恋する少年
最終話
       
  
         



二人の様子をこっそりと見ていたコンラッドは二人が眠りについたあと
複雑な気持ちを抱えて部屋を退出した。

おそらく・・・ユーリはコンラッドが部屋に居たことを気づいていたのだと思う。
覚醒したユーリは人並み外れた感覚をもっていたし。

何より、ヴォルフラムと対峙した時、ユーリのプレッシャーはコンラッドに向いていた。
ヴォルフラムは余裕がなかったから流石に気づいてはいないだろうが。


『よの愛はそなただけにむけたものではない。』

あの言葉はヴォルフラムだけでなくコンラッドに向けて言ったもの
なのだろうことは容易に察しがついた。
普段はこういった事に人一倍鈍感なユーリなのに。

きっとあの方には隠している想いも見透かされているのだろう。



ユーリへの想いがコンラッドの胸に押しあふれ、それに耐えるように
胸に拳を握った。
この想いは隠しとおさなければならないというのに。
そして同時にコンラッドはまた思う。

ヴォルフラムのように思うがままにユーリにぶつかっていけたらどれほどよいだろうと。
コンラッドは宮殿の中庭で足を止めるとこの思いを振り払うように夜空を仰いだ。







オレはおかしな夢を見ていた。
どうしてこれが夢かってわかったっていうと
チームメイトが(相手チームも)みんな眞魔国の連中だったからだ。

キャッチャーはオレで、ピッチャーはコンラッド。バッターはギュンターの番だった。

コンラッドのボールはすごく伸びる直球だ。コンラッドらしいな、なんて
思っていたらギュンターがボールを真上に打ちあげたんだ。
オレはそのボールを取るためにメットを外して
ボールの落下地点に走りこんだ時、
3塁ベースからものすごい勢いで走ってきたやつに思いっきりぎゅって抱き
しめられたんだ。

「へっ?」

間抜けた事にボールはころころとオレの足元にころがってその超本人は
得意げに笑い出した。


「僕の勝ちみたいだな。ユーリ、潔く僕と結婚しろ!!」

「ヴ、ヴォルフラム!?」

すっとんきょんな声を張り上げた所で有利は目を覚めた。

有利は何でそんな夢を見たのか目を覚ましてようやくわかった。

有利はヴォルフラムにいつもみたく抱き枕のように抱きしめら
れていたのだ。
・・・しかもヴォルフラムに抱きしめられたこの感触から察するに
ひょっとしてヴォルフラム何も着てない・・・?!



「ウ・・ソだろう?」

あまりの事にベッドから逃げ出そうとした有利をヴォルフラムはますます
ぎゅっと抱き寄せる。

「おい、ヴォルフラム目を覚ませっ、じゃなくて目を覚まさなくていいから
この手を離せ。」

「ごちゃ、ごちゃとうるさいな。昨日はあんなに愛し合ったのに。」


ヴォルフラムの口から出た言葉に有利は思考を停止させてると、
ヴォルフラムは目をごしごしこすりながら上半身を起き上がらせた。
そしてこれ以上ないほどの笑顔を有利にむけた。

「ユーリおはよう。」

「あっと、おはよう、ヴォルフラム??」

ようやく反応したユーリの笑顔はぷるぷると引きつっていた。
ヴォルフラムそんな有利を内心笑いながら真顔でいった。

「ユーリ、お前は昨日僕に結婚以外だったら僕のお願いを聞いてくれるといってたな。」

有利は「言ったかもしれないけど・・。」と曖昧に言葉を濁らせたのでヴォルフラムは
ぶすっと不機嫌さを装った。

「まさかまた忘れたなんていうんじゃないだろうなあ!!」

「いや、覚えてるけど・・。それでヴォルフラム、そのお願いって?」

何を言われるのだろうと思ったのか有利の表情は引きつっていた。
そんなユーリを内心笑いながら言い放った。

「有利、お前は僕の婚約者だ。今までも、これからもずっとだからな。
それだけは忘れるな。」

言ってしまったあとヴォルフラムは顔が熱くなるのを感じてそれを誤魔化すように
コホンと咳払いをした。



ユーリは一瞬きょとんとしてそして急に何を思ったのか「まあいいか。」って笑っていた。



                                                   END

あとがき

まあ、こんなオチで(苦笑
初マ王の二次小説だったんですがまた書けたらいいな〜と思います。