心地よいだるさが体全体を纏ってる。
昨日は随分やっちまたからな。
藤守に無理させちまったよな。
でもだるいからって日課のジョギングサボるわけには
いかねえし・・。
藤守を起こさねえようにしびれた腕を外そうとして
オレはある違和感に気づいた。
あれ?藤守の体温熱くねえか!?
いつもはオレよりもずっと体温低くて今日みてえに寒い日なんか
オレが布団から出て行こうとするだけで無意識に抱きついてくるんだぜ。
それがまた無防備で可愛いっていうか・・・。
って今はそんな事考えてる場合じゃねえっ。
「藤守 藤守 ・・・」
オレが呼びかけるとだるそうに藤守が目を開けた。
少しうるんだ瞳に乱れた髪、熱のせいかほてった
顔がいつも以上に色っぽくみえて・・。
ってオレ何っ不謹慎なこと考えてんだ!!
「くうちゃん・・・?」
まだ半分夢の中って感じの藤守の額にオレは手を当てた。
やっぱりかなり熱いよな?
「お前熱ある。大丈夫か・・・」
「ええっ?」
藤守は擦れた声を上げて喉に手を当てた。
「藤守、喉痛えのか?」
「うん」と小さくうなづいた藤守にオレは思わず謝ってた。
「ごめんな。昨日藤守疲れてんの知っててオレが無理させ
ちまったから。
すぐ七海ちゃんとこに行って薬もらってきてやっから。」
藤守は赤い顔ををもっと赤くして首を振った。
「ただの風邪だから大丈夫。くすり・・はいいから・・。」
藤守が薬は苦手だってのはわかってるけど、こんな状態の
藤守ほっとけねえっ。
「わかった。とにかく七海ちゃんにみてもらおうな。大丈夫だから・・。」
オレは藤守を安心させるように言って部屋を慌てて飛び出した所で
自分が何も身に着けていなかった事に気づいた。
「やべえ、オレ裸じゃん。」
部屋では藤守がゴホゴホと咳き込んでる。
ああオレのバカ。あんなに辛そうなのに朝まで気がつかなかった
なんて。
とにかくオレはジョギングに行くために準備してたスェットスーツを
慌てて羽織って七海ちゃんの部屋へ急いだ。
部屋に連れてきた七海ちゃんは藤守をみて大きなため息をついた。
「全く・・・」
「ええっあああ〜!!!」
オレだけでなく藤守も裸だった事をオレはすっかり忘れてたんだ。
しかも床にはオレが昨日脱がしたパジャマや下着やらが落ちていて
これじゃあ昨日オレたちがHな事しましたってバレバレじゃん。
「羽柴くん!!」
「ご ごめん七海ちゃん。」
オレは思わずってかんじで謝ったんだけど七海ちゃんはなぜか
呆れたような表情をしてる。
「七海ちゃんこれはそのオレが悪いんだ。だから・・。」
「何も空くんを怒ってるわけじゃないんですよ。」
七海ちゃんはそう前置きして、
『ただ診察のジャマですから出ててくださいね。』
っていつもの笑顔でオレを追い出しにかかる。
「でも、おれ藤守のこと心配だし・・。」
「羽柴くん!直くんなら大丈夫ですから。」
七海ちゃんはにっこり笑ってるけど・・・うううちょっと怖いかも。
仕方なくオレは部屋の外で落ち着かずに待ってたら
しばらくして七海ちゃんが部屋から顔を出した。
オレが部屋に入ると藤守はもうきちんとパジャマを着こんでた。
七海ちゃんが着替えしてくれたみてえだ。
藤守はあいかわらず赤い顔をして呼吸が荒かった。
「七海ちゃん、藤守大丈夫なのか?」
「ええ。まあ。風邪のようなのですが・・。」
「風邪?」
「でも流行性のものも流行っていますし、気をつけた方がいいですね。
空君も充分に気をつけてくださいね。」
そこまで言って七海ちゃんは小さくため息をついた。
「本当は薬を服用した方がいいのですが今は飲めないというので、
置いていきますね。空君、あとで口あたりのいいものと一緒に
飲ませてあげてください。何かあったらいつでも私の所に来てくれて
かまいませんから。」
七海ちゃんが退室したあとオレは藤守の傍に腰を下ろした。
「藤守その・・大丈夫か。何か食うか?」
藤守は小さく首を横にふった。
オレなんか情けねえよな。
藤守が辛い思いしてるのにだた傍にいることしかできねえなんて・・。
「それより くうちゃん。オレの風邪うつっちゃまずいからここにいない方が
いいよ。」
「藤守・・。」
藤守お前バカだよ。自分がこんなにしんどい思いしてんのにオレの
心配なんかしやがって・・・オレは胸が熱くなった。
「藤守をほっとけるわけないだろ。」
「でももうすぐ試験だよ。もし風邪でもひいて羽柴がまた留年
でもしたら・・。」
オレはその気持ちを受け取るように藤守の手を握った。
「ありがとうな。藤守。でもオレは大丈夫だから。ほら、バカは風邪ひかねえ
っていうだろ?」
神妙な顔をしていた藤守が小さく笑ってオレもそれにつられたように
笑った。
「あのね・・羽柴・・。」
オレの手をぎこちなく握り返してきた藤守が遠慮がちにオレを見る。
「どうした?藤守・・」
オレが優しくその先を即すと恥ずかしそうに藤守が言った。
「あの・・もっと傍に・・ て・・ほしい。」
「ああ。」
オレは布団に入るといつもよりずっと早い鼓動の藤守を抱きしめた。
安心したように藤守が眠りに落ちてく。
オレ、何もできねえなんて思ってたけどそうじゃねえんだよな。
ただ傍にいるだけでも藤守が安心してくれるなら今はそれだけで
いいのかもしれねえ・・・
なんて、それってオレの自惚れじゃねえよな?
それから丸二日寝込んだ藤守がようやく起き上がれるようになった時
今度はオレが風邪を引いちまった。
うううう〜オレってホントにバカだ!!!
「大丈夫だよ。オレはもう風邪はうつらないから・・。」
なんていいながら、甲斐甲斐しくオレの世話を焼いてくれる藤守を見てると
まあたまにはこういうのも悪くないかなんてオレが思ってることは・・・。
藤守には内緒だぜ?