『碁遊記』〜第三話〜甘い誘惑にはご用心?〜
(前半 流斗 後半 緋色が担当してます。)
アキラ王子を料理したくって待ち望んでいた妖怪達。
しかし待望の彼は、ハニ−とルンルン旅行気分で帰ってくる気配が無い。
仕方無しに怒りを抑えて、床に就いた。
「タッパ−をヒカル三蔵に預けておけば良かった!!」
「無理ちゃうか?何時も俺らのまで掠め取っとる位やし・・絶対綺麗に食っとるわ。」
「どうして俺に惚れてくれなかったんだ〜!!アキラ王子。」
伊角八戒の問題発言で、他二名は『止めといた方が身の為だ』と一応助言をしたのは、仲間思いの表れか?
大胆にもキスをしてしまったアキラ王子は・・
(何て僕はおちょこちょいなんだ・・ヒカル三蔵は色気より食い気が勝っている事は分かっていたのに・・)
ふくよかな唇を感じた幸福より、ばれた時の事が正直怖かった。
(でも・・あれは僕だけのアルバムに仕舞っておこう。)
そして一向に起きないヒカル三蔵の寝顔に微笑む。
寝相が悪いから、布団が直ぐにずれてしまう彼のそれを整え・・
「こら・・風邪をひいちゃうぞ。君は僕にとって大切な男性(ひと)なんだから・・大事にしないと。」
その呟きをヒカルは夢心地で聞いていた。
しかし反応せず、だまってアキラの誠実さに甘えていた。
アキラの肩に頭を預け、仲間達との合流を望んでいた。
が・・!!
「アキラ王子・・此処は一体何所なんだ?」
「僕の別荘地である軽井沢なんだけど・・」
何所の世界にヘリで他国を跨ぎ、他国で何事も無かったように出来るのだろうか。
しかも燃料は微妙な状態で・・どうやって・・
「ああ・・ヘリは乗り捨てた。豪華客船に乗り換えて此処までタクシ−でやってきたんだよ。」
業務連絡の如く、説明をするアキラに青筋がたったヒカル三蔵。
「俺は天竺に行こうと思っていたんだ。これじゃ・・逆方向じゃんか!!」
ごもっともな怒りがアキラ王子の周辺に漂う。
しかし・・
「君に栄養価が高い日本料理を堪能してもらおうと思ったのが悪かったのかい?」
切なく言ったアキラ王子にヒカル三蔵は反省した。
のたれ死ぬところを助けてもらったのを少しだけ感謝して・・
「しゃ-ない。今回はデ−トしてやるか。お前と・・」
その言葉でアキラ王子は嬉しさの余り、ヒカル三蔵に赤面しながら抱きついた。
そのはしゃぐときめきを処理出来ないまま・・
(しかし僕は絶対君の気持ちをこの手に掴んでみせる。覚悟しろ。ヒカル三蔵。)
その頃 アキラとヒカルの帰りを今や遅しと待つ伊角 和谷 社の元へ季節外れともいえる真っ白なスーツ姿をきっちり決め込んで颯爽と?現れた人物がいた。アキラの兄 精次だ。
「ようこそ。わが城へ・・・弟の客人だと聞いているが、何か要望などあればなんなりと言いつけてくれ。」
三人はようやくまともに話が通じそうな精次の登場に安堵し 思っていた事を口々にもらした。
「俺たち 育ち盛りでさ 飯足りなかったんだ。」
和谷の隣で社がぼやく。
「いや、俺は量はすこしでええんやけど豆腐と湯葉とたけのこ ちゅうんがな・・・肉や魚もくいたかったわ。」
「ヒカル とアキラはご馳走を食べにいったって聞いたのに俺たち納得いかないんです。」
伊角の言い分に和谷と社が「もっともだ」といわんばかりにうなづく。
「あれは日本の京都からわざわざ仕入れさせたものだが客人の口には合わなかったか。わかった今からすぐにデザートでも用意させよう。それでどうだ。」
デザートと聞いて三人の口元が綻んだ。
現金なものでヒカルやアキラのことなどすでに忘れている。
だが・・・緒方は「ただし・・・」と断りを入れてきた。
「俺も是非デザートはご一緒させてもらいたいんだがな。」
意味がわからず和谷がきょとんとする。
「もちろん。アキラのお兄さんもどうぞ。」
そう返したのは伊角だったがその途端伊角の顎は精次によって持ち上げられ値踏みされていた。
「うむ。君は悪くないな。」
「な・・・何をされます。」
「くくく・・・俺もアキラも男食家でね。美少年をデザートにするのがなによりも好物でね。もっともアキラはあの前髪金髪坊やしか目に入らないようだが。」
伊角の顔が途端に青ざめる。
「デ デザートは遠慮します。」
一人部屋へと退散する伊角を呆然と見つめる和谷と社。
「えっと・・・」
「彼が駄目ならお前でも構わんがな。意外とかわいくて俺好みだ。」
精次が次にターゲットにしたのは 和谷だった。
「お 俺も遠慮します。」「も もちろん俺も あかんで。」
身の危険を感じた和谷と社が伊角の後を追いかけた。
緒方は白い煙を吐きながらにやりと笑みを浮かべた。
「気が向いたら俺の部屋へこい。かわいがってやるぞ。」
まったくとんだ兄弟である。
4話目へ
緒方とアキラが兄弟という設定はどうやら私のアイデアらしいデス(滝汗;)