キョンの憂鬱



※ブログでUPした時とタイトル変わってます。内容はかわってないです(苦笑)


それはSOS団で王さまゲームをしていた時に始まった。

大体王さまゲームなんてものはこんな少人数でするゲームではないはずだが
言い出したら聞かない団長さまの命令で団員たちは
しぶしぶゲームするハメになったわけだ。



「はいはい、私が王さまね・・。」

王さまを引き当てた
ハルヒはこれ以上ないほど極上の笑みを浮かべてる。
こういう時のハルヒほど怖いものはない。

「2番が3番にキスをする。」

「ふふ〜ん」と鼻の下を伸ばし
あの可愛い顔でとんでもないことを言う辺りが
恐ろしいと言うか・・。
しかも3番ってオレじゃないか・・・。



しかし・・・いや、まてよ、2番が朝比奈さんだってことも
あるわけで、
オレは仄かな期待を寄せて2番を引いたやつ
を待った。
待ったわけだが・・。
手を上げたのはよりによって古泉で。

「おっ、副団長、じゃ相手は・・・。」

ハルヒは本気のようで目を輝かせている。

「ひょっとしてみくるちゃん?」

ハルヒに聞かれ慌てて朝比奈さんが首を振る。

「だったら、」

読書中無理やりひっぱりこまれた長門も小さく首を横に振る。

「ってことは・・・。」

ハルヒの瞳が期待に満ちたようにオレを見た。

「ああもうやってられるかっ、なこと、」

オレは自分のカードを机に投げると椅子から立ち上がった。

「オレいち抜け・・・帰らせてもらうからな。」

「ちょっと待ってよ。」

ハルヒはオレの前に立ちはだかった。

「私が王さまなのよ。」

本当にその態度は傍若無人な王さまだよ。

「はいはい、あのな、オレはそんなアホくさいことはしないから。」

「私の提案がアホくさいっていうの。あんたたちの接吻は
学校中のいや日本中の女子にめくるめく官能を与えるのよ。」

何をまたわけのわからんことを・・とオレは重い頭を抱え盛大にため息を
ついた。
それでもハルヒはこっちの事など構いもしないで妄想を肥大させているようだ。

「それが萌えっていうものなのよ。ねえ、みくるちゃん、」

いきなり振られた朝比奈さんは「ふえ!?」って声をあげて
頬を赤らめた。

「みくるちゃんもそう思うでしょ?」

ハルヒの強引な押しに朝比奈さんは頷づくしかなかったようだった。

「ほらね、」

何が「ほらね」なのかちっともわからんし、わかりたくもないっ。
オレが胡散臭そうにするとハルヒは口を尖らせた。

「まだ文句あるっていうの、長門さんだって本当は興味なさそうにみえて
あるんだから、」

長門は本から目を離すとオレとハルヒの方をちらっとみた。
そしてオレになんの脈楽もなく読んでいた本を差し出した。

「長門、何?」

差し出されたまま文庫本サイズの書籍を受け取って目を落とした瞬間
オレは見なければよかったと後悔した。
な・・・なんだよ。これは・・・。


『お前も男だろ。ここまできて逃げんなよ、』
『ああもう、○○○・・・」
『○○○○・・』
『・・・』


・・・※伏字にしなければ載せられない数々のプレイ・・・;


長門・・さっきから真剣に読んでいた本がこれなのか?
オレは無言のうちに長門にそれを返した。出来れば見なかった(なかった事に
して欲しい事実だ。)


そうしてもう1度盛大なため息をついた。
もう帰ろう。やってられん。
本気でそう思った時、古泉がオレの肩を掴んだ。

「なんだっ?て古泉?」

[おお〜、]

ハルヒが黄色い声をあげ、朝比奈さんは顔をますます真っ赤にさせていた。
古泉の顔がまじかに迫る。
まさかこいつ。マジでする気じゃ?

『お願いです。ここはハルヒさんの言う通りにしましょう。』

直接心の中に話しかけてきた古泉にオレは苦言した。

『てめえな、ハルヒの言うことならなんだってするのか?』

『仕方がないでしょう。地球の生存に関わることなのです。』

『またそれか?』

『おそらく・・・。これほど期待している彼女の期待をここで裏切ると
世界の均衡が不安定になることは予測できます。』

だからってなんでそんなことを・・・と直接大声でいってやりたかった。
大体オレと古泉のキスごときにそんな未来がかかっているなんて
どう考えたってバカげてる。

『馬鹿げているから、なお更なんです。』

「そんな事でお互い未来を失いたくないでしょう。」

急にはっきりと古泉の声が耳から聞こえてオレははっとした。
古泉は背後からオレの髪に触れるように頬を寄せた。

「きゃああ〜、」「わあああっ」

黄色いハルヒの声と朝比奈さんの恥らう声にオレまでかっと顔が
熱くなった気がした。いつもとかわりない長門と目が合ったがオレ
の動揺は大きかった。



実際、キスをしたわけじゃないはずだっ。
そういう風に古泉はみせただけで。
しかも髪だし。
それでもハルヒは大満足したようだった。

「ああ、しまった。カメラとるんだった。SOS団史上最強の
写真になるはずだったのに、」

何が史上最強なのかさっぱりわからんが・・・。

「命令は聞いたからな。とにかく俺は帰る。」

さっさと鞄を拾って部室をでようとした時、また古泉の声が心の中に
響いた。

『ありがとうございます。』

その声にオレはうんざりしつつ返事を返した。

『本当にお前はハルヒの言うことなら何でも聞くんだな。』

『あなたが不本意なのはわかっています。
でも・・・。もし彼女が貴方を抱けと命令していたなら
私はそうしていたでしょう。』

『は・・?』

オレの思考が完全に止まる。
同時にくすりと含むような笑い声が聞こえた。

「っというのは冗談ですよ。気をつけて帰ってください。』

あの涼しい顔でとんでもないことを言った古泉が普通の
人間とは到底思えない。
や、まあ普通の人ではないのだが。

もう1度ため息をついて
部室を出ると外は既に日が傾いていた。
賑わうグラウンドの声に軽音楽部の低いドラムの音。

このありふれた日常が、あいつの機嫌一つで消えちまうかも
しれねえなんて・・・。
まだ笑い声が聞こえる部室を後にしながらオレは表情を落とした。

全てに満足してるわけじゃないが・・・。
けど、願わくばこんな日常がいつまでも続いてくれることを願わず
にいられない。









             
あとがき

私は妄想が肥大するとお話を書かずにはいられない体質(?)のようで(汗)
まさかハルヒの二次小説を書くとは1週間前の私も予想だにしなかった(苦笑)

これからもこんな私ですがよかったらお付き合いください〜。






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