「進藤 早く行こうぜ!」
「おう。」
「今日はB組の越智 本田のチームだから楽勝 楽勝!」
鼻歌交じりの和谷がドリブルしながら人ごみを
すり抜ける。
俺たちは昼休みクラス対抗のバスケットゲームを
楽しんでる。
自分たちでこしらえたリーグ式の対戦表には
俺たちのチームの白星が並ぶ。
このままだと1位だって狙えそうだ。
何と言っても俺と和谷のコンビネーションが絶妙
なのだと自惚れしてる。
和谷から来たパスが繋がり俺の3ポイントシュートが決まる。
「よっしゃ〜!」
ガッツポーズを決め込んだ時に女子の黄色い声が飛び込む。
「塔矢くんよ・・・」
俺は女の子たちが見上げる方を振り返った。
丁度教室からこの中庭を見下ろしていた塔矢と目が合う。
ひょっとして今の見てたんだろうか・・・
その時だ。
「進藤 避けろ!」
「へえ!?」
状況を飲み込む間もなく俺の頭上から
ボールが落ちてきたのだ。
「いってええ〜」
頭を抱えてその場に座り込んだ俺の醜態に
塔矢に沸いていた女子の声が笑い声に変わる。
「進藤 女なんかに気を取られるからだ。」
冷ややかな越智の声にむっとする。
わざと俺を狙ってボールをぶつけやがったのだ。
もう1度見上げた教室には口元を押さえて笑いを
押さえている塔矢がいて顔だけでなく羞恥
で体中が赤くなっていくのを感じた。
どうしてこんな所見られちまったんだろうと俺は情けなく
なった。
放課後の下駄箱で塔矢と並ぶ。
同じクラスだし帰宅組みの俺と塔矢が
こうやって肩を並べることは特別なことじゃ
ないけれどやっぱりうれしいとおもってしまう。
「進藤・・・」
塔矢に呼びかけられたことで心臓が
止まるんじゃないかと思うぐらい
跳ね上がった。
「な 何?」
「よかったら一緒に帰らないか。」
「いいけど・・お前の家どこだっけ?」
本当は聞かなくても知っていた。
「海王の方だけど・・・君は葉瀬だっけ。」
塔矢が俺の最寄りを知ってたことに俺は内心驚いていた。
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