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たからもの





     
暗闇の中らんは直の中から抜け出すように覚醒して
隣のベットで眠る空が手放したトシゾウを抱き上げた。

トシゾウは継ぎ接ぎだらけでその縫い目だって
中の羽が覗いてぼろぼろだった。

らんは自分の絆創膏だらけの指に目を落として
ため息をついた。

こんな汚い縫いぐるみなんてなくなっちゃえばいいんだ。
どうして空も直も・・・。

そう思って抱き上げたはずなのにらんにはどうしても捨てる事
できなかった。
トシゾウは大好きな夜のにおいがしたからだ。

無意識にらんはぎゅうとトシゾウを抱きしめると
背後で空の影が動いた。

「おい、てめえ、またらんか?性懲りもなくまたオレのトシゾウを・・・。」

確かにそこまでは空のはずだった。だけど次の瞬間空は
夜に入れ替わってた。

「らん。」

後ろから強く抱きしめられてらんはうろたえた。

「夜・・・夜もなの?」

「どうした らん?」

夜はらんを自分の方に向かせるとらんの顔を覗き込んだ。

「夜もトシゾウが一番?一番大切なのはトシゾウなの?」

「バカだな。らんは。そんなこともわからねえの?」

夜は耳もとでそうつぶやくとトシゾウごとらんをベットに押し倒した。

「だって・・。」

らんはこのままはぐらかされるのが嫌で身じろぎ抵抗したが
夜はそんならんを力でねじ伏せ押さえ込んだ。

「いやっ!夜」

「らん・・」

震えるらんの声に夜は力を抜くと絆創膏だらけの
らんの指を優しく撫でた。

「オレの大切なものはこんな傷だらけになってもトシゾウを
縫ってくれたお前だけだ。」

だがらんはその返事にぶんぶんと顔を横に振った。

「違うよ。それを縫ったのはナオだもん。僕じゃない。」

湧き上がる嫉妬に駆られてそっぱを向いたらんに夜は苦笑した。

「わかってるって。でもこれはらんがオレのために作った
傷だろ?」

らんは驚いてぽかんと夜を見つめた。
ひょっとして夜は気づいているのだろうか。

らんはナオが縫いぐるみを縫ってるのを見て自分も作れない
だろうかと試してみたのだ。

「なんでそんなこと夜が知ってるの?」

「らんの指、絆創膏が増えてるぜ。」

恥ずかしくなって隠そうとした指を夜は絡め取った。

「オレには見せてくれねえの?」

「だって恥ずかしいよ。僕不器用だし。」

「そんなのいいって言ってんだろ?」

優しい夜の声に勇気づけられらんはのそりと立ち上がった。


しばらくしてベットに戻ってきたらんの手には小さな人形があった。
らんは恥ずかしそうにそれを夜に手渡した。

夜はその人形をじっと見つめると微笑んだ。

「よく出来てるぜ。オレそっくりだな。」

「本当?よかった。」

らんはようやく息をついたが夜は意地悪い笑みを浮かべてる。

「なに 夜・・?」

「これだけじゃねえだろ?」

「どうしてそんな事わかるの?」

そのらんの返事が夜の憶測を確信させる。

「オレはらんのことなら何でも知ってるんだぜ。」

夜はらんから離れるとベットから立ち上がり直の机
の前にたった。

「夜だめ!!それはまだなの。」

らんが言う前に夜はその人形を探し当てていた。

小さならんの人形。

でもまだそのフェルトの
縫いぐるみは洋服を着てはいなかった。

らんはなんだか恥ずかしくなって下をむいた。

夜はいたずらが成功した子供のようににやりと笑みを浮かべると
もう一体の自分の人形をそっと取り上げた。

「ほら らん。」

夜の呼びかけにらんは顔を上げると目に入ったものに
恥ずかしくなって顔を真っ赤に染めた。

夜の人形が全裸のらんの人形とキスをしていたのだ。

「夜のエッチ・・・」

「こうされたかったんだろ?」


コトッという音がして二人が振り返ると
夜の人形がらんの人形に覆いかぶさるように倒れていた。


「先越されちまったみてえだな。」

「夜・・。」

「らん。オレの一番大切なものはな・・。」



耳元で小さくささやかれた台詞にらんはうっとりすると
自ら夜の背に手をのばした。





                                   END




アニメのすきしょ!4話で
空の大切な縫いぐるみ【トシゾウ】を直とらんを守るため(?)
夜はボロボロにしてしまいます。
アニメの好きしょ!の中でも大好きなストーリーです。

夜空に舞い散るトシゾウに「名誉の戦死だね〜」といった
祭ちゃんもなんだか印象的でした。そしてその後ぼろぼろに
なったトシゾウを繕って指を絆創膏だらけにした直くん。

そこから少しづつ夜と空の距離が近づいていったような
気がしますね〜。