結局4人で最近出来たばかりの海のみえる大きなショッピング
モールに行く事になったのだが・・。
ただ歩いてるだけだってのに夜とらんのやつべたべた
いちゃいちゃしやがって・・。
オレの隣にいる藤守なんてさっきから目のやり場に
困ってるっての。
「にしても、藤守今日は朝から驚きの連続だよな。」
「うん。まだ夢見てるんじゃないかって思うぐらいね。」
空も同感だとばかりに頷く。
「オレもまさか夜と連れションする日が来るとは思わなかったぜ。」
「つれションって・・・まさかしたの・・?」
隣で固まる藤守に空は笑った。
「なんだよ。男どおしなんだしつれションぐらい普通すんだろ?
オレたちだって子どもの頃はよく・・。」
最後まで言う前にバキっという鈍い音と痛みが空の頬に走る。
「いてえええ〜!!!」
「バカ羽柴!!」
藤守は怒って一人先を歩き出す。
オレそんな変な事言ったか?
先を歩いてたはずの夜とらんも足を止めてオレのこと笑い
やがって。
「空ってばホント、デリカシーがないんだから。ナオが気の毒だよ。」
ここぞとばかりにため息をつくらんに空はチェツと舌打ちした。
「ほら、空 直をとっとと追いかけねえと他の男に引っ掛けられても
しらねえぜ。」
そうだった。夜の言うとおりああ見えてあいつ美人だから
一人で歩いてっとよく声かけられるんだ。
「わかってるって。」
直を追いかけて走り出した空に夜が苦笑した。
「ホント・・世話のかかる二人だ。」と。
年末のモールは家族連れやカップルでごったがえしてる。
海辺に敷き詰められたレンガ畳の遊歩道もこの冬空だって
のにカップルでいっぱいだ。
ひときわ人が集まる場所を見つけるとらんが夜の手をひいた。
「ねえ、あそこで何かやってるみたいだよ。夜いこう。」
「ああ。」
4人で人だかりに紛れ込むとどうやら、
海辺の見える全天候型の喫店を利用して何かイベントをするらしい。
「なになに・・・。」
空がイベントの概要を読み始める。
「年末のカップルキスコンテスト・・?
参加者募集 参加者全員には記念品とプロの撮った写真
をプレゼント。
見事優勝したカップルには雑誌のモデルとして採用され
さらに副賞として海外旅行をペアでプレゼント・・・だってさ。」
空の説明をじっと聞いていたらんが突然目を輝かせた。
「ねえ。夜これでようよ。」
「なっ?!」
夜だけでなく空も直もそれにはさすがに驚いた。
「らん。カップルってのは男の人と女の人のことを言うんだよ。」
藤守の指摘にらんを頬は膨らませた。
「知ってるよ、それぐらい。でも僕よく女の人に間違えられるし
それに・・僕・・どうしても夜と二人で撮った写真が欲しいんだ〜。」
しみじみそういったらんに夜はどう返事すべきか考えてるようだった。
そりゃそうだ。さすがにこればっかはあまりにも突拍子すぎる。
「ねえ夜。前に祭にとってもらった写真ね。
ナオは僕にあげるっていったけど
ナオの知らないところに隠しといてって言ったんだよ。
だから僕本当の夜との写真が欲しいの・・。」
いつまでこの体でいられるかわかんないんでしょ?
そう切実に訴えるらんの髪を撫で夜はしょうがねえなとつぶやいた。
らんの顔がぱっと明るくなる。
「いいぜ。らん。」
「本当?」
「ああ。」
「やった〜!!ナオ一緒にでるよね〜。」
いきなりらんに手を引かれた藤守は慌てだす。
「俺はいいよ。」
「だめだよ・・。」
「もちろん空もでるんだからね・・。」
「なに俺も・・?」
当たり前だろといったのは夜だった。
しょうがねえか〜と思って藤守をみるとまだ抵抗していたけど、
結局らんに押し切られるかっこうで俺たちも参加する事に
なったのだった。
「ねえ ナオここは何て書いたらいいの?」
先に参加必要事項を書き込んだ藤守がらんの用紙を覗き込む。
「ええっと。」
らんは名前記入の欄に夜とらんの名前だけを書いていた。
「らん。誕生日は3月12日。ここはね藤守らんって書くんだよ。」
らんがペンを止める。
「藤守らん・・。じゃあ夜は・・・?」
「やっぱそりゃ、羽柴夜だろうな。」
ほけーとした顔で空をみるらんに夜が笑った。
「らんが俺と結婚したら羽柴らんだな。」
「じゃあナオが空と結婚したら羽柴すなお・・?」
「まあそういうこった。」
空と夜が二人珍しくはもったのをみて、
感心するらんに藤守が怒鳴る。
「らん。違うよ。違うんだからね。もう羽柴も夜もらんに変な事
教えないでよね。」
らんをかばうようにそういった藤守の顔は真っ赤になってる。
ホントはまんざらでもないくせに。でもこういうところって藤守
ほんとかわいいんだよな。
神妙な顔をしていたらんもうれしそうに笑い出す。
「なんだよ。らんまで。」
「ううん。僕うれしいんだよ。だって藤守らんなんてナオと兄弟
みたいじゃない。今まで同じ人間だったのに。」
「そうだね。これからずっと体が離れてもらんとオレとは一緒だから。」
「うん。」
そういって抱き合う藤守とらんに空は苦笑する。
【あの二人って双子のカップル。なんかめちゃいい感じじゃねえ。
女の子の方抱き合ってるよ。】
なんだか周りのカップルからも注目されてんだけど・・。
いいのか 藤守・・?
「夜 らん取られてるぜ かまわねえの?」
「いいんだよ。らんの気持ちはオレもわかっから。
って空も抱いてほしいってか?」
肩を抱いてきた夜にオレはどなった。
「バカやろう。オレたちじゃあ洒落になんねえだろ!!」
慌てる空に夜が笑う。
なんかこれじゃあいつもと変わりねえじゃないか。
もし夜と体分かれることなんてあったら、夜ときっちりかたつけて
やろうなんて思ったこともあったんだけど、
なんか体二つになっても勝ち目はねえような気がする。
実体になっても背だって体型だって夜の方がオレより勝ってるってのは
どういうことだよ。
不公平じゃねえか・・。
むすっとしてると夜が肩を叩いてきた。
「空お前今なに考えた?」
げっ??まさか、体が離れても俺の考えてる事がわかるって事は
ないよな。
「な なんでもねえって・・。」
「ふ〜ん。まあそういうことにしといてやるよ。」
意味ありげに笑う夜・・・
こういう夜ってあとが結構怖かったりするんだよな。
そうこうしてるうちにコンテストの始まりを告げるアナウンスが
流れだす。
初めのカップルが吹き抜けになってるテラスに二人でのぼる。
そこにはカメラマンがいてポラロイド写真でカップルを撮影してる。
審査はプロのカメラマンと雑誌編集者 モールの関連者たちが
するらしい。
俺たちは最後の方だけどさすがに自分たちの出番が近づいてくると
緊張してきた。
「エントリーNO 30 」
夜とらんの番だ!!
夜がらんの手を引き短い階段を上る。
そのまま舞台の中央へとエスコートしたらんの
腰に夜が手を回した。
二人はまるで時間が止まったようにみつめあった。
やがてらんの髪が風になびくと夜はその髪を撫でて・・。
やべぇ〜って。あいつら今までみたカップルの中で
一番綺麗だ。
藤守なんてずっと硬直してる。
でもなんかオレも藤守も二人から目が離せなくなっちまって・・・。
お互い求めるようにキスした瞬間会場が静まり
かえった。
長いキスのあと今までにない盛り上がりと拍手が沸き起こる。
二人が舞台から降りたあともその盛り上がりはしばらく続いていた。
エントリーナンバー31番。
次ってオレと藤守!!!
舞い上がった空はアタフタ慌てだす。
戸惑うオレの手を藤守が引いた。
藤守にひっぱられるカッコで舞台に上がると
会場からどっと笑いが起こった。
これじゃあ親に手を引かれた子供みたいじゃん;
ううう〜夜とは大違いだ。
「羽柴のバカ。何やってんだよ。ボーっとして。」
小声で訴えてくる藤守にオレは我に返った。
そうだ。キスするんだった。
慌てて身をかがめようとしたら間じかに迫った
藤守が笑ったような気がした。
「しょうがないな。羽柴は。」
そういうと藤守は腕を引きオレの頬にキスしたんだ。
えええ・・?今のって
あっという間の出来事だったけど藤守からオレにキス
したんだぜ。
今まで一度だってそんな事されたことねえのに。
そりゃ頬っぺただったけど。
それでも・・。
感動して動けないでいる俺に会場からヒューヒュー
冷やかしの声が上がって。
我に返ったオレと藤守は急に恥ずかしくなって
逃げるように舞台から降りたのだった。
審査の結果が発表される。
「残念ながら今回は該当カップリングがいませんでした。」
舞台の審査員がそういうと会場にブーイングが沸き起こった。
「なので急ぎ特別賞を用意しました。エントリーナンバー30番
と31番の方 舞台の方へどうぞ!」
「オレたちじゃん!?」
らんは夜ではなくぼけっと呆ける藤守の手を引いた。
「ほら。ナオ いこう!!」
らんと藤守が仲良く二人並んで舞台に上がりオレと夜とは
その後を追うカッコで上がった。
【双子のカップルだ!】【あの二人やっぱかわいいな。】
なんか会場の冷やかしも悪くねえよな。
だってオレの藤守がかわいいって言われてんだぜ?
「今日は残念ながら優勝ペアはありませんでしたが・・。」
キスコンテストを主催した雑誌者の社長は
マイクを外すと小声で俺たちに言った。
「ホントに残念だったよ。是非モデルとして君たちを採用
したかったんだけどね〜。男の子を選ぶわけにはいかないから。」
「ご存知だったんですか?」
藤守の質問には応えず社長は微笑んだ。
「はい。特別賞の賞品と副賞だよ。」
そこにはらんが欲しかった写真とそして副賞は・・・
このモールの食事券と隣接するホテルの宿泊券だ!
「やりい〜!!」
ガッツポーズを見せた空に直はため息をついた。
「羽柴ってば、もうみっともないよ。」
会場に笑いと拍手が沸き起こりキスコンテストは大盛況のうち
終了したのだった。
あちこちモールの中を歩きまわって疲れた俺たちは大きな噴水のある
広場で腰を下ろした。
「腹へったな〜」
「そうだね〜。」
待ってたといわんばかりにらんが空と直の話に割り込んた。
「あのね。僕大きなパフェをナオと一緒に食べたいんだ
けど・・。」
「それじゃあ晩飯になんね〜だろ?」
「いいじゃない。僕食べたいんだもん。大体最初に
コンテスト出ようっていったの僕なんだからね〜。」
「何を・・お前みたいなわがままいってると夜に
嫌われるぜ!!」
空の言い分にらんがうう〜と言葉に詰まり瞳を潤ませる。
「羽柴〜。らんをいじめたら俺が許さないんだからね〜」
藤守はいつだってらんの見方するんだぜ。だったらオレは・・・。
「はいはい。そこまでな。せっかくだから何かうまいもん食おうぜ。
もちろんその後はデザートな。」
「うん。」
夜がそういっただけでらんはころっと表情を変えやがった。
まったく夜の言う事しかきかねえんだから。
でもなんっつうかすげえ幸せそうなんだよな。
夜もらんも・・・。
いや違うな。オレが今すげえ幸せなんだ。
怒ったり笑ったりする藤守がオレの傍にいるのが。
こんな何気ない日常が・・・。
先に歩き出した夜とらんをぼんやり見ていると
藤守がオレの手をひっぱった。
「羽柴またぼ〜っとして置いてかれるよ。」
オレがじっと藤守の顔に見とれてっと藤守が不思議
そうに足を止めた。
「何じっとみてんだよ。」
「ナオすきだぜ。」
「何だよ突然こんな所でバカ羽柴!!」
真っ赤に顔を染めた藤守が怒鳴る。
でも・・・オレが握り返した手は振り払われることはなかった。
END