dqay
y

believe
 







     
芥はなぜか今日に限って研究所に向かう途中胸騒ぎをおぼえた。

今日は学会に出かけるとかであの親父はいない。
そういないはずだった。
確かに昨日あいつはオレにそういったのだ。


「芥、明日は出かけるから、研究所の事を頼む。」と。


だから学と化学室ではなく設備が整っている研究所で
実験をする約束をしていたのだが・・・
時間になっても約束の場所に学はこない。

まさか先に研究所に行ってしまったのだろうか?

あいつはいないはずだが研究所にはあらゆる所に
警備の為と言う名のトラップや(人体)実験の為の
部屋があるのだ。



何も知らない学が一人で行くには危険すぎる。
ただの危惧であればよいのだが・・・学。




研究所の入り口でIDカードを通すと確認のためのモニターが作動して
チェックが入る。


ナガセカイ ニンシキ ショウメイサレマシタ


聞き飽きた機械音と共に重々しい扉が開くと
芥は急ぎ足で入室した。

するといきなり監視モニターが芥に向かって動きだした。

「遅かったではないか。」

その声に芥はぎょっとした。
なぜ・・?ここにいるはずないあいつの声が。
芥が足を止めると相沢は笑い出した。

「芥 お前の探しものなら私が預かってる。」

「きさま・・・」

モニターを見ると学がぐったり横たわってるのが
見えた。

「きさま学に何をした!」

怒鳴り声を上げながらモニターに映ってるメイン
ルームに走り出した芥を相沢は冷やかに
笑った。

「私に研究成果を報告しなかった罰だ。」

死角のない監視モニターはどこまでも執拗に芥を追ってくる。

「なんだと・・。」


芥は唇を噛んだ。
研究成果・・・それは芥が学と二人で密かに研究していた
あの実験のことだろう。

もう少しで完成にこぎつけるはずだった。
いや今日にでもここで完成できるはずだったのだ。
それを・・・。

メインコンピューター室を開けると一番にぐったりした
学が目に入った。

「学、大丈夫か!!」

近づこうとした途端ガラス扉が作動して芥と学の間を
遮断した。
遮断された空間を忌々しげに
にらむと咄嗟に芥は自分のIDカードを差し込んだ。

がやはり思ったとおり扉は作動しない。

相沢は楽しそうに笑い声をあげ横たわる学の傍に寄り
その髪に体に触れる。

だが学の瞳はうつろで何をされても反応しない。

いやむしろそうされる事を望むように・・触れやすく
しているような。


「学に触れるな!!」

芥が叫ぶと相沢はこれみよがしに学の耳もとに
唇を近づけ這わせた。

それだけで学の体は小刻みに震え体を波立たせた。
見ていられなくなった芥は拳を握るとぐっと下を向いた。

「くく・・・かわいい子だな。学くんは・・。」

防音で聞こえないはずの声が聞こえる。
相沢は学の顎をつかむと上にむかせ頬を摺り寄せた。

「どうだ。特別に彼の泣き叫ぶ声を芥に聞かせてやろう。」

「きさまその汚い手を学から離せ!!」

芥の絶叫が部屋にこだますると相沢はせせら笑った。

「やめて欲しいのか?だったら取引きだな。
私に実験の成果を渡してもらおうか・・。」

どこまでも汚いやつだ。

あれは学と二人で作ったものなのだ。
ここ1年という月日を費やしようやく完成までこぎつけたのだ。

一緒にネイチャーに発表するのだと論文を書き
その論文も仕上がる手前まで来ていたというのに。

愛しい学と共に作った初めての他人のための薬品

今までに作ったものとは違うのだ。
学が発案したものだから絶対成功させたかったし
世間に認めてもらいたいと心底願ったのだ。

これを渡せというのか・・・。


芥が悩んでる間にも相沢は手を緩めず学の服に
手にかける。

「ふふ・・芥悩んでる暇はないようだ。
学は薬が効いてきて私に抱いて欲しいとねだってくる。
むろん私は構わないのだがな・・。お前と間違えられても。」

「なんだと・・・!!」

ガラス越しにはあいつの腕に身をあずけた学の
唇がちいさく動く。

【か・・・い たすけて・・・早く】

学の瞳はじっと相沢をみつめてる。

あいつを俺だと思ってるのか。
抱いてくれと言ってるのか・・・?

芥は怒りと胸の痛みで狂いそうだと思った。
・・・・・・これを渡せば・・。



「わかった。研究の成果はここにある。レポートも
ほぼ仕上がってる。お前に渡す・・・だから学を放せ。」

怒りを抑えて芥は搾り出すように言った。

「レポートを先によこすんだ。」

いきなり後ろの扉から見知った研究員が入り催促するように
芥の前に立ちはだかった。

「手際のいい事だな。」

芥は言われたとおりレポートを手渡すと
研究員は中身を確認し相沢に何か合図を送った。

「芥、忠告してやろう。学に飲ませた薬だがお前の作った薬で
はない。
あのかいが作ったものだ。」

この男が言うかいとは七海のことだ。

「なんだと!!」

七海が作った薬には神経作用にそれに改良を
加えた媚薬効果があった。
まるで麻薬を打たれたような。
快楽とそれをもっと求めようとする性欲が入り混じり
どうしようもない欲求が突き上げてくる薬なのだ。

それは自分ではどうする事もできないほどの作用で、
これを打たれて壊れるほど研究員に犯されていた
人物を芥は知っていた。

そんなものを学に・・・。
怒りで震える芥を一瞥すると相沢は背をむけた。


「せいぜいかわいがってやるんだな。」




ようやく扉が解除され芥が学に近づくと学は鼻を鳴らして
甘えるようにもたれて来た。

「しっかりしろ 学!!」

学の体は薬のせいで燃えるように熱かった。
すまない・・・学。心の中で芥は何度もそうつぶやきながら
足もたたない学の体を抱きかかえた。

ここに長居するのも嫌だったがそれでも研究所の外まで
学をおぶることもできず芥は自室としても使っている
部屋に学を運んだ。




「学大丈夫か・・?学・・・」

話しかけてもほとんど反応はなくうつろに瞳が動くだけだ。

「ねええ・・・芥」

甘えるように手を伸ばす学は薬のせいで無意識にこびる
ようなしぐさをする。

学があいつにも同じことをしてた事を思い出し
芥は拳をぎゅっとにぎりしめた。

「芥・・オレを・・・。」

芥は悲しくなってぎゅっと学を抱きしめた。
いつものように学を抱く事ができない。


「か・・・い・・?」

抱きしめるだけで何もしない芥にじれて学が身を揺する。
それでも芥は学を抱きしめるだけだ。


学は芥が何もしてくれない事がわかると自分の手をもそもそと
熱くなったそこにのばした。

「芥・・・かい・・・して・・・オレをもっと・・きつく・・・。」



学のうつろな目は芥ではなくぼうっと遠くをみつめていた。

芥の中で抑えていた何かが切れた。
学の手をズボンから引きづりだすと芥は無理やり
ベットに学を押さえつけた。


「学 オレはここにいる。わかるか。お前を抱くのは
オレだ。」

幻でもない。夢でもない。オレはここにいるんだと
言う事を教えるように芥は学の唇に深く口付けた。

学が一瞬夢から醒めたように芥の顔をじっとみた。

「芥・・・本物のか・・い?」

「ああそうだ。オレだ。」

「よかった。俺・・・いつも夢みるんだ、芥に抱かれる夢・・。」

その事を思い出したのか学は本当に幸せそうな表情をうかべ・・・
だがやがてそれもかげろいだ。

「でも醒めたらいつも冷たいベットでオレ一人なんだぜ。
本当に芥?これも夢じゃねえ?」

「学・・・。」

不覚にも涙がこぼれそうになる。

すまない。どうしてこんなオレをお前は思ってくれるんだ。
どうしてオレはお前をこれほどまでも縛り付けたい
と思うのだろう。

たとえ夢になっても今は今だけは現実だ。

「が・・く・・・お前を愛し・・・てる。」


たとえお前がオレの言葉を忘れてしまってもオレは
お前を愛してる

「か・・い・・」

芥はもうすでに薬で快楽に酔わされてる学の
体からズボンと下着を抜く取るとなんの前戯もほどこさず
そこへ指を差し入れた。

熱い学のそこは待ちわびていたようにきゅうと
学の指を絞り誘うように引きつかせた。

「ああああ・・・」

痛みとも快楽とも取れない叫びをあげ学はもっと刺激を求めよ
うと体を浮かせた。

「学 ガク・・」

一端指を引き抜き学のそこをわり開くと芥は自分自身を押し付け
貫いた。

「ああああ・・・芥 かい かい・・・!!!」

熱にうなされたように学が芥を求める。

「学 いいのか、もっとして欲しいのか。」

「うん。もっと芥 芥・・」

芥は学を組み敷く征服欲に酔い
それはどんどん加速していき交わらせた体も激しさを増して、

やがて学は体を震わせて
芥に胸の中に落ちていったのだった。












「あれ・・?オレどうしたんだ?」

目が覚めた学はもうきっちり服を着込み激しい情交のあとも
消されていた。

傍にいた芥はけして学以外には見せない優しいまなざしで
学を見つめていた。

「芥・・あれ・・オレなんで・・?」

「研究所で調子が悪くなって倒れたんだ。覚えてないのか?」

心の中で罪悪感を感じながら芥がそういうと学はそっかって
つぶやいた。
しばらくの沈黙の後学が笑った。

「芥そんな心配すんなって。オレ大丈夫だからさ。」

学が心配するなと言うたびにどれほど芥は救われただろう。
どれほど心が痛んだだろう。

「芥泣いてるのか?」

「違う!!」

「違うことねえだろ・・・。」

「違うと言ってるだろう!!」

学は少し寂しそうに笑った。


「しょうがないな芥は・・・でもまた夢だったんだな。」

ぽつりといった一言に芥ははっとしたが
聞こえなかったフリをしてやりすごす。



いつになれば夢でなくなるのだろう。
いつになれば学にこの想いを打ち明けられるのだろう。


学はもそっとベットから起き上がるといきなり過ぎるほど
急に芥に抱きついてきた。


「学・・・・?」

「オレ芥の事好きだぜ。」

「バカな事を・・。」

「そうオレってバカなんだぜ。知らなかったのかよ・・」

ぎゅっとしがみついてきた学の背に芥はおそるおそる腕を
のばす。

「しょうがないやつ」だといいながら。

「ああ。オレしょうがないやつだからしばらくこうしてろよな。」


いつか芥がオレにホントの気持ちいえる日まで・・・。


〜believe 



                                


                                     END