交差点7

 



微かに触れた唇に体が戦慄く。

「進藤、」

見下ろされ、塔矢に囚われたようだった。

「もうどけよ。」

塔矢とオレのカラダの間を腕で遮ぎろうとしたらその腕を掴まれた。

「震えてる。」


そういった塔矢の腕もオレと同じように震えていた。

「ずっと君に受け入れてはもらえないと思ってきた。
けれど君は先日体なんて魂を入れる器にすぎないと言ってくれて
嬉しかったんだ。あの時はそれだけでもいい・・と思った。
なのに
僕は欲深くて、もっと、もっとと君を乞うてしまう。」

また塔矢の唇がオレを捕らえてオレはぎゅっとカラダに力を入れた。
長い長いキス。

「うっ・・・。」

唇から全身に甘い痺れが伝わりますます体の震えが止まらなくなる。
それに塔矢に抱きしめられた体が、密着した肢体から熱が発する。

『熱い。』

熱さに腰を逃がそうとしたらこともあろうに塔矢の全身で押さえ込んできた。

「あっ、」

口内にオレの悲鳴が消される。


触れた塔矢がどんな状態かなんてわかる。
塔矢がオレに欲情するなんて。それにオレだってそれに感じはじめてて、
あまりの羞恥にオレは思いっきりもがいた。

それでようやく唇が放された。息を継いだオレは塔矢を思いっきり押しのけ、布団から
飛び出していた。

塔矢もオレを追うように布団から飛び出し部屋の電気をつけた。
しばらくの間お互い対峙するように布団の上で向かい合ったがオレは塔矢と視線を
合わせることができなかった。

沈黙を破ったのは塔矢の方だった。


「すまなかった。少し頭を冷やしてくる。」

退出しようとした塔矢の背をオレは呼び止めた。

「待てよ。」

足を止めた塔矢が振り返える。
拒否されたと思われたくはない。けど・・・。

オレは呼び止めても塔矢の顔をまともとに見る事が出来なかったし、何を
どう言えばいいかわからない。

「オレお前のこと好きだ・・と思う。って気づいたの最近で。だから、えっと・・・。」

言葉が思うように出ない。どういえば塔矢に伝わるのか?わかってくれるのか?
それでもしどろもどろの言葉をつないだ。

「こういうのオレまだよくわかんねえから。」

体が心についていけていけない。
間を取っていた距離を遠慮がちに塔矢の腕が伸びた。

「えっと、塔矢?」

塔矢に先ほどの激しさはない。身構えたオレの肩を抱いただけだった。

「ありがとう。進藤、・・・少しずつでいいんだ。」

「うん。」

お互いの心臓の鼓動がドクンドクンと速い鼓動を立てていた。
オレだけじゃない。塔矢だって余裕がなくて震えてて。
たぶん今同じ気持ちや想いを共有してるんだって思うと胸が苦しくなる。

困ったようにオレから離れた塔矢にオレは苦笑した。

「オレも、ちっと頭冷やした方がいいな。」

それに塔矢が笑った。

「だったら付き合おうか?」

碁盤を示されて「そうだな、」って応えるとオレも塔矢も今まで何事もなかったように
碁石を握っていた。


結局その晩は徹夜の碁を打つことになった。



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7話編集の都合上、短くなってしまいました。すみません;
次回からアキラくん視点になります。




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