白と黒 交差点10(ヒカルの場合) 塔矢がオレのうちに訪ねてから2週間がたつ。 今日はオレの方が塔矢の家を訪ねてる。 「進藤?」 ぼうっとしていたオレに塔矢が苦笑していた。 対局を終えた後で、オレはまだ対局の内容を引きずっていた。 くそって思う。明らかに塔矢との対局はオレの方が分が悪い。 「塔矢、もう1局うとうぜ、」 慌てて石を片付け始めたオレに塔矢が言った。 「さっきこれで終わりだと言ったろう?」 「いいだろう。もう1局だけだって、」 意地になって言うともう1度塔矢が苦笑した。 「進藤、ひょっとして僕を怖がってる?」 オレはドキッとした。 対局中は忘れてしまうのだが、オレと塔矢は付き合ってる。 それを意識すると困ることになるのだ。 だから意地になるように打っているのもあるのかもしれない。 「なんだよ。怖いって、大体怖かったらここにはこねえだろ!!」 怒鳴るように言うと塔矢がため息をついた。 「怖いっていうのはそういうことじゃなくて、その・・・。行為というか」 オレは顔から湯気がでてきそうなほど、顔が赤くなった。 怖いか。怖くないか?それはよくわからなかった。 ただ考えただけで死ぬ程恥ずかしい. 塔矢とキスしたことを思い出しただけでもカラダが熱くなったし、 熱を帯びたカラダに困ったこともあった。 なのに何度も巻き返すように触れられたことを思い出してしまうのだ。 求める気持ちがあるのは認めるが、それと同時に抑制しようとする自我もあって 自分自身なのに感情をコントロールできず持て余してしまう。 それをどう塔矢に説明していいかわからないままヒカルは頭を抱えた。 「進藤・・・。」 言い寄るように寄られてヒカルは身構えた。 塔矢は一瞬躊躇したようだったがそのままオレの腕を掴んだ。 「君に触れたい。・・・君が欲しい。」 体の中に雷が走ったようだった 心臓が止まりそうなほど震えてる。 「お前このあいだ 少しずつでいいって言ったじゃねえか。」 「言ったよ。」 「じゃあ、」 「君が怖いと思ったら辞めるし、無理強いをするつもりはないんだ。」 言い募る塔矢を見ているとぐらっと流されそうになる。 こんなことを聞いちまったら今まで付き合ってきた塔矢という人間を オレは知らなかったんだなって思う。 そんなことなんてまるっきり考えてないような顔してるくせにこんな風に 懇願されたら困るのだ。 「オレそういうのよくわかんねえんだ。怖いのか、恥ずかしいのかその全部なのか。」 塔矢に握られた腕が無性に熱い。 「お前とキスしただけで頭の中わけわかんなくなるし、心臓だってバクバクして・・。」 『・・・わけわかんねえんだ。』 「そんなの聞いたら余計に抑制できなくなりそうだ。それは君が僕を好きだって ことだろう?」 そういうことになるのか?とオレがあせっている間に塔矢はオレを抱き寄せ、軽くキスを した。 耳元でささやかれる声。 「ヒカル・・・。」 初めて呼ばれる名前に震えた。 「君が欲しい。」 再度懇願されて 震える手を重ね合わせる。 塔矢の手も震えていた。 約束どおり塔矢は無理強いはしなかった。 カラダを見られるのが恥ずかしくて布団の中で電気もつけなかった。 それでも触れた肌と肌に興奮したし、落とされた唇に体中が震えて、わけもわからない まま熱にうなされお互いの手に射精した。 軽い気だるさがカラダをまとっていた。 同じ布団でしかも半裸の塔矢が寝ているなんて、あまりに恥ずかしくて抜け出したかったが 気だるさと眠気に勝てずオレは夢眠った。 時々、夢の中でオレを抱きしめる塔矢の腕が強くなる。 キスも何度もされた気がした。 明け方目が覚めたのはトイレに行きたくなったからだ。 塔矢の腕を抜けたが塔矢は目を覚まさなかった。 疲れていたのだろう。 オレは昨日のお返しとばかりに、おそるおそる塔矢のうなじにキスをした。 塔矢の唇からかすかに声が漏れる。 その色っぽい声を聞いてしまったオレはまた困った状態になりそうだった。 『何やってんだよ、オレ』 心の中で自身に叱咤して布団から出た。 外の冷気にあてられぶるっと体が震えた。 慌てて脱ぎ散らかされていたものを羽織って部屋をでた。 用を済ませて部屋に戻ろうとしてオレは足を止めた。 11話
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