放課後俺は図書室で少し時間をつぶしてから
化学室に行った。
塔矢は今日化学室の掃除当番だった。
「あれ 塔矢1人?」
化学室にいたのは塔矢1人でその塔矢はというとほうきで
ゴミを集めている最中だった。
「さっきまで居たんだけどね。部活や委員会
で後を頼まれた。」
俺は呆れてほうきを手にもつ。
「お前気がいいから。塔矢だって塾があるのに。」
「塾は夕方からだから・・。それより進藤手伝ってくれるの?」
「しょうがねえだろう。お前と帰る約束したし・・・」
そうは言ったものの塔矢とこうやって二人でいられるの
は悪くない。
それがたとえ掃除当番だったとしても俺はうれしかったりする。
「すまない。今度君が当番になった時は手伝うよ。」
律儀なアキラに俺は思わず噴出した。
「そんなのいいよ。俺が好きでお前に付き合ってるんだしさ。」
雑巾を手すりに干してほうきを片付ける。
「進藤助かったよ。ありがとう。」
「うん」
あらたまって言われると何だか照れくさい。
二つ並べた鞄を持つと化学室を出ようとした塔矢に
俺はつい声をかけた。
「なあ 塔矢。」
「どうかした?」
もう少しでいい。一緒にいたいと思ったのだ。
でもそれはいえなかった。
「あの いや その何でもない。」
アキラは鞄をもう1度その場に置くとふわりと俺を包みこんだ。
えっ?
胸が大きく高鳴った。
肩に塔矢の体温を感じる。吐息だってすげえ近い。
心臓の音だってこっちまで伝わってきそうで・・・
恥ずかしくて顔が上げられなくなる。
俺の体を纏っていた塔矢の体温が離れていった。
何事もなかったように塔矢は鞄を手に取った。
「悪かった。進藤帰ろう。」
俺は立ち去ろうとする塔矢を呼び止めた。
「待てよ。塔矢 お前はさ、誰にだってそんなことするのかよ。」
一端背を向けた塔矢が振りかえる。
目が合った途端俺の心臓は振り切れんばかりに早くなった。
「誰にもこんなことはしない。君だからしたんだ。」
君が好きだ。こんな感情 可笑しなことだってわかってる。
でも押さえ切れなくて・・どうかしていた。
すまない。僕の言った事はした事も忘れてくれないか。」
おそるおそる俺は震える腕を塔矢の腕に伸ばした。
「俺忘れるなんて出来ない。 だって俺も・・・
俺も 塔矢が好きだから」
「進藤?」
つかんだ腕を俺は引き寄せて俺は自ら塔矢の唇に口付けた。

|