った。

「だったらやるなよ」

『やってみたかったのです』

「オレがやったら即死だぜ」

廊下に戻てきた佐為はお化けのくせに足が震えていた。こういうところは妙に人間くさかった。





今日初めてあう仕事のパートナーとはここを共用で使うことになってる。
住んでよいわけだが、ここに住む必要があるわけでもない。
仕事として二人で使っていいという事だ。
そしてその仕事というのはおよそ一般的、表立った仕事でない。そういう意味では
佐為がいった、『私にとっても相棒』はその通りだった。

『ヒカルどうかしましたか?』

「いや、お前にも迷惑かけるなってさ」

『私の方がです』

ヒカルはそれに答えられなかった。
ヒカルに『佐為が見える』、『佐為と意思疎通できる』ことは能力の一つだった。
もしそうでなければ、『こんな危険な仕事に就くこともなかった』かもしれなかった。


けれど、それは佐為のせいじゃない、とヒカルは思う。

今から会う『塔矢アキラ』がどういう能力者なのかわからないが。
ヒカルはこのマンションで一番高い部屋の角部屋にやや緊張した面持ちで
立つ。

インターフォンを押し、しばらく待つ。
鍵は持っていたが「相手がいるのに勝手に開けたら」と思ったのだ。
ややあって、『はい』とインターフォン越しに返ってきた声は優しいものだった。

「進藤ヒカルです」

「すまない。今手が離せないんだ。合鍵もってるなら入ってきてくれないか?」

鍵を通し中に入る。
部屋には最小限のものは揃っている、と聞いていたが、本当に『最低限』のもの
だった。まず、ラックはあったがスリッパは玄関に見当たらない。

そのまま進めば奥のリビングに大きな段ボールがいくつも転がる。
『彼』はそのリビングで背の高いベランダのサッシにカーテンを掛けていた。

「部屋、カーテンついてなかったのか?」

「ああ。それにカーテンだけじゃなくて・・・」

苦笑したアキラにヒカルも部屋の状況を見て納得した。
ヒカルは慌ててアキラに駆け寄るとそれを手伝う。

「ありがとう」

「いや、遅れてごめん。これ1人でするの大変だったろ?」

手伝いながらヒカルはアキラの横顔を見上げた。
年も背も同じぐらいだろうか?端正で整った顔立ちに切りそろえられた髪。
なんとなく几帳面なんだろうな、と思う。

一通りカーテンが収まりアキラがベランダの向こうを指さした。

「見て、夕日がきれいだ」

「すげえな、」

夕日に照らされた水面は刻々と姿を変える。
ヒカルがベランダに出ようとしたが、あいにくサンダルはなく諦めたが。
佐為は嬉しそうにベランダに出て一番よい西南の端を陣取ってる。
アキラと並んでその景色に見入る。

自分の背中を預ける事になる、相棒。
まだアキラの何も知らないし。これからの任務だってどうなるかわからない。
でも、こうやって二人でみる景色もこれからあるのだろう、とぼんやり思う。

「あのさ、アキラ、これからよろしくな」

「ああ、ヒカル、僕の方こそよろしく」

手を差し出され汗ばんでいた手に躊躇したが、握り返す。
アキラの手も少し汗ばんでいた。

                  

                       
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まずは謝罪を。。

リンクエラーに貼ってしまい1話目読めなかったという皆さんごめんさい<(_ _)>
お待たせしました。ようやく連載スタートです。
以前すきしょ!のパラレルで描いた「暗闇の中で」の世界観から広げてます。
ずっと「すきしょ!」のキャラとヒカ碁とのコラボをやってみたかったので、念願
叶った感じですが(苦笑)お客様を置いてけぼりしてしまうかもです<(_ _)>
一体どこに向かっていくのやら私にもわかりませんが、とにかく突き進みます!!