空を行く雲






     
 タバコの臭いを微かに残すベッドはこの部屋にいない主の
 名残りを残していた。


 これでもかというほどに俺と塔矢は求めあって
 やがて俺は体中の力を弛緩させベットに沈み込んだ。


塔矢がゆっくりと優しく俺の前髪を掻き揚げた。
気持ちよさについまた甘い吐息を漏らしそうになった
おれは急に恥ずかしさが襲った。

 「大丈夫・・・?」

顔を覗き込まれて俺は恥ずかしさに声を荒げた。

「大丈夫じゃねえよ。お前もっと手加減しろよ。」

「手加減すると、君に失礼だろ。」

「バカ!」っと抗議すると何度も優しいキスが降りてきた。


それが心地よい。
キスされるたびに塔矢に好きだと言われているような気がして俺は
自分からもキスを求めた。


 だが塔矢はそれを外してきた。

「お前まだ欲情してんのかよ。」

「君こそすぐ僕にキスしようとする。」

「いいじゃん。キスぐらい。」

「構わないよ。でも・・・」

困ったように塔矢は視線を逸らした。

「俺さ 塔矢にキスするのも、されるのすげえ好きだぜ。
キスされるごとに好きだって言われてる様な気がする。」

頬を赤らめながらそう言った恋人に我慢できず塔矢が
飛びついてきた。

「好きだよ。進藤」

 深いキスに塔矢の体の奥に残る熱がまた湧き上がってる。
それに気づいて俺は唇が離れたあと念を押す。

「駄目だからな。」

「わかってる。」
     
塔矢の指が俺の背をなぞる。

「わかってねえ〜」

至近距離で目があった途端二人は小さく噴出していた。
そしてベットの上 犬コロのようにじゃれあった。

 ただ無邪気に。互いを求めてる。

そしていつの間にか俺と塔矢は折り重なるように
眠っていた。


互いの存在をその腕に確かめるように・・・






 塔矢に起こされたのは日も傾きだした3時過ぎだった。

「進藤 お腹すいてない。」

俺はまだ体が気だるくて眠りから醒めない。


「ん〜。まだ ねむい・・・・」

「そう もう3時回ってる。何か作ってくるよ。」

ようやくまどろみから醒めた俺は部屋を出て行くアキラの背を追う。
体の芯に残る痛みもベットに残る塔矢の温かさも夢でないのだと
実感する。




10日間・・ここで塔矢と。



「俺の体持つかな。」

自然と漏らした言葉に苦笑した。


     
      


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