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スクランブル







     
「ねえ空僕のお願い聞いてくれない?」

らんに突然そう言われて、どうせまた夜と身体を
交代しろとかいうおねだりだろうと思うと
空はふっ〜と長いため息をついた。

別にもったいぶってるわけじゃねえんだぜ?

そうそうらんの我侭も聞いてられねえからちょっと
渋ってみようと思っただけだったんだけど。

何を思ったのからんは
俺の上に乗りかかるようにベットに上がってきて・・。

「ねえ空ダメ?」

甘えるようなしぐさに俺はそっと後ずさる。
こんな所夜に見られたらやばいって。
(ぜってえ夜の事だから見てるって、)


オレは慌ててらんから逃げるように起き上がったんだけど
らんはそれでもオレに顔を近づけてきて・・。

ひょっとしていつもみたくからかってるとか?

「わかった。わかったって。夜と交代すればいいんだろ?」

オレがそういうとらんは少し寂しそうな顔をしてオレに言った。

「今日は夜は出てこないと思う。」

「何で?」

「そんな事より僕じゃダメ?」


らんはオレにまたがるとつぶらな瞳で
オレを見下ろしてきて・・・って。


オレやばい事を想像しちまったって。


なんなんだよ。『僕じゃダメって?』のは。
いつもはオレに触れられるのも気持ち悪いって言ってるくせに
自分からこんなことするなんて。


「らん、てめえなんの冗談だ。」

冷たく突き放したのにらんはオレの首に腕を巻きつけてきて・・・

らんの顔がまじかに迫ってきたと思った瞬間俺はらんに
キスされてた。

しっとりと口付けられてやがて離れたらんの唇は濡れていた。

な・・・・うそだろ?
大体藤守からだってキスされたことほとんどねえのに。

ってそういう問題じゃねえって。

動揺してオレは心の中の夜に「あれは勝手にらんがしてきたんだからな。」
なんていいわけしてみたがもちろん夜からの返事はない。
きっと夜のことだから傍観してやがるんだ。

「らん、いきなりなに・・・」

すんだよ!!と言うつもりだった台詞は口の中に消えていた。
目の前のらんの瞳から涙がぽろぽろとこぼれていたからだ。

あのらんが泣くなんて。しかも俺の前で泣くなんて、
オレは信じられねえものを見たような気がした。

「ちょ、泣くなよ。らん。」

オレがそういうとますますらんの瞳から涙が零れ落ちてきて
オレはどうしていいかわからずおろおろするだけだった。

『もう夜何とかしてくれよ。』

夜の気配を探して話しかけてみるが夜が出てくる様子はない。
全くどうしろっていうんだよ。

らんはしゃくるように泣き止むとまだ濡れる瞳でオレを見上げてきた。

「ねえ。空、僕とHしよ。」

「はあ?なんだって!!」

さっきから一体なんなんだ。
至って真剣ならんをみるといつもみてえにオレをから
かってるだけとは到底思えねえんだけど。

けど、いきなりらんがこんな事を言い出すはずねえし。

「夜となんかあったのか?」

何となくそんな気がして俺は聞いてみた。
だってよ。今日は夜は出てこないとかって確信してるみてえだし。

「喧嘩でもしたとか?」

夜とらんが喧嘩なんて想像できなかったけど、あの夜のことだから
なんかやらかしたのかもしれねえし。

「ううん。そうじゃないんだけどね。」

らんは少し戸惑いながら言葉を捜してるようだった。

「言ってみろよ。聞くぐれえならきいてやるって。」

オレが明るくそういうと思いつめたような顔をしてらんはようやく
口を開いた。

「僕は要らない子なのかな?」

「何で?」

「僕。みちゃったんだ。夜が・・・夜が寝てるナオにキスしてるの・・。」

らんの語尾は震えてた。

また泣き出しそうならんにとにかく落ち着け。って
言いながらおれ自身もなんか落ち着かねえ気分だった。

それにしても・・・それって本とのことなのか。
だとしたらオレだって夜を許せねえって。


「らんが寝ぼけて見間違えたんじゃねえの。
それとも夜がらんと藤守を間違えたとか。」

うん。夜だってそういうことがあっても可笑しくねえよな。
って言ったら、らんのやつオレをバカにするように笑いやがって。

「それはありえないよ。空じゃあるまいし。」

「悪かったな。」

相談にのってやってるっていうのに全くかわいくねえよな。
らんは長いため息をつくと寂しそうに言った。

「夜はきっとナオのことが好きなんだ。だから・・。」

「ちょっとまてって。そんな事ねえって。」

だっていつもオレと藤守に対抗するような事ばかり言って
自慢するんだぜ。

らんはオレにべた惚れだ。とからんは可愛いとか、聞いてるこっち
が恥ずかしくなるぐらいにだぜ。

大体オレと藤守だってべた惚れだっていうの。

それになんていうか言葉にするのは難しいんだけどな、
夜が藤守と接してる時とらんと接してる時じゃ全然違う。

らんといる時はホントに幸せそうで心が満たされてるっていうかさ。
オレにまで伝わってくるぐらいだから間違いねえって。

オレがそういうとらんは深いため息をついた。

「でもこうやって悩んでる僕の前には出てきてくれない・・。」

目の前にいるのにねって。いうらんはやっぱりオレが見た事ない
くらい落ち込んでる気がした。

らんは傍にいるのに俺を遠い目で見上げるとおもむろに
服を脱ぎだした。

「おい。らんやめろって。」

「大丈夫だよ。ナオも寝てるし。ほら。」

先ほどまで悩みまくっていたことなんてかんじさせないぐらい明るくらんは
そういうとオレにしがみついてくる。

が、その腕がかすかに震えているのにオレは気づいた。
らんのやつ無理してるんだ。

たく、夜・・・おい夜って出てこいって!!
精神世界に呼びかけても夜の返事どころか気配すらない。

ああ。もう夜出てこなかったらこのままらんを俺のものにするぜ。

そんな事はできねえのは重々わかっていたけど言わずには
いられなくて俺は叫んでみる。

それでも出てこないから俺はフリだけのつもりでオレにまたがった
らんを抱き抱えるとベットへと押し倒した。

「しょうがねえな。」

そんな事をいいながららんの胸に顔を寄せるとらんはオレから顔を
そむけてじっと耐えていた。

それは昔、人に触れられるのを嫌がってた藤守みてえでオレの
胸は痛んだ。

そんなに無理してんのか・・。

オレが優しく髪をなでるとらんはえぐえぐ泣きだした。

「ごめんなさい。」

らんがそう言った瞬間すっと落ちていく感じがして・・・。



「あれ・・羽柴・・・ってなにしてんだよ?」

「ええっええええ。ふ・・藤守・・?」

何?藤守とらん交代したのか?って突然覚醒するなんて。
こんな時に寝起きがいいなんて間が悪すぎるっての。

オレは藤守からの平手打ちを覚悟したんだけど・・。
飛んできた藤守の手をやすやすと掴んで、って俺掴んでないって。

まさか・・・。

「お前から誘っておいてひでえ言い草だな。」

「えっ。よ・・る?」

完全に覚醒したらしい藤守は
わけもわからないって感じで俺をまあ実際には夜をみあげてた。

「まあたまにはこういうのも悪くねえんじゃねえの。」

夜はそういうと掴んだ藤守の腕を押さえ込みそのままベットに
なだれ込む。

「や・・何するんだよ。」

「何ってわかんねえわけじゃねえだろ?」

夜は鬼畜な笑みを浮かべて藤守の胸に顔をうずめて。

藤守は何がなんだかわからないって感じでおびえてて。

おい夜のバカやろう。さっきは叫んでもわめいても
出てこなかったくせに。何してんだよ。

かわれ。代われって!!
だけどオレがわめいても夜はかわってくれなくて。

「いや、やめ・・。」

「ふうんn。ここ感じるんだ。」

夜は藤守を押さえ込んでこともあろうに藤守の胸に
吸い付きやがった。

夜てめえ・・。

オレが怒りを爆発させるとそれと同調したような変な
感覚が入り込んできて・・・

あれ?これって・・・・!?

おれは唐突に理解した。
夜がすげえ腹を立ててるってことに。

オレとらんがあんなことしたのが原因かもしんねえけど夜は
すげえ腹をたててるんだ

けどってそれって逆恨みじゃねえかよ。

オレがそんな考えに至ってる間にも夜は藤守に容赦ない攻めを
繰り返してて藤守はオレに助けを求めてる。

「やだ。羽柴助けて・・。」

必死に夜の愛撫に感じないように藤守は歯を食いしばって。

目の前にいるのに助けてやれないもどかしさに俺が大声で
「藤守!!って」叫んだ瞬間、



「くうちゃん!!」「よるぅ〜!!」


そんなはずあるわけないのに同時に藤守とらんの声が聞こえてきて。
気がついたら藤守はらんと交代していた。


そっか。藤守耐えられなくなって。
いやらんが耐えられなくなって出てきたってのが正しいのか?

オレは少しほっとしたような肩の力がぬけたような気がした。
ってここからが本題なんだよな。

「やっと出てきたな。らん。」

「違う。僕はナオだもん。」

見え透いたウソをいったらんがなんか痛々しかった。
なんで夜はそんな意地悪ばっかするんだよ。

「だったらスナオでいい。」

「ナオがすきなの?」

「オレはスナオを守るために生まれたんだぜ。当たり前だろ?」

突き放すような夜の言葉にらんは表情を凍らせた。

「僕はナオのかわりなの。ナオには空がいたから。だから
僕を作ったの。」

「だったらどうするんだ?」

夜の言葉には感情はなかった。

「ナオのかわりはイヤ。でも夜に相手されないのはもっといや。
僕もっといい子になるよ。ナオみたいに振舞うよ。だから・・。」

オレは不覚にも涙がでそうになった。

おい。いくらなんでもらんがかわいそうだろ。
こんなに一途にお前の事思ってんのに。


「それじゃあせいぜいナオの代わりをやってくれよ。」

夜はそういうとらんを軽々と抱えベットへと押し倒した。

らんが息を呑んだ瞬間夜はらんの唇に深く口付けていた。

夜がらんの口内に舌を入れて吸いつくしてもらんは応えなかった。
やがて長い長い口付けのあと夜は長い息をついた。


「バカだな。らんは・・・・」

「夜?」

「らんはらんだろ?オレはらんだから愛してるんだぜ。」

どうしてそんな事もわかんねえんだというと夜は拗ねたように
らんから離れた。

「よる・・?」

おそるおそるらんが夜を見上げる。

「だって夜がナオに・・。」

「あれはらんが起きてこねえから・・。」

柄にもなく照れているのか、怒っているのか夜は口を尖らせてる。

「ごめんなさい。」

らんが夜にしがみつくと夜はようやくらんを抱き寄せた。

「たく・・よ。空とあんなことしやがって。」

それはお互い様だろ!!オレが抗議すると夜のやつオレの頭を
ガシガシ叩きやがって。
都合が悪くなったからってそれかよ。

でもなんとなくほっとしたっていうか、この二人これからきっとって。
仲直りすんだよな?

なんとなくこの先は見ちゃいけねえような気がして目をつぶると
夜とらんが優しく口付けしたのがわかった。

ちぇっ。
ちゃんと仲直りしたら俺と藤守に替われよな。



オレが眠りに落ちる瞬間 夜が「ああ。」って笑ってた。







本当は夜×直にチャレンジしたかったのですが
らんくんへの愛ゆえかこうなってしまいました〜(笑)