近視の原因説

04/10/3

近視の原因は何か?
現在の医学では解明されていないからといって
放っておけば近視人口は増え続けます。
ここでは、これまでに指摘されている近視の原因をまとめてみましょう。

Steiger氏の説「遺伝説」
未だに支持する人がいる「遺伝説」です。近視の人の子孫は近視である、というやつです。 たしかに、親が近視だと子供も近視である確立が高いようですが、それだけでは遺伝とは言えません。 100年近く昔の説なので、「遺伝」というものの考え方自体が違った可能性はあります。 「遺伝」には「環境」との関わりが強いものが多いですので、 一概に「遺伝である」と決めつける訳にはいきません。

佐藤氏の説「水晶体屈折力の増加説」
近くを見るときは毛様体筋が収縮し、水晶体が分厚くなるため屈折力が増します。 そして、遠くを見るときは毛様体筋が緩み、水晶体が薄くなるので屈折力が減少します。 この遠くを見るときの水晶体の屈折力が強いために近視となる、という説です。 この説は、毛様体筋の緊張が解けないために水晶体が薄くならないという説の基になっており、 毛様体筋の緊張をほぐすストレッチを唱える広告などで、近視の原因とされています。

大塚氏の説「眼軸長延長説」
眼軸長(角膜から網膜までの距離)が長くなるために近視となる、という説です。 この説では、水晶体の屈折力は正視の人と変わらないとされる。 これが現代の眼科学における近視説として有力です。 眼軸長は眼の構造として決まったものであり、ストレッチなどをしても変わらない。 つまり、近視は治らない、ということです。 現代の眼科学で近視が治らないという立場を取っている理由なのです。

上述の通り、近視の原因には大きく分けて3つの説があります。
しかし、対策が見えてきません。
佐藤氏の説はストレッチが対策とされていますが、
医学的には、効果があるかどうか不明とされています。
以上の事から、現代医学では近視は治らないものとして扱われております。

では、治らないからといって、そのままで良いのでしょうか?
治らないからこそ、近視にならないように導くのではないのでしょうか?
そのためには、はっきりとした近視の原因説が必要です。
佐藤氏、大塚氏のように近視になった人の状態を詳しく述べてみても
対策を練るときには何の意味もありません。

そこで、次の仮説を見てください。


佐野 英司氏の仮説(「眼軸延長説」による)
視力の発達
ヒトの眼球は産まれた時から1.0以上の視力を持っているわけではなく、 成長していく中でそれだけの視力を獲得していくものである。 普通、産まれた時は遠視の屈折状態で、成長に伴い眼軸長が伸び正視の状態となる。 これは誰もが眼軸延長という成長過程を経ていることを意味する。 しかし、この期間での成長過程では眼軸長の伸びは正視の状態で止まるため、 眼軸長が伸びすぎて近視の状態となることはない。
眼軸長延長信号の存在
上述の通り、成長に伴い眼軸長は伸びる。そして、正視の状態で止まる。 では、眼球はどのようにして「伸びる」と「止まる」を判断しているのだろうか。 眼軸長の伸び方が少なければ遠視となるだろうし、伸びすぎれば近視となってしまう。 人体の設計図である遺伝子に書き込まれていると考えることもできるが、 ヒトの感覚器が刺激(信号)を基に成長することを考えれば、 外界から入ってくる光が眼軸長の延長に関係していると思われる。 つまり、無限遠点から来る光線が網膜より後ろに焦点を結ぶ(遠視の状態)なら、 眼軸長を伸ばすための信号(以下、眼軸長延長信号という)が発せられ、 無限遠点から来る光線が網膜に焦点を結ぶ(正視の状態)なら、眼軸長延長信号が発生しない。 この眼軸長延長信号を基に「伸びる」と「止まる」を判断していると思われる。
近視になる前の状態(輻輳異常)
正しい成長過程で手に入れた視力が低下し始める原因は何か。 学校の視力検査などで異常が見つかったときには、すでに近視になっている場合が多い。 その近視になる一歩手前とは、どのような状態なのか。 近視は眼球の屈折異常であるが、近視になる一歩手前であれば眼球には屈折異常はない。 つまり近視になる一歩手前とは、眼球以外の異常なのである。 それは外眼筋といわれる眼球運動をつかさどる筋肉の異常が考えられる。 近くを見る時、輻輳により両眼は内側に寄る。 この時、外眼筋では内直筋(内側の筋肉)がやや収縮し、外直筋(外側の筋肉)がやや弛緩する。 もちろん個人差はあるが、この状態が長時間続くと外眼筋が凝り固まってしまい、 遠くを見る時、両眼を元の位置に戻すのに普段より力が必要だったり、 ときどき遠くの物にうまくピントが合わせられなかったりする。 このため、遠くを見ることより近くを見ることのほうが楽になり、近くを見続ける癖が付いてくる。 この時点では外眼筋のストレッチ(近くを見たり遠くを見たりを繰り返すなどの運動)が効果的かもしれない。
近視の初期症状(仮性近視)
近くを見続けることの問題点は、毛様体筋の緊張状態が続けられるということである。 輻輳異常により近くを見続ける方が楽だからといって、近くばかりを見ていると 毛様体筋は緊張状態ばかりとなり、外眼筋と同じように凝り固まってしまいます。 こうなると遠くを見ても、なかなかピントが合わせられず、 学校の視力検査などで異常が見つかるようになります。 この状態を仮性近視と呼ぶ医師もいますが、普通の近視と同じように扱う医師もいます。 眼軸長の延長ではないため、眼を休めて近くを見る時間を減らすなど 毛様体筋の緊張をほぐすために努力すると、正視状態となる事もあるが、 外眼筋の緊張をほぐすことに比べて非常に難しく根気がいる。
近視(眼軸長延長)
毛様体筋が凝り固まってしまうと、遠くを見る時に緊張がほぐれないだけでなく、 更に近くを見ようとしても緊張を強めることが難しくなる。 つまり、屈折力が足りないために網膜より後ろで結像してしまうのである。 前述の通り、網膜より後ろで結像する場合、眼軸長延長信号が発生し眼軸長が伸びる。 すなわち、近視となる。 伸びてしまった眼軸長は元に戻らないため近視の状態は続く。
近視になってしまったからといって毛様体筋の緊張状態を解かないまま生活していると、 眼軸長延長信号の発生の機会が増え、どんどん眼軸長が伸びてしまう危険性が出てくる。 つまり、毛様体筋の緊張をほぐさない限り、近視の度はひどくなるのである。
調節力の加齢変化
ここまでの話では年齢については触れていないが、実際には年齢による差が影響する。 眼球の調節力は加齢とともに低下していき、30代から40代にかけて急激に低下する。 これは老視(老眼)として良く知られている。 老視の原因は加齢による調節力の低下であり、水晶体の硬化が主たる原因である。 実は、この調節力の低下は10代後半から始まっているのである。 あまり問題視されないのは、はっきり見えるが近点(最も近い点)8cmから9cmに遠ざかった、 という程度だからである。しかし、個体差がある。 近くばかりを見ている眼と、近くを見たり遠くを見たりする眼の差も考えられる。 一概に問題ない程度かは分からないのである。 一つ言える事は調節力が落ちると近点が遠くなるということである。 つまり、近点が遠くなるのにあわせて注視する距離を遠ざけていかないと、 網膜より後ろに像を結んでしまい、眼軸長延長信号が発生してしまう可能性がある。 これに加えて受験が熱を帯びてくる年頃でもある。 これまでより近くを見る機会が増えるのに、調節力が低下するという現象に見舞われる。 これが近視人口の増加につながっているのではないかと思われるのである。

非常に長い説だが、簡単に言えば、
佐藤氏と大塚氏の説を融合させたものと言えるかもしれない。
ただ、原因となるものは一つではなく、
さまざまな要因が結びついているのは確かである。
どの説を有力視するかは、各個人にゆだねられているのが現状である。





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