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GS美神 リターン?
Report File.0080 「お嬢様危険注意報!! その9」
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『おおっと! これは凄い!びょ、秒殺。いきなり秒殺がでたーーーっ! やったのは女子高校生、美神令子ーーーーっ!!!』
『流石あるね。あの娘はあの唐巣神父の秘蔵っ子って呼ばれているあるね。いや〜それにしてもまぶいあるね〜』
『まぶい…ってあんた、そんなの今時使いませんよ』
おっさんくさいというか実際おっさんなのだが平気で死語を使う厄珍を横目で見た。
『うるさいあるね。それにだからこそある。普段使われていないから新鮮に聞こえるあるよ』
はんば、漫才の如くアナウンスが流れた。
「私にかかればこんなもんよね」
令子はふうと息を吐き、髪を掻き揚げた後、赤い髪をなびかせて試合場からでた。鮮やかな手並みで対戦相手を下した令子に惜しみない拍手が送られた。
だが、そんな拍手も彼女の耳には届いていない。なぜなら、もはや彼女にとりGS試験等、過程に過ぎず、GSとしての活動計画を立てるのに夢中であり、対戦相手など資格取得する為のライバルでもなんでもなく単なる障害として排除しているだけなのだ。
颯爽と去るそんな彼女に観客達はクール・ビューティーとしびれる者が続出した。観客達は別に業界関係者だけでなく一般の人間も見に来ている者が居るのだ。それらの人々は霊能に興味ある者が大半だったりするが、GSを雇う者たちもいるのだ。新人で腕のいい者であれば相場よりも安く雇えるという理由でのことだ。
そんな訳で令子の強運はGSを始める前から営業活動をすることなくファン=顧客を獲得していくのだった。
「わぁ、令子ちゃん。すごいわ〜。私もがんばろ〜」
初めてのお友達である令子の身を案じていたがそれも杞憂に終わり、それどころか凄さを見せ付けられて、冥子も令子に釣り合う位にならなくちゃと気合を入れた。
『続きまして、六道冥子選手!! 知る人ぞ知る、あの、強力な式神を要する六道家の正統後継者ですっ!!』
『おおっ! これまたキュートな娘あるな』
厄珍は冥子が試合場の結界のひとつに入ってくると席から身を乗り出して叫んだ。
『確かにその意見については賛成ですが、またキュートって』
『いいあるのよっ! そんな細かい事気にしないあるね。だからあんた、彼女に振られるのことよ!』
ちくちくうるさい奴と報復とばかりに行った。
『なあっ!? な、何であんたがそんな事知ってんだっ!?』
大口を開けて解説者Aは愕然とした。
『およっ? 本当だったあるかぁ? 口から出まかせだたあるが、藪突付いたら、蛇出たあるね』
出まかせといいつつも厄珍はそれなりに易学などを学んでおり、一般人であれば、ある程度は読む事が出来た。
『ううっ…小夜子ぅ…』
厄珍の言葉をきっかけに解説者Aは突っ伏して泣いた。
『…まあ、男のことなんかほおっておくあるね。対戦相手はこりゃまた珍しい出身ね。レスラー出身あるか。体重だけで言ったら3,4倍は違うあるな』
厄珍の言葉に会場は騒然となった。まさに美女と野獣の組み合わせである。どうみても冥子では相手になりそうでない。観客達にはゴリラVSリスの試合に見えた。だが忘れてはならない、これは格闘技ではなく霊能者同士の戦いなのだ。
「ふふん、お嬢ちゃん。怪我しないうちにギブアップしておくのが懸命だぜ」
未だ解説者が復帰しないために名前を呼んでもらえないカイゼルヒゲを生やした大男が冥子を威嚇するように筋肉をムキムキにポージングした。
「どうしてぇ〜?」
相手の言っている事がさっぱり分からないと冥子は首をかしげた。普段の冥子であれば即座に反応してやばい状態になったであろうが、今は違う。外見からはわからないが始めてのお友達が出来たという事で心がハイテンションになっていたのだ。
「…どうやら、分かっちゃいねえようだな。まあ、痛い目に遭うのも仕方ねえやな。これも人生の勉強料と思って諦めてくれや」
相手との距離は5メートル、一息で詰めれる距離だ。いかにもとろそうな娘相手に霊力を注ぎ込んだ拳一発で十分だと余裕であった。
「?? 勉強料??」
冥子は本気で目の前の男が何を言っているのか理解できなかった。彼女にとり恐怖を感じなければ、目の前の相手が自分を上回る体を持って威圧してこようとも気にもしなかった。普段から式神という異形にして力ある存在がそばにいるのだから、人とは感性がずれているのだ。
「では、試合開始!!」
やる気満々な男といまだぽけ〜っとしている冥子の状況など考慮されず審判より試合の始まりが合図された。それと同時に体のバネを総動員して冥子に襲い掛かった。
「はあっ! 死っ」
だが、その勢いは前進2メートルで終わった。
ゴトンッ!!
『『ええっ!?』』
観客は騒然となった。何故なら冥子の対戦相手が石像となって転がっていたからだ。
「ありがとう〜、アジラちゃん」
冥子の言葉に冥子の足元にいつの間にか出ていた蜥蜴に似ている姿をしたアジラが見上げ、カメレオンのような目をぐるんとさせた。
冥子は怯えることさえなければ、それなりに適切な判断で式神を使役できるのであった。
『ど、どうやら冥子選手が式神を使って相手選手を倒したようですっ!!』
『流石、六道家が誇る式神あるな。凄いあるよ。にしても、もう立ち直ったあるか。意外に根性あるあるね』
ちっ! 見誤ったかと厄珍は舌打ちした。それは小さく解説者Aには届かなかった。
『放っておいてください。それにしてもまたも秒殺です。今年はどうなっているんでしょうかっ!』
『今度のあの娘はぴちぴちの女子大生あるな』
手にしているまる秘チェックと表紙に書かれた資料を眺めながら厄珍は言うが解説者Aはそんな資料あったかと手元にある資料を見たがなかった。
『…それより石化された選手は大丈夫でしょうか?』
解説者Aは厄珍の相手をしていては埒があかないとスルーして話を進めた。
『まあ、石化は呪いの一種あるから、適切な処置を行えば大丈夫あるよ。解除の時には是非ともうちを利用して欲しいある』
頬杖をつきながら厄珍は答えた。
『とにかく石化は解除できるってことですから一安心ですね』
『そうあるね。だけど、あの男も運いいあるね』
『はぁ? どういうことです』
『見るあるよろし。石化したカイゼルヒゲが倒れた拍子に折れているあるよ。あれが腕とかだたら大変だったある』
結界内の中央に倒れている石像のそばを指差した。
『うぉ!? ほ、本当だぁー!』
『まあ、そんな時でも私のところで取りあつかてる特殊接着剤、ひびなら特殊石膏を使て、解呪したらあら不思議、無傷のまま元通りあるね。そんな事で私の店、色んな道具を取り揃えているあるよ。みな信頼と実績持った道具ある。魔法だろうが除霊だろうがそういう類の道具なんかは豊富にそろえているあるよー! 信頼のブランドある厄珍堂、厄珍堂をよろしくあるねーっ! 電』
調子に乗った厄珍が解説席を立ち体いっぱい使ったパフォーマンスで叫んだ。
『結局それかーーっ!!』
ドゴンッ!!
「何をやっているのかしら〜?」
呆然としていた審判の勝利宣言を聞きながら、凄い音のする方を見た。
そこには再び当初のように厄珍が頭から血を流して突っ伏していたが、令子がそういうものだと言っていたのを思い出して気にしない事にした。
「な、何よ、あれ…。反則じゃない…冥子の式神はかなり強力だとは思っていたけど。あれで他にも5,6体の式神がいるのよね。確か…。」
このままじゃ勝ち目はないと令子は爪を噛み、対策を思案するのであった。
*
”へぇ、六道さんとはそんな出会いだったんですか”
「まあね、GS試験一回戦は楽勝で勝てて、GS資格も楽に取ってトップ合格よ!って軽く考えていたわ。でも冥子の一回戦での対戦相手を式神の力で石化させたのを見てそんな考え吹っ飛んじゃった」
”すごいですねぇ”
「凄いのはそれだけじゃなかったわ。冥子について先生に聞いた時にはもっと愕然としたわね」
”どうしてですか?”
「よく考えてみなさいよ。石化させるなんて特殊能力を持った式神が一体でも厄介だっていうのにそれと同等と思われる能力を有する式神がその他に5体ぐらいあるって知っていて、さて対策どうしようか悩んでよ? 先生に相談したら実際はその倍の12体いるって言われたらねぇ」
己の才能に疑問を持ったのはその時が初めてだったと令子は回想した。
”確かに凄かったですもんねぇ。よく横島さん無事でした”
「まあ、横島クンも大概丈夫なのは確かに驚きといえば驚きなんだけど。言っとくけど横島クンが受けたのはほんの能力の一端なんだからね、あれって」
”それはそうでしょうけど、何だか想像がつきません”
「嫌な想定だけど、もしこの仕事が失敗したら、冥子の恐ろしさが分かるわ」
”えっ!? 式神じゃなくですか?”
「そうよ」
”横島さん、大丈夫かな…”
「セクハラしてなきゃ大丈夫よ」
”全然、大丈夫に聞こえないのは気のせいでしょうか?”
「さあ? 冥子もあれでスタイルは結構いいから、どうかしら? 隙も大きいし」
令子はまあ、無理よねと今までの横島の行動原理を考えて、結論付けていた。
”ああ、横島さん、無事でいてください”
「こんな場合、普通は冥子のほうを気にするはずなんだけど」
まあ、無理もないかと納得した。
”ところで美神さん”
「ん? 何、おキヌちゃん」
”GS試験って確か使用できる道具一個だったんじゃぁ?”
「ああ、私達のときまではそんな制限はなかったのよ。だいたいGS試験て除霊できる力があるかって判定するためにやっていて、その中には道具をうまく活用できるかって言うのもあったのよ」
”じゃあ、何で制限がついたんでしょう?”
「さあ? 私にはよく分からないわ…」
”?”
何気ない質問をキヌはしたのだが、その割りに令子の言葉に歯に物が詰まったような感じがしたのであった。
(つづく)
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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。