ドタバタ・バレンタイン



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「諸君よく集まってくれたな。これから私の授業を受けてもらおう。」


オレはいきなりそう言って教室に入ってきた相沢に面食らった。

つうかこの部屋に集められた面子みんな相沢の突然の出現に酸素の足りねえ
金魚みてえに口をパクパクさせてる。

そりゃ、いきなり現れたのがオレたちの宿敵相沢
だったら、誰だって驚くだろ?

事の次第はオレと藤守が夕食後 市川に突然電話で呼び出されたことに
始まるんだ。

『今日中にどうしても大事な話があるから化学室に来て欲しいって。』

市川にしては取り乱してたし、オレと藤守は何だか心配になって
化学室に駆けつけたんだけどそこにいたのは
兄ちゃんに七海ちゃん、広夢にクリス、それに永瀬だったんだ。

一体市川の大事な話てなんなんだ?
そんなことを話してたら化学室に最後に現れたのが相沢だったってわけだ。




「相沢、てめえ〜一体なんのつもりだ!!」

一番早く相沢に噛み付いたのは案の定兄ちゃんだった。
けどその時全くその場にそぐわねえ明るい声が響いた。

「学ちゃん登場!!教授〜みんな〜待ったか!?」

白衣を着た市川は全く場の空気も読めねえらしく妙にテンションが高かった。
ま、そこが市川らしいっていやらしいんだけど。
その市川はっていえば両手いっぱいにチョコレートクッキーを持っていて、それがすげえ
いいにおいがしてオレは夕食食ったあとだっていうのにその匂いにそそられた。

「学くん、今日はよろしく頼む。」

「教授、オレの方こそよろしくな。」

相沢と市川はなんだかしらねえけどすげえ楽しそうだ。
それを一番後ろの席でみている永瀬は眉間に皺寄せてみてる。
永瀬は市川が絡むとすげえ怖えんだ。

異様な雰囲気の中、七海ちゃんがすくっと立ち上がった。

「相沢、私たちをここに呼び出したのはあなたの差し金ですか?
だったら私たちは帰らせてもらいます。」

「そうだ、オレたちは帰らせてもらう。」

兄ちゃんはオレたちに目で合図を送ってきたけど、オレはなんでだか一緒に立ち上がる事が
出来なかった。
だってオレを呼び出したのは市川だし、もし相沢の差し金だったとしても 市川をそのまま
ほっとけねえだろ?


オレは後方に座っていた永瀬が気になってチラっ見ると
永瀬も浮かねえ顔をしてたけど動こうとはしなかった。

そんなオレたちの様子を相沢は薄ら笑みを浮かべてみてる。


「真一郎も七海もそう、熱くなるな。出て行くならいつでも出て行ったらいい。
が、まずはこの学くんの作ったクッキーを食べてからにしたらどうだ?」

相沢がそういうと学は得意げにクッキーをオレたちの目の前に
置いた。

そしたら藤守のやつすげえ気になるのか食べたそうにしてた。
そりゃ藤守が甘いもんには目がねえ事しってるし、このクッキーは
オレもさっきから気になってるけど。
今日はバレンタインでオレの作ったチョコパフェも夕食も食った後なんだぜ?

誰もクッキーに手を出さねえのをみて市川は遠慮してるって思ったのか
オレたちの目の前にそれを差し出してきた。

「ほら、今日はバレンタインだろ。オレと教授からいつもお世話になってる
人たちにプレゼントしようという話になってさ一生懸命つくったんだ。だからみんな
食ってくれよ。」

胡散臭さにオレは顔をしかめたが、藤守と広夢にクリスはすでに
そのクッキーに釘づけになってる。


「広夢くん、クリスくんこれすごく美味しいんだよ。」

藤守はまるで食ったことがあるような口ぶりだった。

「ホント?ホント?僕食べてみたい。」

「私もさっきからいい匂いがするなあ〜って。食べてもいいんですか?」

広夢とクリスは食べる気まんまんみてえだ。
慌てたのは七海ちゃんだった。

「3人とも辞めた方がいいです。仮にもあの相沢が携わったものなんて口に
しないほうが・・・・。」

七海ちゃんが止める前に広夢は我慢できずにクッキーに手を伸ばしていた。

「広夢くんっ待って!!」

「へへ、まず僕が味見してみるね。いただきます〜♪」

七海ちゃんが止めるのも聞かずにクッキーを口に入れた広夢はみんな
の心配をよそにケロっとしてる。

「すごい!!相沢教授、市川くん、これすごく美味しいよ。」

「そうだろう、広夢くん、遠慮せずどんどん食べたらいい。」

「うんじゃあありがたく!!」

広夢が食べるのを見てクリスも我慢できなくなったのかクッキーに
手を伸ばしていた。

「僕もいただいていいですか?」

「おう、遠慮するなって!!」

広夢にクリスが加わって藤守も物欲しそうにしていて・・・うう〜そんな顔されたら・・。
オレも食わなきゃいけねえ?

なんでかしらねえけど今日の藤守はちょっとヘンなんだ。
何がヘンって説明できねえんだけど、オレのすることがすごく気になるみてえで
視線をずっと感じるし。それに・・さっきだってオレの部屋で自分の方からその
誘ってきたりして。オレすげえドキドキしたんだぜ。
なのにその時市川から電話があってここに来る事になっちまって。
まあ残念だったけど、市川の事がオレも藤守も気になったし・・。

そんな事を思い出してたら藤守とは違う熱い視線を感じてオレが振り返ると
目をトロンとさせた広夢がオレのすぐ傍にいた。

「空先輩、藤守先輩とは恋人なの?」

「へっ??」

オレは突然の広夢の質問に間抜けな返事を返していた。

「ねえねえどうなの?」

広夢はまるで酔っ払ってるみてえにオレに腕を絡めてきてオレは
慌てた。

「えっと、オレと藤守は恋人だけど。」

そんな言い方をすると普段なら「違う!」っていう藤守も案の定つうか今日は
何も行ってこない。寧ろ広夢に対して露骨に顔をしかめると広夢が握った方とは
反対のオレの腕にぎゅっとしがみついてきた。

「広夢くん、ダメだよ。羽柴はオレの恋人なんだからね。」

「そうなの?僕には二人の間に入る間はないの?
だったら空先輩、僕はナオくんの次でいいよ。愛人でも浮気の相手
でもいい。僕、ナオくんも好きだから。僕が本命でなくていいんだ。
空先輩はダメ?」

ダメってうるうるした瞳で見つめられるとオレは首を横に振ることしか
出来なかった。そしたら広夢のやつしょんぼりした顔してたけど
次の瞬間もう立ち直ってた。

「だったら、空先輩、今度3人でHしようよ。だったらいいでしょ?」

名案とばかりに思い浮かんだらしい事をいった広夢にオレは噴出していた。

「ぶっ!!」

オレは不謹慎な事を想像しそうになって顔をブンブンと横に振った。
なっなんなんだ、藤守だけじゃなく広夢まで、いきなしどうしたって言うんだよ。
そしたらいつもは仲がいい広夢と藤守が喧嘩しだして・・・。

「そんなのヤダよ。羽柴は誰にも渡さないんだから、浮気も愛人
も絶対に許さないんだから。」

「直くんのケチ!!直くんは
空先輩とずっ〜と一緒にいるんだから、僕にちょっとぐらい譲ってくれたっていいでしょ!?」

広夢と藤守に腕を掴まれてオレが途方にくれていると今度は向こうでクリスの
甲高い声が響いた。

「七海先生、あなたはそのような人と一緒にいてはいけません!!」

あまりの大きな声にびっくりしてクリスの方をみるとクリスは祈るように両手を
七海ちゃんの手に重ねて詰め寄ってた。今度はクリス?
一体どうなっちまってんだ?

その時相沢の高笑いが聞こえた。

「すばらしい。これはすばらしいではないか学くん!!」

「教授すごいだろ?」

相沢と市川の会話はオレにはさっぱりわからなかった。けど
今まで何もいわねえで黙ってみていた永瀬がその時はじめて口を開いたんだ。

「学、お前は薬の効果が切れているのか?」



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れはギャグになるのかな〜?(笑)
4話で終わるはずだったんですが(汗)後もう少し続きます。
もう少しお付き合いくださいね。