雪倉岳(2611)へ山スキーツアー(412から14)

 4月の北アルプスに入るのは初めてで、3月とも違い、5月の連休とも違うのだろうと期待して、「水越健太さんのガイドツアー」に参加した。夜行バスで長野駅に早朝に到着、空は快晴で楽しい春スキーを期待させる、路線バスで白馬駅へ、そこで宅急便で送ったスキーと荷物ととも水越さんと合流、車はいつもと違う軽トラックだった。Xトレイルは下山地の木地屋に昨日のうちにデポして来たそうだ。栂池スキー場に移動し、そこでもうひとりのお客さんのKさんと合流、身支度を整え、午前1030分に、ゴンドラに乗りこむ、しかし、天気予報どおりに山は雲に覆われ、少し雪も舞っていた。

 ゴンドラ2本で1845mまで、きょうのハイクアップは楽だ、2200mの天狗原まではそんなに標高差もない、2時間もかからず着くものの山は悪天に向かっていた、白馬乗鞍はみえず、雪がだんだんと強くなる。振子沢から蓮華温泉を目指して滑走がはじまる。しかし、雪が重たくスキーがまわしづらい、荷物も重い、狭い谷、トラバースの連続で、思っていた春スキーとは大違い、しかも、いよいよ降雪は激しくなってきた。「天は我を見放したか」は大げさだが、けっして楽しい滑走ではなかった。最初は、右(東より)から谷に入り、すぐに谷を横切り、尾根を横切る、これを2,3度くり返して行く、はっきりした谷筋の滑走の記憶がないままに蓮華温泉に続く林道、いきなり山側の欄干のない凍った橋を慎重にわたる、少し緊張した。そこからまもなく雪の山中の蓮華温泉小屋に到着した。ちょうど3時となっていた。自分の滑走技術の低さで時間がかかったようだ。

 さっそくビールで乾杯、温泉につかり、また、乾杯、今度は持参した純米酒を、夕食には赤ワイン1本を、3人ともお酒が好きという点では足並みがそろっていて、楽しいツアーだった。夕食には、ふきみそをつつみこんだカツがでた。なかなかおいしかった。雪は断続的に激しく降り続き、8時過ぎの寝る頃にもまだ降り続けていた。「明日、新雪による雪崩が心配だが、とにかく行ってみましょう」と水越さんのよびかけに不安もよぎった。(この日は、地上天気図をみるかがりでは4月の降雪や悪天は予想できなかったが、高層天気図では寒気が上空に入り、このような降雪、悪天が予測できるとのはなしだった)

 きょうは、「長い行程になる、前回は12時間かかった」ということで、445分起床、530分出発で、標2611mの雪倉岳をめざした。まず、兵馬平への下り、スキーで滑りだすものの雪が重たく、傾斜もないので進まない、すぐにシールをつけて進むことに、兵馬平で弁当にしてもらった朝食用おにぎりを食べる。そこから登り返し、滝見尾根ぞいに登って行く、ピンクのビニールテープでマークもされているようだ、ブッシュの濃い尾根を乗り越え、瀬戸川へシールをつけたままで滑りこむ、川はまだ完全に雪に埋もれていた。そこからは長大な登りが続く、頂上ははるか先で見えない、これから登るルンゼがみえるが、すぐに急峻な壁となってしまい、どこに頂上へつながるルートがあるかもわからない。

 午前730分、雪倉滝の左側のルンゼを登りはじめるが、すぐに急斜面となり、右の小尾根を乗り越す、滝上部なのだろうか、斜面は広いがさらに急な壁となっている、上部に雪庇とも、亀裂とも思えるものがあり、水越さんがピットなどを掘り、雪面の状態をチェック、あまりよくないが、「慎重に行きましょう」と下部のトラバースは避け、亀裂に向けてジグザクに登り、亀裂のところで一気に右側に斜上する。しばらく急な尾根を沿い、それを乗り越えると広い斜面にでた、そして、はるか遠くに雪倉岳の山頂がみえた。「ここまでくれば安全」と2回目の休憩をとった。

 そこからは頂上まで、真っ白で豊かな斜面が続く、視界を遮るものがなく、単調で苦しい登行が長時間続く、3回目の休憩、頂上も近いと感じながらも、長時間にわたるハイクアップでかなりの疲労感を感じる。もう頂上直下と思われるところで4回目の休憩、最後は、雪面が凍り、硬くなり、疲れた足では踏ん張れず、登れない、水越さんはすでに先に頂上に行ってしまったので、ブーツアイゼンにして登ることにした。スキーをザックに担ぎ、かなり遅れてやっと、氷の張った雪倉岳の頂上に立つことができた。絶景であった。午後030分過ぎ、7時間かけてやっと立った頂上であったが、強風に煽られるところで、先に着いた水越ガイドに「すぐに滑ろう」と仕度まで手伝ってもらい、滑走となった。

 登ってきたところとほんの数メートルルートを変えると少しだけ雪がやわらかく、スキーで滑り出せた。大斜面の上に出た。傾斜も思っているほどではなく、気持ちよく中ターンを切ることができた。この山行で、唯一楽しいスキー滑走だった、山スキーの醍醐味を存分に味わえた斜面だった。

 しかし、一段すべり下りると、重たい新雪がスキーを回してくれない。足の疲労もあり、荷物に引かれ、また、バラバラのスキーとなってしまう。ボーゲンすらできない、それでも広い斜面を降りきったところで、天気はいいのでゆっくり昼食タイムをとった。疲労感がきつく、パンが喉を通らない、水だけがおいしい。そこからはしばらく滑ると最初に登った滝上部の壁だった。登りでも斜度が気になったが、やはりそこが最大斜度だったと思う。雪が悪く小回りができない、やばいと思いながら大きく斜下降を使い、やっとメンバーが待ってくれたルンゼの底に着いた。そこからは傾斜も緩くなり、楽しいスキーもちょっとできものの足が続かない。瀬戸川に降り立ったのは、午後230分を過ぎていた。

 いよいよ蓮華温泉までの登り返しだ、滝見尾根を越え、兵馬平に滑り込み、登り返して小屋に戻ることになるが、今回は滝見尾根を登り、トラーバスし、最後に小屋上から滑りこむコースをとることになった。登りは長くはなかったものトラバースが長い、斜度の変化でクライミングサポートを動かす動作で足や腹筋がつりそうになる。夕方に向かい、表面が硬くクラストしはじまる、ようやく蓮華温泉が見えたと思ったら、眼下にある。クラストした急な斜面を滑走しなければならない。表面を割るとまた滑りにくい、最後はなだらかな林を抜けると蓮華温泉に着いた。午後5時少し前だった。11時間30分の行動となった。先に着いた水越ガイドがビールを買ってきてくれたので小屋前のベンチで乾杯をした。温泉に入り、夕食前にもビールに、お酒、夕食ではワイン2本も空けてしまった。終わってみれば楽しいロングツアーだった。

 3日目は、下山だ。午前7時、スキーで林道を少し下る(登りも)、しばらく進み、谷にむかって滑りこむ、やっぱり雪が悪い、硬いか、重たいか、それほど滑ることもなく、谷川を慎重にわたったところで、シールで登り返す。傾斜はあるわけではないが、結構長い、ヤッホー平に出て、昨日の雪倉岳をみると、「あんなところまでよく登ったな」と達成感がわいてきた。そこからもトラバースが長く、最後は尾根を急な登りで乗り越さなければ下れず、一苦労した。笹も出ていて、スキーをはずして、尾根の上に出た。

 やっと里がみえたが、まだまだ遠い、最初こそ広いバーンがあったが、あとはひたすらトラバースしながらの下り、長い、昨日の疲れ、荷物のためか、足がまったく続かない、緩やかなところや最後の林道でも休みながらでないと滑れず、水越さんやKさんにはご迷惑をかけてしまった。

 木地屋の車道に出たのは12時少し前だった。最後まで長いツアーだったが、終わってみれば充実の3日間だった。白馬のみみずく温泉まで送ってもらい、白馬三山をみながら露天風呂を楽しみ、駅まで歩いて、駅前の「絵夢」で生ビール2杯と餃子を食べて、特急あずさに乗り、松本、名古屋と乗り換え、大阪に午後8時に帰ることができた。


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