わんこそら物語
1話
今日は退屈だなあ〜
わんこそらは雨がしとしと降る外を見ながら大きなあくびを一つかみ締めた。
夜は晩まで出かけるっていってたしなあ〜。
留守番にも飽きたそらは大きく伸びをしながら、
七ちゃんちの直のことを思い出していた。
直は人間にしておくにはもったいない(?!)程美人で
とっても優しいのだ。
あったかくて、いいにおいのする直にむぎゅっとされるとそらは満たされた気持ちに
なってずっとそうしていたいと思う。
直をお嫁さんにできたらいいよな。
ウェディング姿の直が七ちゃんに手をひかれてバージンロード
を歩く姿を妄想してそらはでろんと鼻の下を伸ばした。
直が♂だなんてことは全く頭にないわんこそらだった(苦笑)
けれどそらの妄想はそらの宿敵?の登場によって妨害された。
そらのお嫁さんだったはずの直がいつの間にかうさぎの らんに変わっていたのだ。
「なんでお前がこんなとこに出てくるんだよ!!」
全く無断で人(犬)の妄想の中に出てくるなんて許せねえやつだ。
しかも直とかわるなんて。
「バカそら。一生こき使ってやるからね〜」
意地悪な笑みを浮かべながら、らんはいつの間にか出てきた夜に手を
取られてる。
「そら〜オレとらんは新婚旅行に行ってくるからよ。お前は一人で留守番よろしくな。
おっと毎日の掃除と洗濯 それにゴミだしも忘れんなよ。」
「そら〜お土産に猫じゃらしを買ってくるからね〜!!」
らんは満面に笑みをうかべるとそう言ってって
なんで猫じゃらしなんだよ・・・(汗)
らんと夜が去ったあとそらのまわりにひゅう〜と冷たい風が舞い落ち葉を泳がせた。
「だああ〜そんなの嫌だ〜。嫌すぎる!!」
そらは一人の部屋でジタバタ暴れると立ち上がった。
そうだ、直に会いに行こう。
直の家には直の兄弟の広夢とクリスに
父親(?)の優しい七ちゃんがいてそらが遊びにいくと いつもお菓子をくれたり遊んでくれたりするのだ。
まあ時々暴走して妙なことをされたりもするのだけど・・。
一瞬そのことを考えて憂鬱になったそらだったが、
直に会いたい一心で雨だというのに窓をひょいとお飛び越えた。
わんこそらは高い塀を猫のようにまたぎ屋根の下を雨に濡れないように
上手く潜り抜けていく。
そしてお目当ての七ちゃん家につくとワン〜と一声あげた。
これは七ちゃんとオレの合図なんだ。 するとまるでそらを待っていたようなタイミングでベランダの窓が開いた。
「あらあら、そらくん、びしょぬれじゃないですか。ほら温かいミルクを上げましょうね。」
いつも優しい七ちゃんは窓を開けてオレを迎え入れてくれた。 そしたらオレより先にいた先客と目があった。
そいつはオレを見るなり苦笑した。
確か・・・こいつの名ははしば・・・羽柴空だ。
いつも直をいじめる悪いやつなんだ。
「おお。こいつか、俺と同じ名前の犬っていうのわよ、よしよしって ほら、こっちこいよ・・。」
「うううう!!!」
オレは威嚇するようにそいつを睨みつけた。 同じ名前だからって調子のんなよ。
「なんだよ。何もしねえって。」
オレは差し出された手をカプリと噛んでやった。
といっても甘噛みしただけだぜ。
なのにこいつと来たら・・・。
「てめえ、犬の分際でオレのことを・・。」
「ううう〜ワン ワン ワン!!」
腕をならして見下ろす羽柴にオレは犬だからって舐めんなよ
ってタンカをきってやった。←もちろん空には犬が吼えてるようにしか聞こえない;
するとジャストタイミングでリビングの扉が開いて直が顔を覗かせた。
「何やってんだよ、羽柴、こんな子犬相手に!!くぅちゃん
大丈夫だった。ほら、こっちおいで。」
直に手を差し出されてオレは直の胸に飛びついた。
直の顔をぺろぺろ舐めると直はくすぐったそうにオレの頭を撫でてくれた。
オレは尻尾を振りながら後ろにいる羽柴空にはべっ〜ってしてやった。
「こいつ、犬だと思って下手にでたら。」
羽柴が直の腕からオレを無理やり引き剥がそうとしたので
オレは直にしがみついた。
「羽柴、くぅちゃんが怖がってるだろ!!焼餅なんてみっともないよ。」
「だれが犬に焼餅なんか妬くか!!」
膨れっ面の羽柴は真っ赤な顔をしてしどろもどろしてる。
そうだ。いじめっ子はやられたらいいんだ。
「ほら、羽柴なんてほっといて、くぅちゃんオレの部屋に行こう。
この間ペットショップで新しいお菓子を買ってきたんだよ。」
直に抱き上げられてオレは勝ったとばかりに
羽柴空にむかってVサインを決めた。
けど・・。
「藤守ちょっと待てよ。話がまだ・・。」
何か言いかけた羽柴空に七ちゃんが声を掛けた。
「はいはい、空くんお茶が入りましたよ。お茶請けに空くんの好きな桜餅も
ありますから。
直くんの事はほっといて私とお茶しましょうね。」
「ああ。うん。七海ちゃんサンキュな。」
その時わんこそらは自分を抱きあげた直の手が震えるのを感じた。
直どうしたんだろ?
オレそんなに重たくなったかな?
「なんだよ。羽柴のバカ」
つぶやくようにそう言った直の表情はなんだか寂しそうだった。
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前作が暗かったのでつい弾けちゃいまして、自分で書いてて突っ込み
いれたくなりました〜(爆)
続きもサクッと行きたいですね〜 2006 7月 緋色
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