ひかる茜雲


                            24

      
     
24話には流血シーンがあります。苦手な方は24話スルー下さい。




緒方は怒りに震え無理やりにヒカルをうつ伏せ腕を抑えた。

「だったらお前の体に直接聞くまでだ」

緒方はヒカルの双丘にいきなり指を押し入れた。
ヒカルは緒方を受け入れる準備はしていたが早急な挿入は痛みしか
生まず、ヒカルは体を震わせ懇願した。

「お許しください」

「許して欲しいなら言ってみろ。誰と契りを交わした?」

緒方の指はますます強引にヒカルの内を乱しかき回す。
痛みで気を失いそうになるのを気力で耐えた。
いっそその方が良いのかもしれないが緒方がその場限りで許す
はずがない。

ヒカルはもう逃げ場がないことを悟って、覚悟を決めると目を閉じた。
一瞬噛んだ舌に痛みで怯んだ。

・・・が、アキラを守るためには
自害する他手だてしか今のヒカルにはなかった。
緒方に対する不忠義への罪滅ぼしにもなる。

「緒方様、ごめんなさい」

ヒカルはそう口にして、思いっきり自分の舌を噛み切った。

「うっ・・・」


滴り落ちた血とご尋常でないヒカルの全身の震えで緒方は異常
に気づきヒカルを抱き上げた。

「ヒカル!!」

緒方は沸騰した血が一瞬で凍りついたようだった。
緒方は、無理やりヒカルの口内を押し開けた。

「バカ野郎、何を考えて!!」

ヒカルの瞳から痛みだけじゃない涙がボロボロと零れていた。

『ごめんなさい』

声はない。だが緒方の耳にははっきりとそう聞こえた。

緒方は慌てて傍にあった、(ヒカルが左腕に巻いていた手拭をヒカルの
口内に押入れ縛り、ヒカルが窒息しないように抱きかかえた。
それでも血が口内に溢れる。

緒方は怒声を上げた。

「誰か!!すぐに医者を呼べ!!」

隣りの部屋に控えていた家臣が真っ先に駆けつけた。

「緒方様どうかなされました」

「至急医者と芦原を呼べ!!とにかく急げ」

家臣はヒカルの具合が悪いと察すると屋敷を駆けると同時に叫んだ

「直ぐに!!」

バタバタと立ち去る音と緒方の胸の鼓動が聞こえる。
ジンジンとしびれる舌からドクンドクンと血が流れて、ヒカルは力が
抜け、末端の感覚が消えていくのがわかる。

けれどこれで楽になるのだろう。

まだやりたいことはあった。碁だってもっと打ちたかった。
緒方にも認めてもらいたかったし、佐為にももう1度会いたかった。

そしてアキラに・・・。


アキラを想うと口内よりも胸の方が痛みがさす。

『アキラ、お前は生きろよ。
絶対生きてそしていつか佐為とお城碁で対局するんだ。

オレはお前と生きられなかったけど、次は必ずお前と・・・』

ヒカルはアキラと交わした左腕に手を伸ばそうとして、
だが、その腕を握ったのは緒方だった。


「オレより先に死ぬなど絶対に許さん!!お前はオレの小姓だろが!!」

抱きしめられた温もりと緒方の涙がヒカルの頬を伝う。
ヒカルは手放そうとした生を掴むように握られた緒方の手を握りかえした。

見上げた緒方は顔を歪ませていた。その顔が涙で曇る。
オレはこんなにも想ってくれた緒方様を裏切ってしまった・・・。

後悔の念とアキラを想う気持ちとが廻り、やがて痛みで思考も回らなくなる。
医師が駆けつけたのはそれからまもなくだった。






ヒカルは三日三晩生死を彷徨い奇跡的に命を取り留めた。
まだ猶予はないが峠は越えたと見てもいい。

緒方は芦原の報告を聞いていた。

「それで、相手はどこの誰かわかったか?」

幾分落ち着きはしたものの緒方の苛立ちは見て取れた。
報告に来たはずの芦原が言葉を濁した。

「それがその・・・」

「言えない相手か?まさか佐為と言うわけじゃあるまい」

「もちろんそんな事はありません」

緒方はため息を吐いた。

「オレはヒカルを国に連れ帰るぞ」

「しかし・・ヒカルはまだ」

「今は動かせなくても一月後ならば。帰国を遅らせても絶対に連れて帰る。
そいつの事は腹が煮えるが、ヒカルがそこまでして庇った
相手だ。それに免じて今回は目をつぶってやる」

緒方はそう言ったが芦原はその真偽を測りかねた。

けれど・・・。
一命を取り留めたヒカルに緒方が神仏に感謝し、涙を流したのも芦原は
知っていた。
この三日許す限りヒカルの傍にいた事を見ても。緒方がただの気まぐれで
ヒカルを小姓にしたわけじゃない。

もう2度と緒方は目の前で大切な人を失いたくないのだ。
その想いはずっと緒方の傍にいた芦原だからわかる。

「芦原もう1度聞く。相手は誰だ?」

芦原は目を伏せた。

「塔矢アキラ殿かと・・・」

「塔矢行洋の息子のか?」

「おそらく・・・」

しばらく押し迫ったような空気が流れる。
芦原はごくりと唾を飲み込んだ。

「芦原、塔矢アキラを呼べ」

「しかし・・・」

「真意を確かめる」



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出来るだけ痛くないように描いたつもりなんですが(汗)





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