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GS美神 リターン?
Report File.0072 「お嬢様危険注意報!! その1」
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「はあ〜平和だな〜」
”本当ですね…”
久々にのんびりとできると横島とキヌはバイト先の美神除霊事務所で寛いでいた。
”そういえば二無さんは?”
折角の寛ぎの時間とソファに座る横島の前にあるテーブルにケーキとお茶を用意した。
「ああ、二無さんならたまには本体を動かさなければと航海にでたけど」
ありがとうと横島はキヌに遠慮なく用意されたケーキをぱくついた。
”じゃあ、帰ってくれば海鮮尽くしですね”
二無のお土産は一人暮らしをしていた頃の今までの横島にとり、全くといっていいほど手の届かない高級品ばかりであったのでとてもありがたかった。何より人間ではないとはいえ女の子の手料理を毎日食べれるのである。これ以上に贅沢は無い。
「いやあ、まさかこのバイトについてからこんなに食事情改善されるとは思わなかったよな…]
だが、人間の欲とは際限ないもの。満たされれば次はと欲は大きくなるもので横島の場合は性への煩悩へ傾く。当初はこれで幽霊でなければ今頃、爛れた生活が堪能できたのにと思っていたのだ。
「あっちのほうも…」
ぼそっと呟いた声はキヌには幸いにも届かなかった。そう、それとても現在では解決されていたのだ。
最初の頃は煩悩面では以前よりも厳しくなっていた。なんと言ってもキヌという幽霊といっても美少女が46時中そばに居るのだから、中々解消できる機会がない。これは人よりもかなり多い横島にとり拷問にも等しい状態であったが、人はなれるもので月日が経つにつれ生活の中のパターンを見出し発散できる時間を見つけ出していた。
それだけではなく最近は新たな要因でもっと発散できるようになってもいる。
食の改善、通常とは違う煩悩の解消と本来あるべき形とはかけ離れてきており、それに比例するかのように体力面、霊能面もぐんぐんと伸びていた。
”おかわり入りますか?”
「へっ? ああ、もらう」
多少、妄想に突入していた横島はキヌの声に我に返った。
「ただいまっ! と、あら? お茶してる。おキヌちゃん、悪いけど私にもお願い」
”はい”
妙に機嫌よく返ってきた令子にキヌもまた笑顔で返し、台所へ戻っていった。
(こんだけいい気分ということは美味しい仕事を手に入れたか、金額交渉がうまくまとまったかだな)
仕事なら億クラス、金額交渉なら倍はもぎ取ったって所だよなと横島は予想した。何はともあれこれだけ機嫌がよければ何事にもそれなりに鷹揚になってくれるか安心したのであった。
概ね今日は平和でありそうだと思ったのだが、実はこれが嵐の前の静けさであったのだ。
*
部屋は厚いカーテンにより光は遮断され、薄暗い闇が支配していた。そんな中、静かに寝息だけが聞こえてくる。それは規則正しくそれ以外には音は無い一個の完成された世界であった。だが、その完成された世界も崩れる時が来た。
ガチャ
両開きの扉を開き、メイドが入ってきた。彼女は暗い部屋の中を無頓着に目的である窓へと歩み寄っていく。その動作は例え殆ど物が見えない部屋の中にあって何が何処にあるか把握しているようで躊躇が無かった。
メイドは目的の場所、窓にまでくるとそれを覆っていたカーテンを開いた。
そのとたん光が部屋を支配し照らし闇は払拭される。続いて窓を開けると爽やかな風と共に遮断していた外界の音が入り込んできた。メイドは窓から見える空に今日もいい天気ねと感想をもらし、この部屋の主人を起こすべく声をかけた。
「お嬢様、そろそろおきてください。お時間ですよ」
「…ん・・・んん…?」
メイドに声をかけられ、ふかふかのベッドに眠っていた女性は目を薄っすらと開き、声のする方に顔を向けた。
「ふみさん?」
「はい、朝ですよ。お嬢様。起きてください。今日は大事なお仕事があるとお伺いしておりますけど?」
「ああ、そうだった〜。ん…ふわ〜〜〜」
目をこすり、ぐっとのびをしながらお嬢様といわれた女性は起き上がった。寝ている時には歳相応の落ち着いた女性に見えるが目を覚ましてからは女性というよりは、未だ少女といえるのではというぐらい幼げな雰囲気を醸し出していた。そんな彼女の名を六道冥子という。
「嬉しそうですわね」
「ん〜。だって、今日はお友達の令子ちゃんと一緒にお仕事ですもの〜」
今日はどの服にしようかなと冥子は衣装を見ながら返事をした。
「ああ、成る程。それはよかったですわね」
メイドにはその様子がこれからデートをしにいくといった様子に見えて仕方が無かったのだが冥子の返事に合点が行き頷いた。彼女とであればお嬢様の態度もうなずける。冥子には特殊な事情もあって一人前?のGSになるまでは対等な友達がいなかったのだ。冥子はおっとりとしているが結構寂しがりやであることも知っていたメイドにとって友達ができたのと聞いた時には、ほっと胸を撫で下ろしたものだった。
「ええ、そうなの〜。みんなも喜んでいるわ〜」
着替えを取り出している冥子の影から尻尾のようなものが半場飛び出してきた。
「お嬢様、ここで式神さん達を出してはいけませんよ? また奥様に叱られますわ」
「…むう」
「膨れても仕方ありませんわ。さあ、早く着替えて下さい。朝食もそろそろ出来上がってくる頃合です」
そう言ってメイドはのんびり屋の冥子を急かすのであった。
*
「なあ、おまえ。今日、冥子は大丈夫なのかね?」
和服で寛ぐ恰幅のいい中年の男が同じく和服で見をつつんだ妻に心配そうにたずねた。
「あらあら〜。あなた、そんなに冥子が心配?」
そんな心配そうな夫の言葉を吹き飛ばすような明るい口調で妻は聞き返した。
「心配も何もだな、最近の冥子の仕事の様子を考えれば自然とそう言う考えになってしまうよ」
そう父親としても最近のGSとしての冥子の働きぶりは頭を抱えたくなるものであった。
「大丈夫ですよ。今回は、令子ちゃんもついていてくれるんですもの。多分…」
オホホ、上品に袖で口元を隠して笑った。ただし最後の呟きは小声であり、その内容からは大丈夫といったのは自信があってというよりは願いの類であった。
「だが、これまでのようでは信用は(お金で)取り戻せても、信頼は取り戻せないのだよ」
GSとしての観点で行くならば収支を考えれば大幅な赤字であり、そこらのGSであればとっくに破産申請でもして廃業していただろう。六道という名ばかりでなく実をも持ちえる家であったからこそ未だGSとして活動できるのだ。冥子の父にとり、事業活動とは冥子の作り出す赤字を補填する為に行っているようなものだった。
「その辺は何とか考えていますよ〜。これから何とかしていけばいいんだから〜」
冥子の母にしても現在の状況は芳しくないことを理解していた。このまま失敗続きだといくらGS協会に多大な影響力を誇る六道でも何らかの措置をとられることになる。それにこの件に関してGS協会だけでなく政治的にも色々と力を使わなければ問題となってくるのである。
「さすがに私でも限界がある。今以上になればフォローは厳しくなる…」
冥子の父は言葉の端々に疲れを見せていた。お金は年とかなるが政治力に関しては昔に比べて少しずつ影響力が落ちてきている。戦前であれば何ら問題は無かったが今の政治体系ではなかなかおぼつかないのだ。娘の代までは何とかなるとは思っているが次の代はかなり厳しくなるだろう。余程の人物を婿として迎え入れなければ六道の本道の維持は難しい。
「だから、フォローできる人材、つまり助手をつけようかな〜なんて考えているの。令子ちゃんとこやエミちゃんとこ、それに唐巣君の所にもいるんですもの」
名案でしょ?とにっこりと笑い問い掛けた。
「…しかし、あてはあるのか?」
冥子の父は対応策としてはそれが一番だろうなと思いはするものの、今までうまく行ったためしがない。当初は六道配下に霊能科をもつ六道女学院の生徒から募集したがうまくいかず、次に卒業生から…それでもうまくいかずOBである現役GSにも頼んだのであるが冥子の暴走を止めることは出来なかった。
GSという特殊な職業である為、優秀な助手の確保…とくに冥子の暴走を止める等のフォローをするとなると今までの経緯を鑑みて相当優秀…ぶっちゃけGSとしてもかなりの技量を必要とするのだ。なんせ一流と呼ばれる美神令子と共同で行ってやっと成功率がフィフティ・フィフティ(50%)なのだ。
はっきりいってそんな人材が簡単に見つかるはずが無いのである。
「そこが〜問題よね〜」
オホホ…とごまかすように冥子の母は笑った。その言葉に冥子の父はがくっと首をうなだれた。ようするに暫くは現状が続き自分は馬車馬のように働かなければならないということであった。
「ははは…」
趣味のゴルフよ…さらば…やらなくなってから何月…いや何年経ったんだろうな…などと心の中で涙を流したのであった。
(いっそのこと、とっとと冥子の婿を決めて引退生活に入るのが一番いいのじゃないだろうか?)
などという人生に疲れました宣言を出しそうな冥子の父であった。
*
「ふふ、今日は令子ちゃんと一緒にお仕事。楽しみだわ〜」
カリッ
自分の両親の苦労を知ってかしらずか娘たる冥子はいたって気軽な朝食を楽しんでいたのであった。
(つづく)
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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。
(後書き)
てへっ。随分、間があいておきながら話の内容は前振りだけだったり…。次回は多分、早いに違いない。
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