卓興志さんからの手紙

 卓本海は42年ころ,保甲のかしらを務めていた隣村の陳寨の陳世昌が言ったことは,『皇軍』の指令どおりに東北の炭鉱に労工として誰かを派遣しなければならないが,卓本海の家の暮らしぶりはとりわけ苦しいから,この役目を卓本海に割りふろう,というものでした。そして,炭鉱で石炭を掘ればいいものが食べられるとか,金も稼げるとか,家の者たちも優遇されるなどと,嘘を並べたてたのです。卓本海と近くの村の数人は,大ぜいの人たちとともに東北まで行き,その後日本に強制連行されてしまいました。だまされたと知ってから彼らは後悔しましたが,そのときにはもうすでに手遅れでした。
                (04年5月22日の手紙)