◆「善勝寺折々記」
★はじめに
 当コーナーは善勝寺 有常(京将棋連合 代表)の個人的な文章であり、京将棋連合の公式見解ではありませんので、その点をあらかじめ宣言しておきます。朝日新聞で大岡 信さんが寄稿されている「折々のうた」からヒントを得て「善勝寺折々記」と名付けてみました。  
★第10話 将棋トライアスロン
  トライアスロンと言えば、水泳、自転車、マラソンの3種目を戦う競技ですが、これにヒントを得て「将棋トライアスロン」なるものを考えました。昨今では囲碁、将棋、チェスなどは頭脳スポーツとしてスポーツに分類するのが常識化しそうな情勢にありますので、将棋トライアスロンなる命名も矛盾ではないと思います。まず、最初に思い付いたのが次の将棋トライアスロンです。

 将棋、京将棋、中将棋

 実際の競技方法としては色々あるでしょうが、例えばスイス方式を採用し、各将棋を2局ずつ計6局指し、総合成績を競うなど考えられます。スキーのノルディック複合競技(ジャンプと距離)の勝者は「キングオブスキー」として称賛されるそうですが、この将棋トライアスロンの勝者はまさに「キングオブショウギ」というに値しそうですね。また日本風に言えば、「将棋の鉄人」ということになるのでしょうか。
 ただし実際にこの将棋トライアスロンを行おうとした場合にはかなりの困難も予想されます。何といっても中将棋は駒の種類、枚数が多く、動きも複雑で獅子の「居食い」と「じっと」とか特殊なルールもありますので相当勉強しないと実戦はできないと思われるからです。となると、参加者も極端にしぼられることになりそうです。おそらく中将棋関係者しか参加できないでしょう。ならば、トライアスロンでなく中将棋だけでいいと言われてしまいそうです。

 そこで次に考えたのが次の将棋トライアスロンです。

 将棋、京将棋、小京将棋

 この際一番難しい中将棋をはずし、替わりに小京将棋を加えたものです。京将棋連合の我田引水という声も聞こえてきそうですが、京将棋や小京将棋は将棋が指せる人でしたら即対応可能なので、参加者も増やせると思います。

 また、次の将棋トライアスロンも考えられます。

 将棋、左京将棋、右京将棋

 盤を9x9に限定してこの将棋トライアスロンを行うのが開催側としては一番準備がやさしいでしょう。つまり小京将棋の左京将棋と右京将棋を採用する訳です。おそらく対局に要する手数もこの組み合わせが上記3種類の将棋トライアスロンの中で一番短くなるという利点もあります。

 今回は将棋トライアスロンについて構想を述べましたが、さて読者の方々はどのような将棋トライアスロン構想を考えられるでしょうか?いいアイデアがあれば是非教えて下さい。(記載2002年5月1日)    
★第9話 京将棋のコンピュータ大会
  現在、コンピュータ将棋ソフトを戦わせる大会として、コンピュータ将棋協会(略称CSA)主催の「世界コンピュータ将棋選手権」が有名です。今年も第12回目が5月に千葉県で開催される予定で、参加ソフト数も年々増え(第11回は55チーム)、盛り上がりを見せています。

 現在の京将棋ソフトは10x10の京将棋に加えて9x9の小京将棋と現行将棋も対局可能ですので、このCSAの大会に参加する事は可能です。将棋ソフト名は「将棋列伝」をそのまま使用できるでしょう。大会の応募要項にある「プログラムは自作のものでなければならない」・・・その他の参加資格は一応クリアーしており、通信機能(DSUB9ピンのシリアルケーブルによる)も最新の開発版では追加済みで、通信確認用の「CSA将棋」や著名ソフトの「柿木将棋」との通信対局も試験済みとなっております。

 そこで「いざ出陣!」と兵を挙げ、初陣を果たしたい訳ですが、とりあえず今年は見送りとなってしまいました。その理由ですが、

 (1)肝心の棋力がいまいち(^^;)。竹槍で織田信長の鉄砲隊に挑む感あり?
 (2)開催地の千葉県の会場までは、関西在住者にとってかなりの遠出。
 (3)しかも今年は1次予選が5月3日とGWの最中でさらに難渋苦渋化。
 (4)所有パソコンは4年前の旧型(Pen2)で実質の持時間で大きなハンデに(^^;)。
 (5)参加費1万円、交通費、ホテル費など合計すると経済負担が大。

 ・・・なんですね。しかし、来年(または再来年)には参加すべきと考えています。というのは、京将棋連合では、京将棋のコンピュータ大会の開催を将来的目標のひとつにしているので、将棋の大会に参加してその運営の実際を体験しておくことは重要と考えるからです。また大会に参加すればスイス式1次予選で少なくとも7チームと対戦でき、将棋プログラマの方々と多少の面識はできるでしょうから、京将棋の大会への参加を依頼しやすくなるのではという読みもあります。さらに、京将棋連合チームとして登録参加すれば京将棋の宣伝・知名度UPにも少しは効果があるのではという虫のいいことも考えています。まさに勝つことよりも、参加することに意義ありという訳です。

 もちろん、京将棋のコンピュータ大会よりも人間の大会を優先すべきという声が強いことも確かです。京将棋連合では「第1期京将棋名人戦」の開催を将来目標に掲げている以上そこに至るまでのいくつもの難関をクリアーしていく努力が必要です。一言で言えばやはり「普及のための努力」ですか。地道に活動を続けて、「京将棋のコンピュータ大会」も「第1期京将棋名人戦」もなんとか5〜10年以内には実現させたいと考えております。読者の方々もご支援宜しくお願い致します。(記載2002年3月25日)
★第8話 京将棋の対局開始作法について

   「茶の湯とはただ湯を沸かして茶をたてて
             のむばかりなる事と知るべし」 (利休百首より)

 この千利休(1522〜1591、茶人)の言葉の様に、京将棋の対局作法についてあれこれ決まり事を作る必要はないと思います。ただ、京将棋でひとつ困る事は、左京将棋か右京将棋か事前には決まっていないので、将棋の様にまず駒を並べてしまうと、場合によっては並べ換えを余儀なくされるという点です。この並べ換えはかなりうっとうしいので京将棋連合では次ぎのような手順を推奨しています。言葉を交わす必要が無い点は囲碁の「にぎり」などと同様です。

 (1)振り駒で第1優先権を決める。
 (2)第1優先権者は駒の中から京を一枚探し出す。
 (3)左京・右京を指定する場合はその京を自陣の所定の位置に打ち据える。
 (4)先番を選択するなら、その京を相手に向かって差し出すか、敵陣にそっと置く。
 (5)京の位置が決まったら、その他の駒を並べる。
 (6)全部の駒を並べ終わったら、一礼して対局を開始する。

 この手順ですと、うっとうしい駒の並べ替えは避けられます。(記載2002年2月28日)
★第7話 京は宇宙流?
 前回は「京は大ゲイマ」という話題でしたが、囲碁には京の駒動きそのものという面白い形があることを発見しました。それは図1.のような形です。
               
      十●十●十          十十十十十
      十十十十十          十●十●十
      十十十十十          十十十十十       
      十十●十十          十十●十十

 図1.京に似た囲碁の配石      図2.トックリ

 図1.の配石は隅の一間トビから模様を拡張する場合などに打たれるようです。実戦例としては、「武宮の三連星好局集」(土屋書店 武宮正樹著)P86.にありました。黒石が武宮九段、白が小林光一十段(当時)ですが、いかにも武宮宇宙流にふさわしい外勢の手と言えます。東京タワーなどの通称もあるようですが、囲碁の場合は90度、180度回転した形も存在するので、タワーが寝てしまったり、ひっくり返ってしまうのもまずいということで、京将棋の京にちなんで「京鳳」(または「京翔」)などと名付けてみるのはどうでしょうか。
            
  |十十十十十十十十十十十十十十十十十|(盤面の上半分を示す)
  |十○●十十十十十十十十十十十十十十|京形に構えて大模様を目指す。
  |十○●十十十十十●十十十●十●十十|この後、白が黒模様に打込み、
  |十十●十十十十十十十十十十十十十十|激しい攻防となる。
  |○○十十十十十十十十十十十十十○十| 
  |十十十●十十十十十十十十十●十十十| 結果は黒の2目半勝ち。
  |十●十十●十十十十十十十十十十十十|
  |十十○十十十十十十十十十十十十十十|
  |十十○●十十十十十十十十十十○十十|
  |十十○●十十十十十十十十十十十十十|

 図3. 京の形の実戦譜(先番 武宮九段−小林十段 第40期本因坊戦リーグ)
 
 ところで、さらに実戦例はないかと探していたら、京の形が盤上4ヶ所も現れる面白い棋譜がありました。第53期本因坊挑戦手合第6局です。先番は挑戦者の王立誠九段、後手は趙治勲本因坊で本因坊10連覇を決めた歴史的一局です。出典は囲碁名局年鑑1999(平凡社 P108)ですが、本局は本因坊の名局とされ、「読者の選んだ名局」でも第1位に選ばれています。もっとも王九段側からみれば154手の中押し負けで盤面白10目勝ちの大差(作れば)ですから、悪夢の一局だったかもしれません。1年間でプロ全体の対局数は相当数でしょうが、その中でもベストの名局に京の形が4ヶ所も出現しているという事は極めて印象的です。
            
     |十十十十十十十十十十十十十十十十十|
     |十十○十十十十十十十十十○十十十十|
     |十十十十十十十十○十○十十十●十十|
     |十十○十十十十十十十十●十十十十十|
     |十十十十十十十十十十十十十十●十十|
     |十十十十十十十十十十十十十十十十十|
     |十十十十十十十十十十十十十十十十十|
     |十○十十十十十十十十十十十十十十十|
     |十十十十十十十十十十十十十十十十十|
     |十十十十十十十○十十十十十十十●十|
     |十十十十十十十十十十○十十十十十十|
     |十十十十十十十●十十十十十十十十十|
     |十十○十十十十十十十十十十十十十十|
     |十十十十十○十十十十十十十十●十十|
     |十十○十十十●十●十十十十十十十十|
     |十十十十●十十十十十十十十十●十十|
     |十十十十十十十十十十十十十十十十十|

 図4.京の形が盤上4ヶ所出現した実戦譜(1〜34一部省略 先番 王立誠九段−趙治勲本因坊)

 図1.より一路間隔の狭い図2.の桂馬の形はトックリ型と呼ばれ、石の連携はしっかりしているが、しばしば働きの少ない形とされます。ただし、かならずしも非難されないという場合もあるようです(「基本定石辞典−下巻」日本棋院 石田芳夫著 P311)。京将棋と囲碁は全く別のゲームですが、以外な所で関連性があることに驚きました。また、京の駒の動作の伸びやかさと囲碁の武宮宇宙流の伸びやかさには共通点があるような気がしておりますが、京将棋の本質と武宮宇宙流の本質に一脈通じるものがあるのかもしれません。(記載2002年1月31日)
★第6話 「京は大ゲイマ」になるほど納得
 過日、ある知人を京将棋に誘い込もうとして京や銅の駒の動かし方を説明しておりました。すると当人曰く「つまり京は大ゲイマという事やね。」私は一瞬「?」となりましたが、次の瞬間その意味が判りました。つまりその知人はアマ囲碁高段者であり、将棋もやるが、どちらかと言えば囲碁に軸足を置いている人物なのでした。ケイマ(小ゲイマ)や大ゲイマはしまり、かかり、ひらき等ありますが、囲碁人にとっては基本中の基本であり、その意味で囲碁人が京将棋の京という駒の動きをみれば大ゲイマと解釈するのはとても自然な事に思えました。今後囲碁ファンに京将棋を説明する時には「京は大ゲイマ」と言えばすぐ理解してもらえる様な気がしておりますが、この事を知らしめてくれたくだんの知人には感謝したいと思います。また、将棋専門の将棋ファンにとっては京の動きは驚きでしょうが、囲碁ファンにとっては見慣れた大ゲイマと同じという事で、京を容易に自家薬籠中の物とできる素地があることから、京将棋は囲碁ファンに浸透し易いのではと期待を抱かせてくれました。

    ■□■            十●十十             十●十十
    □□□            十十十十             十十十十
    □□□            十十十十             十十十十
    □京□            十十●十             十十○十 

 図1.京の駒動き   図2.囲碁の大ゲイマ(しまり)   図3.大ゲイマ(かかり)

 参考までに日本棋院発行の用語小辞典(1997年版)にも「大ゲイマ」は「ケイマ(小ゲイマ)より一路進んだ形。」として解説されており、正式な囲碁用語と言っても良いと思います。
 ところで、囲碁のケイマは元々は将棋の桂馬に由来する用語と考えられますが、囲碁の大ゲイマに相当する将棋の駒は今まで(「京」の出現以前に)無かったのでしょうか?この点は興味深い所なので別コーナーの「京将棋縁起帖」の方で話題にしたいと思います。

    ■■■
    □銅□
    □■□

 図4.銅の駒動き(■の位置へ移動できる)

 さて、くだんの知人は銅について、「銅はTの字か。」とも言っておりました。なるほど、この憶え方もなかなか使えそうです。子供にも説明できますね。「お相撲さんのまわし」や「ギャルのTバック水着」よりもシンプルで良さそうです。(記載2002年1月12日)
★第5話 将棋、京将棋、中将棋、チェスを比較してみると
 京将棋がどの様な性格の将棋なのかは、他と比較すると判りやすいのではと思い、表1に整理してみました。主な5項目についてまとめています。

表1.各種将棋の比較
項目 将棋 京将棋 中将棋 チェス
盤サイズ 9x9 10x10 12x12 8x8
駒数 40 46 92 32
持ち駒制
歩歩間
左右型

 まず盤サイズでは、将棋のみ奇数盤で京将棋、中将棋、チェスは偶数盤です。
 次に駒数ですが、中将棋が92枚とやはり段突の多さとなっています。次に多いのが京将棋の46枚で丁度中将棋の1/2となっているのが偶然とはいえ面白い点でしょうか。当ページのリンク集にある日本中将棋連盟さんのページで中将棋の対局風景を写した映像を見たことがありますが、将棋の駒箱が百人一首のかるたの箱並に大きいことに驚いた記憶があります。
 次に歩歩間の項目は、初期配置での歩と歩の間合いを意味しますが、将棋のみ3間で他は全て4間です。さらに左右の型を有するのは、やはり京将棋のみで、この点が京将棋の最大の特徴となっています。
 中将棋は日本では一時期衰退が顕著となった訳ですが、欧米では案外に人気があり、愛好者の数が多いと言われています。その理由がこの表を見ればよく判る気がします。つまり、中将棋とチェスは、共に駒の取り捨て制であり、歩歩間も共に4間、さらに両者偶数盤である点など共通点が多いのです。欧米のチェスに慣れた人達は中将棋を大型(超大型?)のチェスという感覚で楽しんでいるのではと思います。
 京将棋について言うと、この表の中ではやはり将棋に最も近い将棋と言えます。共に持ち駒制で駒数も近いからです。しかし、偶数盤である点、歩歩間の間合いが4間である点などは、中将棋、チェスと共通しており、注目できる点です。以上の観点を総合すると京将棋は将棋と中将棋・チェスの中間的な将棋、どちらとも重なりを持つ将棋と言えるかもしれません。しかし、左右型を有するのは京将棋の独創的な特徴ですから、表の4つの将棋は結局、将棋、京将棋、中将棋・チェスと3つのグループに分類して理解するのが妥当と思われます。(記載2001年12月31日)
★第4話 しゃれたリンク集に京将棋のページ発見、しかし喜んでばかりはいられない
 過日、ボードゲームの各種サイトを集めたリンク集を見つけました。各サイトのタイトルロゴもグラフィック表示してあり、しゃれた体裁に仕上がっています。その画像を眺めているだけでも楽しめます。例えばチェスのサイトのロゴには馬頭(騎士?)の図柄が何故か多いようです。当方の京将棋のページも採録されており、好印象のリンク集でした。それは、次の様な項目付きの構成となっています。

 ・将棋(全般) 20サイト:日本将棋連盟他。
 ・中将棋 7サイト:日本中将棋連盟他。
 ・四人将棋 2サイト:四人将棋オフィシャルホームページ他。
 ・変則将棋/各国の将棋他 8サイト:世界シャンチーリーグ他。京将棋はこの項に分類されている!
 ・囲碁 15サイト:日本棋院他。
 ・オセロ 19サイト:日本オセロ連盟他。

 これを見るとまず、中将棋関連サイトが多い事に驚きます。ものの本によっては中将棋は廃れたという記述がありますが、この関連サイトの多さを考えると今後復活の可能性も大いにあり得るでしょう。元々日本の将棋は大小(または中小)の二本立ての時代が長く続いたという経緯があり、将棋の複線化は京将棋連合にとっても歓迎すべき流れですので、中将棋関係者のご努力には期待したいと思っております。
 オセロ関連のサイトが囲碁関連のサイトより多い点も注目に値します。将棋と違い、漢字が不要なので世界的な普及には有利と思われ、実際海外サイトも多くにぎやかです。
 さて次に、京将棋のページが採録されているのはありがたいことですが、項目は変則将棋/各国の将棋他の中に分類されています。中将棋や四人将棋は独立した項目となっており、私がこのリンク集を再編集できるのでしたら京将棋も是非1項目として独立させたい所です。変則将棋には「変な将棋」または「奇妙な将棋」という好ましくない語感があり、使用に際しては少し注意を要する用語と思われます。つまり、ある将棋を指して変則将棋と言う場合、若干ながら軽蔑的ニュアンスが含まれてしまうからです。ある将棋はある将棋でその将棋の正則将棋です。変則将棋はやめて各種将棋としておくのが無難でしょう。また、京将棋連合では別の用語として「次世代型将棋」という用語を準備しておりますので、「京将棋は次世代型将棋である」という分類・表現をお願いしたいと思います。中将棋を変則将棋と言う人はいないのと同様に、京将棋に対する認識を改善していくのが京将棋連合にとっての今後の大きな課題であると言えます。なお、このおしゃれなリンク集のアドレスは当ページのリンク集に採録致しましたので訪ねてみるのも一興です。(記載2001年12月22日)
★第3話 しし座流星群とその後のとんでもない流星群?
 近年の中で個人的に印象深かった天体ショーとして、百武彗星、ヘール・ボップ彗星、シューメーカー・レビ彗星などがあります。前の2つは肉眼や双眼鏡で鮮やかに見えましたが、シューメーカー・レビ彗星の時は、自前の小型望遠鏡(口径50mmの屈折型赤道儀)を木星に向けてみたものの、見えるのは木星とその惑星のみで、彗星が木星に激突する場面やその後の巨大な痕跡は全く判りませんでした。「木星は遠し」です。もし月に突っ込んでいたらとんでもない大スペクタクルとなったでしょう。さらに、地球に向かってきたらと考えるのは恐ろし過ぎます。そんな映画はありましたが。
 今年の11月19日未明のしし座流星群は「日本が当たり年」と喧伝されていたので一応期待はしていましたが、当日の東の空は曇りがちでもうだめかと思いながらも、西面のバルコニーに出てみました。すると西側の空は晴れており、星もよく見えていました。これはひょっとして?と思ったとき、一瞬光線が走りました。見事な流星です。その後も頻繁に流星は続くので、あわてて家を出て近所の公園のやや小高い場所へ行き、そこで仰向けに寝て天上を眺める事にしました。その後の2時間弱は未体験の天体ショーに興奮・陶酔できました。中でも一番印象深かった流星は、天頂付近で見たもので、直線的な光線の途中でV字型に2分裂して結局Y字型の光線軌跡を残して行ったものです。多分大気圏突入の衝撃で不安定になり、2分割したのでしょう。加速器の泡箱の中に残される素粒子の対生成の様にも見え、まさにコズミックダンスと言ったところです。翌日のニュースでは流星群より数が多い流星雨だったと言っていましたが、全く同感です。かつてはジャコビニ流星群で痛い目に会い、ユーミンの「・・・光る尾を引く流星群♪♪・・・」という歌をほろ苦く聴いた訳ですが、次はその歌を聴いてもほろ甘い気分になるかもしれません(^^)。

 ここで話題は変わりますが、この見事な流星群の後には、とんでもない流星群?に襲われることになってしまいました。それは今だにちらほらと続いていますが、コンピュータウイルスという食えない代物です。詰京将棋の解答メールの数よりウイルスメールの数の方が多いという状況にはがっくりさせられます。
 ウイルスの種類としては"W32.Badtrans.B@mm"が多いようです。最初はタイトルがRe:だけなので怪しいと感じましたが、ファイル名にMP3が含まれていたので、もしかしてMPEG3規格で圧縮された音声ファイル?と思い込み、これが罠なのでした。Internet ExplorerにキャッシュしているHTMLファイルからメールアドレスを探して自動的に送出するようです。当方の様なマイナーなサイトに何故これほど多数のウイルスが送られてくるのか不思議ですが、それだけ世に蔓延しているという事なのでしょう。今後はアンチウイルスソフトだけでは万全と言えない可能性もあり、メインコンピュータは完全にスタンドアローンとし、サブコンピュータでインターネットやeメールを行う様にする事も考えています。読者の皆様も安心して2002年を迎えるためには、是非ウイルスチェックとウイルス対策を早めにお考え下さい。(記載2001年12月15日)
★第2話 京将棋と異性体
 今年のノーベル化学賞を受賞した野依教授の研究は「異性体の不斉合成」に関するものです。一方、京将棋の最大の特徴は2つある初期配置(左京将棋と右京将棋)から後手番方が一方を指定する権利を有するというルールです。この左京配置と右京配置はひょっとしてくだんの異性体ではないのかと思い付いたので少し考えてみることにしました。
 それにはまず異性体についての基礎を知る必要があるので、有機化学の本を探し出しました。そこには、「分子式は同じでも、性質あるいは物質の種類までが別のものになっている有機化合物を互いに異性体とよぶ」(「新しい有機化学」崎川範行著、講談社ブルーバックス)とありました。例として、ガソリンの成分であるオクタン(C8H18)には、正オクタンとイソオクタンがあるが、このうち正オクタンの方はガソリンにしても全く役に立たないそうです。さらに、三次元的な構造の化合物では、立体異性体が存在する場合があります。例としてアドレナリン(副腎から分泌されるホルモン)には、偏光面を左に廻す左旋性の(-)アドレナリンと、逆に偏光面を右に廻す右旋性の(+)アドレナリンがあり、両者は互いに鏡像の関係ですが、図形的には重なりません。そして生理的な活性度が両者で15倍も違うというから驚きです。生物は(-)アドレナリンのみを利用しているそうです。この役に立つ一方の異性体のみを効率良く合成するのが野依教授の業績ということで、ようやくその素晴らしさが判りかけてきました(^^)。また、左旋性と右旋性など左と右が出てくる所など京将棋の左京と右京に繋がる点であり、大変興味深くなってきました。
 ここで、いよいよ「左京配置と右京配置は異性体?」の答えに近づきました。それには、まず将棋の駒を原子と考え、それらが結合して自陣全体で1つの有機化合物になっていると仮定します。すると、左京配置と右京配置では、当然駒の種類と数は同一ですから、同じ分子式を有する事になります。一方、京の配置が左京配置と右京配置では異なっているので、互いに異なった性質の将棋になっています。例えば、飛車をいきなりどこまで振れるかというと、左京将棋では右四間までしか振れませんが、右京将棋では右5間まで振れます。また、左京将棋で初手8七歩に後手側がうっかり3四歩と角道を開けると2二角成ると角を素抜かれ3手で将棋は終わりますが(^^)、右京将棋ではしっかり銀のひも付きなので3手で将棋が終わる事はありません。つまり角換わりの将棋となり、その後も続きます。

 結論は既にお判りのように、「左京将棋と右京将棋は互いに異性体である。」という事に落ち着きました。次に気になる点は、先のオクタンやアドレナリンの例の様に一方の異性体は大変有用だが、もう片方は全く役立たず(場合によっては毒性も!)という事はよくあるそうなので、京将棋の場合はどうなのかという点です。左京か右京か片方の将棋は大変面白いが、もう片方は何故かつまらないということになれば、まさにオクタンやアドレナリンと同じ様に異性体のParadoxにはまってしまう事になります。しかし、私個人の予想では、左京将棋も右京将棋も同じ位に面白い将棋であると予想しております。その理由は簡単です。つまり生物が異性体の片方だけと反応するのはハード的理由からです。(-)と(+)の両方のアドレナリンと反応するハードより、(-)のアドレナリンとだけ反応するハードの方が単純です。生物はその単純な方を好んだと言えます。一方、京将棋の場合に左京・右京に対応するのは人間の脳ですから、完全にソフト的な対応であり、両方の異性体に反応が可能な訳です。ただ、各個人の趣向の違いにより、左京を好む左京派と右京を好む右京派が出現する事は予想されます。それは、現在の将棋で居飛車党と振り飛車党が存在するのと似た状況かもしれません。さらに細分化して左居飛、右居飛、左振り、右振りと4派現れる事になるのも面白いです。仮にそうなっても、現在の羽生5冠や谷川九段のように、どのような戦型でもオールマイティに強いという人も出てくるでしょう。
 話を最初に戻しますが、野依教授のノーベル賞受賞のニュースをテレビで見たときには、まさかその研究内容と京将棋に繋がりがあるとは夢にも思いませんでした。それが、異性体という概念を通じて奥深い所で関連がある事が判り驚くと同時に少し感動した次第です。(記載2001年12月8日)
★第1話 自作のソフトに負かされた
 過日、京将棋ソフトの調整作業中に、対局を始め、最初は電脳棋士をバカにしてわざと駒損したりして遊んでおりました。すると、こちらが京を2枚持つ展開になり、たまたま自玉の前も開けていたので、これは入玉勝ちのパターンか?と入玉を目指すことにしました。当ページの読者でしたら既にご存じの様に、京将棋では京を2枚持つ側だけ入玉勝ちを宣言できる権利を有します。そのため、劣勢の時に京が2枚揃えば入玉勝ちの逆転を狙える訳です。(・・・とは言っても、劣勢の場合は大抵入玉前に詰まされてしまいますが。)
 さて、敵陣3段目がもう目の前という局面で突然自玉の頭を押さえつけられました。なんと自陣1段目の敵馬が遠くまできいていたのです。ショック!全体を見ず入玉の通路だけ見ていたのでした。あわれ自玉は自陣まで押し戻され、それでも電脳棋士相手ならここから逆転も簡単とたかをくくっていました。ところがその後5手詰めの詰め将棋であっさり電脳君に詰まされてしまいました。
 これが初めて自作の京将棋ソフトに負かされた状況です。詰め将棋の機能確認のためわざと負ける場合がありますが、今回はそれではなく、逆転勝ちを目指して本気で指していたのでショックも大きいのでした。この自作ソフトに負かされる心境はソフト作家にしか味わえない妙なものです。あるいは自分の弟子に負かされた師匠の気分に近いかもしれません。師匠の面目はつぶれますが、弟子の成長は素直に喜べるので複雑な気分を味わうといった状況でしょうか。
 なお私を負かしたこのソフトは現在公開中のversion1.02ではなく、version2.00として公開予定で現在改良中のものです。(記載2001年11月30日)     
(C)2001-2002 Aritsune Zenshowji
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