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傷跡
らんは温かい広い夜の胸は自分の場所だと思う。
交わったあとのこの甘い一時がらんは大好きだった。
「よる?」
その耳元でささやいてその余韻に浸る。
「ん・・?」
らんが身じろぐと無意識に夜がらんの体を 引き寄せる。 夜は眠っていてもらんを離さない。朝がくるまで こうやって抱きしめてくれる。
らんは幸せなぬくもりに浸りながら自分の指を夜の 指に絡ませて・・・。
でも右手の夜の包帯に触れた瞬間、らんの胸がぎゅっと 痛み出した。
この幸せがどこかに行ってしまうんじゃないかと胸が疼く。
抱かれてる時には感じなかった痛み。
警戒音のようにその疼きは広がり、らんは 夜の指に更に指をきつく絡めすがりついた。
「らん?どうかしたのか。」
夜はいつも優しい。 だからよけいこれが夢じゃないのかと思う。
らんの様子に気づいて夜が体を起こす。 でもらんは一時でも離れることなんてできなくて 夜を求めた。
優しい口付けが顔中に降り注ぐ。 らんの不安を取り除くように・・・。
「ねえ 夜・・・」
言いそびれて暗闇の中夜を見上げると夜が らんの頬をなでた。
「僕ね・・・何度も死のうと思ったの。」
「らん・・」
「もう夜に会えないなら死のうって思ったの。」
夜は無意識に自分の傷跡をぎゅっと握り締めた。
「バカだな。らんは・・・」
「バカじゃないよ。夜だって夜だって・・・」
らんの瞳からぽろぽろ涙が落ちる。
「会えたじゃないか。こうやって。 オレはお前がいたから生きようと思ったんだぜ。」
前に夜はらんに言った。 空を守るために死のうと思ったって。
空が研究所での記憶を忌まわしい呪縛から
抜け出して幸せになれるならその記憶とともに 消えようと思ったことも。
だかららんは空が嫌いだった。 自分はのうのうと生きてその幸せの代償を全部夜に 押し付けて・・・。
そしてそんな空の為に夜が死のうと思った事も許せ
なかった。 でも・・。
「らん。オレが一緒に生きたいと思うのはお前だけだ。」
「よる・・」
らんがいたから生きることを選んだという夜。 一緒に生きたいといってくれた夜。
「僕も・・・」
夜がここにいてくれて心からよかったと思える。
生きててよかったって思える。
「あいしてるぜ。らん。」
「うん。」
抱きよせたぬくもりをぎゅうと握りしめた。
もしまた離れ離れになっても辛い日がきても
傷跡は僕らを戒めてくれるだろう。
らんはそっと夜の傷跡に頬を寄せた。
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あとがき
痛い話を書いてしまいました(/_;)
次回こそは明るい話をかくぞ!!
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