休息




         

      
コンコンっと扉をノックする音がして俺は眠れず寝そべっていただけのベッドから
慌てて起き上がった。


「クリストファー様 よろしいですか?」

紫苑の声・・・。
心臓はこれ以上はやくならねえってぐれえに速くなってる。

けどそんな事は悟られねえように平静を装うとオレは紫苑を部屋へと
迎え入れた。

「クリストファー様あの・・。」

「なんだ?」

紫苑の手にはオレの好物のホットケーキがあった。
わざわざ向こうから材料を持ってきたってか?ひょっとしてオレの為に?

「夕食あまり召し上がっていらっしゃらなかったようでしたから
それで、ホットケーキをお持ちしたのですが。」

「って、オレがいつまでもそんなもん食うと思うか?ガキじゃあるめえし。」

途端に紫苑の表情が崩れ落ちる。
オレはいつも気持ちとは裏腹に紫苑に突っかかってしまう。

「そうですか、では・・。」

何事もなかったように部屋から出て行こうとした紫苑を
オレは慌てて呼び止めた。

「ま、待てよ。せっかく作ったんだろ?だったらしゃあねえから
食ってやるよ。」

正直になれねえオレは不貞腐れたようにわざと明後日の方を向いて
そう言ってやった。けど紫苑はそんな事など気にしてはいないようだった。

「ありがとうございます。」

紫苑はにっこり微笑むとテーブルの上ににホットケーキを置いた。

ホットケーキにはシロップもバターもちゃんとかかっていた。
オレが子供の頃から好きだったあの味だ。
もう何年も食ってなかったけどこの味は変わらなんだと思ったら
不意に俺の胸に何かがあふれ出し零れ落ちそうになった。

「クリストファー様どうかなさいましたか?」

「いや、別に、旨かったぜ。紫苑、ありがとう。」

平静を装ってなんとかそれだけは言う事だできた。

「このようなものでよろしければいつでもおっしゃって下さい。」

紫苑は何事もなく空になった皿を持つと部屋から退出しようとして
俺は慌てて紫苑を呼び止めてしまった。

「紫苑!!」

「どうかなされましたか?」

紫苑はあの晩からオレに何のアプローチをも仕掛けてこない。

オレも好きだと告げたのに両思いになったはずなのに以前と変わらない
態度と行動しかみせない。
それが大人の余裕ってやつ?か・・それとも・・。

まるであの晩ここでキスしたのはウソだったんじゃないかっておもう。
オレのこの想いは独りよがりなんじゃねえかって悩むぐれえ。
それともひょっとしてオレがお前の主君だからか・・?
だから手を出しちゃいけねえなんて想ってるんじゃねえよな。

言い募ってしまいそうな想いを俺はぐっと両手に拳を作る事で飲み込んだ。

「いや、何でもねえよ。紫苑、お休み、」

「おやすみなさい、クリストファー様」


パタンと閉められた空間が妙に冷たくかんじた。
さっきまでいた場所とは違うんじゃねえかっておもうぐれえ。
ほんの少し前紫苑がここにいた時は感じなかったのに。


「紫苑、俺はお前をこんなに求めてるんだぜ。」

子供の頃オレが泣くといつも抱きしめてくれたあの大きな腕が
今はすごく遠かった。
あの頃とは俺たちを取り巻く環境も感情も変わっちまったけどな。

「紫苑・・愛してる・・」



先ほど言えなかった言葉をつぶやくとオレは紫苑の変わりに
傍にあった布団をぎゅっと抱き寄せた。






エンジェルズフェザーお初二次小説。二次小説って言うよりゲーム中の
二人の宿屋でのやり取りをそのまま書いただけかも(汗)
この二人はまたいずれちゃんと書きたいなあ〜。





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