| 「スタートレック」は、30年以上に渡って、アメリカを始め、世界中でテレビ放送されているSFドラマです。 物語は23〜24世紀の銀河系を舞台として、恒星間国家の興亡や、航宙艦とその乗組員達が未知への冒険や様々なドラマを展開しています。ただ、あまり日本では知名度が高くなく、名前は聞いたことがあっても耳の尖ったスポックしか知らない、という人も多いと思います。スタートレックの魅力はたくさんあります。徹底したリアリズムによる 22〜24世紀の未来描写、個性豊かなキャラクターの人間模様、SFであることを忘れない高度な特殊効果、現代でも抱える問題に挑むクルーの苦悩、長いシリーズに裏打ちれた精密な設定、ちりばめられたユーモア等輝きに満ちた未来の宇宙探検の素晴らしさが随所に表現され、見る者に感動を与えます。
スタートレックシリーズは、これまで類を見ないほどの長期間におよぶTVや映画の人気シリーズというだけでなく、アメリカ社会にも大きな影響を与えている。たとえば、ワシントンにあるスミソニアン博物館では、あのライト兄弟やリンドバーグの飛行機と並んで、『TOS』で活躍した USS-エンタープライズ号の11フィートモデルが展示されている。 また、NASAの最初のスペースシャトルは「エンタープライズ」という名前だった。これは、全米のスタートレックファンからの熱い要望によるものだというエピソードも残っている。未来へ、宇宙へと広がる夢のそばには、いつもスタートレックがあるのだ スタートレックは、単なる冒険SFアクションではない。 スタートレックが世界中の何百万人もの人々の心を引きつけた最大の魅力は、壮大なSFドラマでありながら、個々のキャラクター設定などがしっかり練られた、人間ドラマでもあったからだ。特殊効果や斬新なデザインの宇宙船、そして異性人たちも確かに見どころではあるが、スタートレックいちばんの人気の秘密は、やはり魅力的な登場人物たちであり、それらが織りなす人間模様(もちろんその中には異星人もいるが)ではないだろうか。 しかも、未来を予感させるものが時代設定やテクノロジーだけでなく、キャラクターたち心の動きにも現われていることだ。つまり、キャラクターたちは感情的にも現代の私たちより進化しているのだ。よってこのドラマには、登場するキャラクターたちに自分たちの子孫たちの人間像を重ね合わせて見る楽しさもある。 スタートレックには、リアルな未来が潜んでいる。 スタートレック以前の宇宙SFものには子供向けの作品しかなかった。そこにスタートレックは、大人の視点と論理的、理知的な設定とストーリー展開を持ち込んだ。時代設定や物語で使われるテクノロジーについて、多くの科学者や技術者に意見を求め科学的に検証し、未来において極力実現の可能性のあるテクノロジーを採用している。たとえば、物語の中で頻繁に登場する、人間や物を瞬時に移動させる転送装置。これは、物質を一時的にエネルギーに変換し、違う場所に送ったのち、再び独自の型と構造に再変換するもので、科学界で長期にわたって議論されていた概念を具現化したものだ。 スタートレックには、人類へのメッセージがある。 スタートレックは、決して昔懐かしのTVシリーズではない。どのシリーズにも、いつも貧困や差別などの今も昔も変わらない社会的なテーマが見え隠れしている。そして、スタートレックは人類の進むべき未来像を描こうとしている。 それは、戦争や弾圧の愚かさに心底気づき、それまでの愚かさを捨て去ったときの姿かも知れない。いつでも、ひとを思いやる気持ちを忘れず、常に真実を追い求め、知識を深めることに全力を注ぎなさいと、それが人類が進化するための唯一の道だ、とスタートレックは語りかけているのではないだろうか。
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