Open Cluster 散開星団

散開星団のカタログ ディープスカイのカタログはメシエがスタートであり、次はNGCとかなっています。これらカタログは星雲も星団もごちゃまぜだが、時代が下ると特化したカタログが出されるようになってきました。.....といって散開星団のカタログの歴史を書こうと考えたが、調べると最初は1915年のMelotteのようだ。

Ted Kurkowski の「Deep Sky Object Catalogs Commonly Referenced by Astronomaers」に紹介されているカタログリストから散開星団のものを発表年順に並べると次のようになる。

 

1915 Melotte    Philibert J Melotte A Catalogue of star clusters shown on the Flanklin-Adams chart plates

1930 Harvard    H.Shapley Star Clusters

1930 Trumpler   Robert J.Trumpler

1931 Collinder   Per Collinder

1931 Tombaugh   Clyde Tombaugh

1939 Hogg     Helen Sawyer Hogg Catalogues of Variable Stars in Globular Clusters

1949 Biurakan   V.Ambartsumian

1949 King     Ivan R. King Some New Galactic Clusters

 1948〜1958年にパロマースカイサーベイは撮影が行われた。

1957 Haffner    H.Haffner New Galactic Star Clusters in the Southern Milky Way

1958 Barakhatova  K.A.Barkhatova 北アメリカ星雲付近の星団

1958 Berkeley   カリフォルニア大学 Catalogue of Star Clusters and Associations

1958 Lynga     Gosta Lynga Catalogue of Star Clusters and Associations

1959 Pismis    Paris Pismis Nuevos Cumulos Estelares en Regiones del Sur

1959 Stephenson  C.B.Stephenson

1956 Stock     jurgen Stock

1966 Czernik    M.Czernik New Open Star Clusters

1966 Dolidze

1966 Do-Dz

1970 Ruprecht    J.Ruprecht G.Alter Catalogue of Star Clusters & Associations

1971 Basel     バーゼル天文研究所 A Catalogue of Galactic Star Clusters Observed in Three Colors

1975 Bochum     ルール大学ボーフム Catalog of Star Clusters

1975 vdBHa      S.Van den Bergh etc.A Uniform Survey of Clusters in the Southern Milky Way

1975 Westerlund

1979 Waterloo     M.P.Fitzgerald etc

 

この順に調べたことを下に書いていきます。


★★★ Melotte の散開星団カタログ

 Melotteカタログは、1915年にP.J.Melotteがフランクリンアダムス星図(アマチュアが撮影した写真星図)から見出した245個の星団をリストしている。<A Catalogue of Star Clusters shown on the Franklin-Adams Chart Plates by P.J. Melotte - 1915, Royal Astronomical Society >

 フィリベール・ジャック・メロッテ(P.J.Melotte)は英国の天文学者だ。両親はベルギーから移住してきた。グリニジ天文台で活動し、28才のとき木星の衛星パシファエを発見。1915年(35才)にメロッテカタログを作った。

 メロッテの星団は245個リストされているが、多くはM、NGC、ICと重複している。Melだけであるのは次の12個。北半球の良い星団はメシエやハーシェルに取られてしまっているが、南天のものは良い。

Mel 15 Cas 明るい4星の他に30ほどあり星雲も重なる
Mel 20 Per αPer 星周辺の星団
Mel 25 Tau ヒアデス星団
Mel 31 Aur まだ見てない
Mel 66 Pup 暗い星が多い大型の星団
Mel 71 Pup 中型の星団で星が多くすばらしい
Mel 72 Mon 暗い星が多く良い
Mel101 Car 南の昴IC2602に隣接する星数多い星団
Mel105 Car 小さいが球状星団のように密集している
Mel111 Com かみのけ座の星団
Mel186 Oph ポニアトフスキーの牡牛の三角部分
Mel227 Oct ファインダーでも7,8個見えるまばらな星団

...AA245 May 2013


1930 Harvard    H.Shapley Star Clusters

★★★★★ Harvardの星団カタログ (星図にはH20などと表記される。)

 1930年にH.シャプレーが出した "Star Clusters"という本が元になっていて、もともと21個の星団がある。NGCやTrumplerと重複しているものを除いて10個がHarvardの名前で呼ばれるが、半分は南天でしか見えない。

Harvard 1 = Tr3    カシオペヤ   5cmファインダーでも見える。まばらな大きな星団。
Harvard 2 = Tr9    とも       小さく、メンバーは結構明るいが星数は少ない。
Harvard 3
Harvard 4 = NGC3330 ほ       まばらな星団で40pで20個ぐらい。
Harvard 5       みなみじゅうじ 中くらいの大きさの立派な星団。
Harvard 6       はえ      20pでは淡い光芒にそらし眼で何十も星が見える。
Harvard 7 = Tr20   みなみじゅうじ 暗い星が密集。大口径ですばらしい。
Harvard 8       はえ      40pで淡い星団。微光星の集まり。
Harvard 9       じょうぎ    ●まだはっきり見ていない
Harvard 10      じょうぎ    まばらで大きな星団。
Harvard 11 = NGC6167 じょうぎ    中ぐらいの大きさで2本の角のような星並びがあるカブト星団。
Harvard 12 = Tr24  さそり     まばらで大きな星団。星数は多い。
Harvard 13      さいだん    微光星の集まりでかなり大きいが暗い。
Harvard 14 = Tr25  さそり     暗い星が多く、NGC7789の小型版。
Harvard 15 = Tr26  へびつかい   中くらいの大きさでまばら。数十個。
Harvard 16      さそり     大きな星団で星数は30ほど。
Harvard 17 = Tr29  さそり     いろいろな明るさの星が多数集まる。
Harvard 18 = Tr30  さそり     星数多く良い。
Harvard 19 = Tr32  へび      星数多いが淡い星団。
Harvard 20      や       M71の近くにあり、10個ほどの星が細長く並ぶ星団。
Harvard 21      カシオペヤ   暗い星が多そうだが40pでは10個ほどしか見えない。

 ハーロー・シャプレーが1930年に出版した「Star Clusters」とは、 Star Clusters. Harvard Observatory Monographs, No. 2. McGraw-Hill Book Company, Inc., New York, London. のことで、インターネットで見ることができた。散開星団と球状星団についてかなり詳しく書かれた本で付録も含めて311ページまで。このうち付録Bとして228から233ページにかけて249個の星団がリストされ、それまでに知られていた多くのNGCとICの星団、6個のMelotteの星団(15,71,72,101,108,111)、プレアデスとヒアデスの他に21個の星団にはH1からH21と符号が付けられている。今日存在しないとされるH3は、1900年分点で8h43.3m-52°25'にある視直径7’星の数35個とリストされている。
 ハーロー・シャプレー(1885-1972)は、太陽が銀河系の中心から遠く離れていることを発見したり、宇宙の構造についてカーチスと論争を行ったことで知られる。ミズーリ州ナッシュヴィルの農家に生まれ、独学で高校に入学・卒業し、1907年にミズーリ大学コロンビア校に進学した。新聞記者になりたかったのだが、大学のジャーナリズムの講義が延期されていたので、仕方なく他のものを選んだ。講義リストの最初には考古学があったが、Archeologyは発音できなかったので2番目のAstronomyを受講したそうだ。
 ここを卒業後、プリンストン大学に移ってHR図で有名な天文学者ヘンリー・ノリス・ラッセルに学んだ。1918年にケフェウス座デルタ型変光星を観測して球状星団の距離を測定する方法を考え、数十個の球状星団の距離を測定して太陽は銀河系の中心からはずれている宇宙モデルを作った。
 シャプレーはアンドロメダ銀河のような渦巻き銀河は直径約30万光年の銀河系の中に含まれると考えていて、この宇宙観についてカーチスと1920年4月26日に論争を行ったことは近代の天文学史に出てくる。カーチスは銀河系の直径は2万光年と小さく見積もり、渦巻き銀河は銀河系の外にあると考えていた。今から考えると双方の宇宙観は現代のものと違うが、ハッブルがアンドロメダ銀河が銀河系の外にあることを突き止めたのは1924年であるから無理もない。この論争まではシャプレーはウイルソン山天文台にいたが、論争後にE.ピッカリングがシャプレーをハーバード大学に呼び寄せ、1921年から1952年まで30年あまりにわたってハーバード大学天文台の所長であった。彼は天文学と並行して、アリの研究も行った。

...AA247 Dec.2013


1930 Trumpler   Robert J.Trumpler

★Trumplerの散開星団カタログ 2011年5月15日にさそり座を観望したときにトランプラーの星団がいくつかあったので調べてみた。
 これは散開星団の研究者、Robert J. Trumplerが作ったカタログであると思っていた。34個の散開星団にTr20というようにトランプラーのカタログ番号が
付けられているからだ。トランプラーカタログを以前からずっと探していたのだが、ネットを探していて、彼が書いた有名な散開星団の論文、
「Preliminary results on the distances, dimensions and space distribution of open star clusters」というのを見つけた。pdfで36ページにも及ぶ
長い論文だが、その中で彼は第16表に334個の散開星団をリストしていた。その表の第1列にNGCやMelという番号のところにAn1からAn37とい
う見慣れない番号があった。説明には
「An to anonymous clusters not previosly listed or newly discovered by the writer」と書かれていて、その位置を確かめると、現在Trという符号が
ついている星団であった。これこそTrumpler星団のルーツだ。この論文は、トランプラーが多くの散開星団を調べ、その結果から遠くの星団ほど星間吸収
のために暗くなっていることをつきとめた有名なものだ。当時は銀河系の大きさについてカプタインは星の分布から直径5万光年、シャプレーは球状星団の
研究から直径25万光年と考え、大きく食い違っていた。トランプラーの研究によって双方のデータが修正され、銀河系の大きさは直径10万光年となったので
ある。

 

2000年分点の位置を知りたいので、Guideで調べてみた。Trumpler catalogue ●は2011年8月3日までに見たもの
No. α(2000.0)δ 星座 dia. 集中 形態 距離 見たか
 1  01h35.4m +61.3 Cas  4.5'  I  3p   2290  ●
 2  02h36.7m +55.9 Per 18    II  3p    680  ●
 3  03h11.2m +63.2 Cas 17    II  3p    690  ●
 4  06h04.1m +24.0 Gem  5.5  II  2p   2130  ●    =  IC2157 ←M35の西にある小さな星団で、既に見ている。
 5  06h36.7m +09.6 Mon  9   III  1r   2490  ●
 6  07h26.1m -24.3 CMa  5.5   I  2p   1870  ●
 7  07h27.3m -24.0 Pup  5.5  II  3p   2130  ●
 8 <09h50.8m -17.5>     9    II  1p   1300  ●      =  NGC2479
 9  07h55.1m -25.9 Pup  5    II  3p   2340  ●
10  08h47.8m -42.5 Vel 30    II  3p    350  ●
11  10h04.6m -61.5 Car  4    II  2p   2920  ●
12  10h05.6m -60.2 Car  4     I  2m   3440  ●
13  10h23.8m -60.1 Car  4    II  2m   3770  ●
14  10h42.9m -59.5 Car  4     I  3m   3440  ● イータカリーナ
15  10h43.9m -59.4 Car  3.5   I  3p   2940  ● イータカリーナ北端
16  10h44.9m -59.7 Car 10    IV  3m   3550  ● イータカリーナ中心付近   = Collinder 234
17  10h56.0m -59.2 Car  5.5   I  3p   1870  ●
18  11h11.1m -60.7 Car 12    IV  3m   2960  ●
19  11h14.2m -57.6 Car 13    IV  2m   2730  ●
20  12h38.9m -60.6 Cru 10   III  2r   2240  ●
21  13h31.4m -62.8 Cen  5     I  2m   1960  ●
22  14h30.8m -61.1 Cen  7   III  2p   2210  ●
23  15h59.9m -53.4 Nor  5   III  2p   3090  ●
24  16h56.5m -40.6 Sco 60    IV  3m    580  ●
25  17h24.4m -38.9 Sco  5     I  2p   2000  ●
26  17h28.2m -29.4 Oph  7.5  II  2p   1560  ●
27  17h35.3m -33.4 Sco  8     I  2p   1290  ● Guideで表示はされない
28  17h26.2m -32.4 Sco  7.5  II  2p   1560  ● 
29  17h41.5m -40.0 Sco 14    II  2p    830  ●
30  17h56.4m -35.4 Sco 15    IV  3m   2370  ●
31  17h59.2m -28.1 Sgr  4.5  II  2m   3360  ●
32  18h16.8m -13.3 Ser  5.5   I  2p   1870  ● M16のすぐ北
33  18h24.0m -19.7 Sgr  5.5   I  3p   1870  ●
34  18h39.7m -08.5 Sct 10    II  2p   1170  ●
35  18h42.6m - 4.1 Sct  5    II  2m   3020  ●
36  20h09.7m +41.1 Cyg  6   III  1r   3740  ● = IC1311<WEBDAによると、Tr36は、IC1311である。>
37  21h38.6m +57.4 Cep 60    IV  3r    730  ● = IC1396
  I. 集中が強い散開星団
 II. 集中が弱い散開星団
III. 集中がほとんど認められない散開星団で、メンバーはまばらに弱弱しくほとんど一様に散らばっている星団。
IV. あまり集中していなくて、周囲にだんだんと溶け込んでいて、フィールドがそこだけちょっと濃くなっているような星団。

1. 構成する星のほとんどは同じような明るさである。(NGC7789)
2. 中間
3. 星の明るさは明るい星から暗い星まで幅広く、明るい星は少しである。(Pleiades).

p: メンバーは50個以下の貧弱な星団
m: 50-100個のややリッチな星団
r: 100個以上のリッチな星団

 

次に、2011年9月発行のAA236 に星団それぞれの印象を付けているので、転載する。
No. 星座 dia. 集中 形態 距離 見た印象
 1  Cas  4.5'  I  3p   2290  40cmでは明るい星がぎちっと密に集まって素敵だ。真中に4つの明るい星がまっすぐ並ぶ。
 2  Per 18    II  3p    680  5cmファインダーで数個見える。40cmでは中央にオレンジの星がきらりと光るまばらな星団。
 3  Cas 17    II  3p    690  5cmファインダーで見える。40cm65倍でかなりまばらな大きな星団で、フィールドスターがここだけ多い。
 4  Gem  5.5  II  2p   2130  =IC2157 M35の西にある小さな星団で、40cmでは20個ほど見える。
 5  Mon  9   III  1r   2490  暗い星が密集してすばらしい。明るい星の配列により星団の中央あたりが少し暗く見える。
 6  CMa  5.5   I  2p   1870  小さくメンバーは暗い。割合まばらで、130倍では28個数えた。
 7  Pup  5.5  II  3p   2130  Tr6と同じ視野に見える。ちいさな「や座」のように見える星のまわりに十個あまり。
 8  Pup  9    II  1p   1300  = NGC2479 12.5cm48倍でぬか星の群。明るさがそろった30個ほどの星がサンゴ礁のように丸く並ぶ。
 9  Pup  5    II  3p   2340  小さい星団で、まっすぐに並ぶ6個の星等でV型に見えるが、暗い星は少ないようだ。
10  Vel 30    II  3p    350  3.5cm双眼鏡で明るい星がばらばらとあり、20個ぐらいは見えている。
11  Car  4    II  2p   2920  大きくないが星数は多い。フィールドの密度を高めたよう。40cm130倍で30個ぐらい数えた。
12  Car  4     I  2m   3440  ものすごく小さくて密集している。130倍では真中に5個の星がまっすぐ並び全部で25個数えた。
13  Car  4    II  2m   3770  40cm130倍で20個ぐらい数えたが、小さくて星が多い星団。オタマジャクシのように細長く並んでいる。
14  Car  4     I  3m   3440  イータカリーナ星雲の中にあって、40cm130倍で乱れる暗黒星雲に30個ほどが透けて見えてすばらしい。
15  Car  3.5   I  3p   2940  イータカリーナ北端で、南北に7、8個の星が並び、北はずれの二重星の周囲に20個程度の星が見える。
16  Car 10    IV  3m   3550  イータカリーナ星から噴出する物質が作るこぶを取り囲み南のほうへばらばらと30個ほど集まっている。
17  Car  5.5   I  3p   1870  20個あまり暗い星が集まっているが、その南側にキノコの傘のように暗い星がいくつもある。
18  Car 12    IV  3m   2960  65倍の視野の1/4程度の大きな星団で30〜40個は星がある。南西端の2星へビューっとのびる列が目立つ。
19  Car 13    IV  2m   2730  目をそらすと微光星が多く、大きな星団が隠れているようだ。ちょっと南北に細長く、数えきれない。
20  Cru 10   III  2r   2240  7×50で何かあるように見え、40cm65倍ですばらしい。ぬか星の大集団。
21  Cen  5     I  2m   1960  40cmで明るい星が20個ぐらい半円形状に並んでいる
22  Cen  7   III  2p   2210  Trにしてはあまりぱっとしない。20個程度の星が動物の耳のような並びだ。
23  Nor  5   III  2p   3090  東西にやや楕円でぬか星が非常にたくさん集まる。フクロウ星雲のように星が少ない部分が2つ。
24  Sco 60    IV  3m    580  25cm38倍で大きな星団だ。このあたりものすごく星が多くて...エッフェル塔の脚だ。
25  Sco  5     I  2p   2000  40cm65倍で、暗い星がたくさんあって良い。カシオペヤの7789の小型版だ。
26  Oph  7.5  II  2p   1560  40cmで割合大きくてまばら。ちょうちょのようだ。明るい星から暗い星までそろい、約50個。
27  Sco  8     I  2p   1290  40cm65倍で割合まばら。中くらいの大きさの星団だ。十数個の星が見える。
28  Sco  7.5  II  2p   1560  40cm65倍で中くらいの大きさ。北西へ3つの明るい星が角のようにピンと飛び出している。全部で20〜30個。
29  Sco 14    II  2p    830  40cm65倍で三角を作る明るい星の南側に暗い星がたくさんぶらさがっていて、40個は数えられた。
30  Sco 15    IV  3m   2370  M7をさす矢印の形で暗い星がいっぱい絡み合う。南東へ連なる部分は微光星がたくさんあって興味深い。

 

 

 


1931 Collinder   Per Collinder

★★★★★ Collinder の散開星団カタログ

 2009P1彗星が、りゅう座からおおぐま座へと移動したが、Guide8でその位置を調べていると、こぐま座にCol.285散開星団があることを知った。Col.285は、ネットで調べると、なんとものすごく大きな星団で、北斗七星のいくつかもメンバーに入っている。76光年と太陽系に近い所にある星のグループで、固有運動が同じであるからグループだとされているのだが。まあ、400光年あまりにあるスバルでももっと近い所にあるとバラバラになって見えるのかなあと想像してみるが、散開星団とは何かという定義はおいといて、星を楽しんでみようと調べた。
 とりあえず、Col.285とはどんな星団なのか。SEDSのページには17個の星がリストされている。赤経10時から15時、星座ではこじし座からかんむり座にかけて大きな範囲に分布していて、1.8等から8.4等まで。ほとんどは北斗七星周辺にある。
北斗七星の写真で星団のメンバーを調べてみたが、これでは観望の対象とならないなあ。

 コリンダーの散開星団カタログで有名なところは、コートハンガーがCr399だ。399という番号だから多くの星団がリストされているはず。Cloudy Nightsに Thomas Watson がカタログを載せていて、471個の星団が載っている。NGC,IC,Melなどのカタログと重複しているのだが、Cr独自のものもある。
 コリンダー(Per Arne Collinder 1890-1974)は、スウェーデンの天文学者で、1931年に博士論文として書いた「On structured properties of open galactic clusters and their spatial distribution」で散開星団のカタログを発表している。彼はFranklin-Adams星図で星団を調べてカタログにしたのだ。
 John Franklin-Adams(1843-1912)は、英国のアマチュア。南アフリカのヨハネスブルグと英国のGodalmingで1903年から1912年にかけて撮影したものをもとに1913-14年に出版した。Flanklin-Adams cameraで知られる口径25cmの広視野の屈折望遠鏡を使い、1枚の視野は15x15度で、206枚の写真で全天をカバーして16等まで写っているらしい。
 コリンダーは、スウェーデンのまわりの海や北極圏の調査を行った。退職してからは、故国の天文学史の研究に専念し、1970年に"Swedish Astronomers 1477-1900"を出版した。彼がスウェーデン語で書いた本が英語に翻訳されたものが”A history of marine navigation "で、オーストラリアの図書館のデータに出ていたりする。
 Collinderのカタログは、ネット上ではCloudyNightsにThomas Watsonが調べたものを見ることができる。彼もコートハンガーがきっかけでこのカタログに興味を持っていたそうで、2005年にNancy Thomas がアマチュアの天文雑誌に書いた記事を読み、さらに調べてその471個の星団を調査してカタログにまとめたようだ。471個のうち、70個ほどはメシエやNGC番号などが付いてないもので、これら星団はCr***として呼ばれている。
 Collinderのが番号で呼ぶ有名な星団は、コートハンガー、Cr399で、ブロッキ(Brocchi)の星団とも呼ばれる。ブロッキはアメリカのアマチュアで、1920年代にAAVSOの測光の基準を作るためこの星団の星図を描いたので、このように呼ばれるようになったとか。

..AA238 Apr.2012


1931 Tombaugh   Clyde Tombaugh

★★★★★Tombaughの星団カタログ

 クライド・トンボー(1906-1997)は、1930年に冥王星を発見したことで知られる。トンボーはイリノイ州で生まれたが、後にカンザスに移った。あるときひょうを伴う嵐に襲われ農場の作物が台無しになったためにトンボーは大学に行けなくなった。彼は1926年からレンズや自作した反射鏡で望遠鏡を作り、木星や火星のスケッチをした。これが認められて1929年からローウェル天文台に雇われた。
 トンボーは5つの散開星団を見つけている。1941年5月にトンボーが書いたthree successive Small Lists of Open Clustersによると、ローウェル天文台の13インチ望遠鏡で北天を捜索した写真から発見した星団が報告されている。彼は5つの星団の特徴を丁寧に述べているが、3番目のものは淡いが17等の星が100個もあって興味深く、ドライヤーのカタログではIC166という星雲として登録されているとしている。5番目のものは17'もの直径があって80個もの星があるので、これまで発見されなかったのは驚きであるとしている。

Tombaugh 1 おおいぬ座 10.5等5’ 10〜20個の星が南北に細長く並ぶ小さな星団。
Tombaugh 2 おおいぬ座 12等 3’40pで彗星のような淡い光芒にそらし眼で数個の星。
Tombaugh 3 カシオペヤ座 = IC166 11.7等 8’25cmでは不明。40cmで10個程度細長く並ぶ。
Tombaugh 4 カシオペヤ座 3’  ●2008年12月に見たが、不確か。
Tombaugh 5 きりん座  17'    大きくて星数が多くぬか星のようでディープ。40cmでは良い。

トンボーの報告は次のアドレスで読める。
http://articles.adsabs.harvard.edu/cgi-bin/nph-iarticle_query?1941PASP...53..219T&amp;data_type=PDF_HIGH&amp;whole_paper=YES&amp;type=PRINTER&amp;filetype=.pdf

...AA247 Dec.2013


1939 Hogg     Helen Sawyer Hogg Catalogues of Variable Stars in Globular Clusters

★★★★★Hoggの星団カタログ
 1965年にオーストラリアのストロムロ山天文台のA.R.Hoggが発表した「New Southern Open Clusters」という論文で 同天文台の74インチ反射望遠鏡にKodakの103a-O乾板を付けて10分露出で撮影された一連の写真から22個の新しい星団が見つかったと報告している。

Hogg 1 6' ほ ●まだ
Hogg 2 5 ほ 見た
Hogg 3 4 ほ     見た
Hogg 4 4 ほ     見た
Hogg 5 3 りゅうこつ 見た
Hogg 6 3 りゅうこつ 見た
Hogg 7 4 りゅうこつ 見た
Hogg 8 3 りゅうこつ ●まだ
Hogg 9 1.5りゅうこつ 見た
Hogg10 3 りゅうこつ 見た
Hogg11 1.5りゅうこつ 見た
Hogg12 3 りゅうこつ 見た
Hogg13 3 りゅうこつ 見た
Hogg14 3 南十字   見た
Hogg15 2 南十字   見た
Hogg16 4 ケンタウルス見た
Hogg17 6 ケンタウルス見た
Hogg18 3 おおかみ  見た
Hogg19 4 じょうぎ 見た よい
Hogg20 4 さいだん  ●まだ
Hogg21 4 さいだん  見た
Hogg22 4 さいだん  ●まだ
Hogg23 3 南十字   見た

 Arthur Robert Hogg(1903-1966)は、メルボルンの大学を出た後、1929年まで化学関係の仕事をしていたが、この年にキャンベラにあるストロムロ山天文台の前進であった王立太陽観測所に加わったのだが、その日8月1日に観測所長W.G.Duffieldが死んだ。Hoggはこの観測所に37年間務めた。

...AA247 Dec.2013


1949 Biurakan   V.Ambartsumian

★★★ Biurakan の散開星団カタログ

 いっかくじゅう座にはBiという符号の散開星団がある。Biurakanの略で、アルメニアにある同名の天文台の名前である。調べると、1949年にV.アンバルツミャンが発表した論文がルーツのようだ。彼の功績リストなどでいくつかの論文が検索できるが、多くはロシア語であった。V.A. Ambartsumian, Stellar Associations // Astron. Zh., Vol. 26, No. 1, p. 3-9, 1949 (in Russian).などにある表をあたってみたが、現在Biurakanという名前の星団と一致するものは発見できなかった。

 ヴィクトル・アンバルツミャンはアルメニア(旧ソビエト)の天文学者。レニングラード大学で太陽の研究を行った後、プルコヴォ天文台で研究を続けた。 1946年に設立されたビュラカン天文台の初代所長となり1988年まで務めた。1961年から1964年まで国際天文学連合の会長を務めた。1983年の彼の80歳の誕生日を祝って、ノーベル賞受賞者のスブラマニアン・チャンドラセカールは次のように書いている。「今世紀の天文学者で、天文学に対する堅実さと情熱においてアンバルツミャン氏と比べられる者がいるとすれば、ヤン・オールト教授くらいである。しかし彼らはその他のあらゆる点においては異なっていたようだ。この二人の科学の巨人を比較・対比することは、21世紀の科学史家にとって重要なテーマになるだろう。彼は天文学者である。今世紀これほど天文学の進歩のために人生を捧げた天文学者はそう多くない。(Astrophysics, Vol 29, No.1, p 408, 1989)」........日本語
wikipedia
 1996年8月にビュラカンで亡くなり、ビュラカン天文台のそばで火葬された。
 ビュラカン天文台はアルメニアにある天文台で、1971年に完成した2.6m望遠鏡のほか、1mクラスのシュミットカメラ、53cmシュミットカメラ、50cmと40cm反射望遠鏡、石英プリズムの分光器付きの25cm望遠鏡、電波干渉計などがある。マルカリアンの鎖で知られるB.E.Markarianはここの研究者だった。

No. 視直径 星座 RA     Dec.
Bi 1  10'  Cyg. 20h07.7 +35.7
Bi 2  12   Cyg. 20h09.2 +35.5
Bi 3       Cep. 23h15.2 +60.4 = Markarian50
Bi 4       Cas. 02h29.6 +60.7 = Markarian6
Bi 5  12   Sgr. 18h15.3 -19.0 = Markarian38
Bi 6  なし
Bi 7   5   Mon. 06h57.6 +08.3
Bi 8   5   Mon. 06h58.1 +06.4
Bi 9   4   Mon. 06h57.8 +03.2
Bi10   3   Mon. 06h52.1 +02.9
Bi11   2   Mon. 06h51.4 +05.8
Bi12   4   Mon. 06h50.3 +05.7
Bi13   5   Mon. 07h00.4 -00.2

ついでに、Markarianという名前の散開星団は4つある。
Mrk  6     Cas. 02h29.6 +60.7
Mrk 18     Vel. 09h00.6 -49.0
Mrk 38 12' Sgr. 18h15.3 -19.0 = Bi 5
Mrk 50     Cep. 23h15.2 +60.4

...AA243 Feb 2013


1949年 Kingの散開星団     Ivan R. King Some New Galactic Clusters

 1949年にハーバード大学のIvan R. Kingがアメリカのマサチューセッツにあるオークリッジ天文台の16インチメトカーフ屈折望遠鏡で撮影した写真から発見した新しい星団などを報告した「Some New Galactic Clusters」Harvard Observatory Bulletin No.919 1949 に掲載されている星団。論文中で、物理的に星団に違いないもの12個を表1に、星団らしきもの9個を表2にリストして、合計21個の星団が報告されている。
 16インチメトカーフ屈折望遠鏡は、1909年にケンブリッジで使われ始め、1932年にオークリッジ天文台に移設され(1933年開所)、1992年まで使われた。極限等級18等で、南半球のBruce望遠鏡と対をなし、シャプレーと彼の助手によって50万個の新しい銀河を観測したことで知られる。Metcalf屈折写真儀は2つあって、この16インチは2枚玉、11インチは3枚玉だ。
 Kingの散開星団はほとんどがケフェウス座からぎょしゃ座あたりにあって、明るい星団は先にNGCやCollinderに取られてしまってるので地味である。King22はカタログによると星数は300個となっている。

King 1 Cas. 9' 暗く小さい。40pで10個ほど。
King 2 Cas. 5 暗く小さい。130倍で7個ほど。
King 3 Cas. 3 ●まだ見てない
King 4 Cas. 5 小さい。10個ほど。
King 5 Per. 7 小さな星団で40pで20個ほど。
King 6 Cam. 10 なかなか良い。30個数えた。
King 7 Per. 7 すごく小さく暗い。
King 8 Aur. 4 12,3個まばらで、見逃しそう。
King 9 Lac. 2.5 微光星がもやもや集まる。
King 10 Cep. 4 暗い星が10個あまり集まる。
King 11 Cep. 5 暗い星団で難物
King 12 Cas. 3 1個の星の周囲に暗い星10個ほど。
King 13 Cas. 7 比較的明るい6個の星と40個ほど。
King 14 Cas. 7 十数個。比較的見やすい。
King 15 Cas. 3 明るい星の周囲に暗い星10個ほど。
King 16 Cas. 5 数個の星が小さく細長く集まる。
King 17 Aur. 3 暗い星の集まり。10個ほど見える。
King 18 Cep. 5 比較的明るい十数個の星が集まる。
King 19 Cep. 6 十数個。NGC7510と並ぶ。
King 20 Cas. 5 明るい星が4つと暗い星が20程度。
King 21 Cas. 4 2つ明るい星の他に淡い星十数個。
King 22 Aur. 20 =Ber18 まばらでわかりにくい。
King 23 Mon. 5 ぬか星が10個ほど。
King 24 Pup. 3 =Cz32 小さな光芒
King 25 Aql. 5 まばら
King 26 Aql. 2 10個ほどの小さな星団。
King 27 Vul. 4 =Cz40 全部で10個ほど。

...AA247,248


 1948〜1958年にパロマースカイサーベイは撮影が行われた。


1957 Haffner    H.Haffner New Galactic Star Clusters in the Southern Milky Way

★★★★★ Haffner の散開星団

 ハフナーの散開星団は、おおいぬ座、とも座を中心に25個あって、1950年代後半に南アフリカのBoyden天文台の望遠鏡をよく使ったHans Haffner が「New Galactic Star Clusters in the Southern Milky Way」という報告に載せている星団のようだ。(24番はない)
 ハンス・ハフナーは、ネルトリンゲンで1912年11月8日生まれ。父はクリスチャン・ハフナー、母はゲルトルード。リンダウとレーゲンスブルグで学んだ後に1931年にミュンヘンの大学に進み、1933年からゲッティンゲンの大学に変わった。
 1934年から学位論文の研究としてプレセペ星団の写真測光に取り組んだ。彼は青色で撮影した乾板を使ったが、赤色で撮影した乾板を測光したオットー・ヘックマンと知り合った。彼らの測定は、数十年後に光電測光でなしえたほどの精度があった。
 第二次世界大戦が始まってハフナーは招集されたが、新しいヴェンデルシュタイン観測所で太陽を観測した。戦争が終わると、彼はゲッティンゲン大学の天文学研究所に戻り、他の星団の測光を始めた。
1953年、彼はハンブルク大学の天文学の教授に任命された。 そこに彼はオットー・ヘックマンに再会した。
 1955年から1959年にハフナーは南アフリカのブルームフォンテインにあるボイデン天文台で散開星団の観測を行った。加えて青と赤の波長で南の天の川の星図を作った。
 1962年に設立されたヨーロッパ南天天文台のdirectorになり、1967年までハンブルグーベルゲドルフ大学天文台の台長だった。
 1973年に脳腫瘍のために失った視力は手術で一時回復したが、再び目は見えなくなり、そして1977年に癌で亡くなった。
 ボイデン天文台は、南アフリカのブルームフォンテーンの郊外にある。もともとハーバード大学の南天ステーションはペルーにあったが、1927年に晴天率が良く、大気が安定しているこの地に移された。
            <http://schuelerlabor-wuerzburg.de/?p=Sternwarte/Hans Haffner>などによる

Haf. 1 CMa 5’=Tombaugh 1 南北に数個
Haf. 2 CMa 3 = Tombaugh 2 非常に淡い光芒
Haf. 3 Mon 5 光芒に10個の星
Haf. 4 CMa 5 明るい星は数個、全部で25.
Haf. 5 CMa 6 そこに微光星多い。2,30個。
Haf. 6 CMa 6 淡い星20ほど。割合大きい。
Haf. 7 CMa 3 小さいが星数多く幽玄。
Haf. 8 CMa 5 直線と丸い部分に分かれる。20ほど.
Haf. 9 CMa 4 暗い星20個ほど。
Haf.10 Pup 3 暗くもやっとしている、7mmで4個
Haf.11 Pup 5 淡い星10個あまり。
Haf.12 Pup 3.3 = NGC2425 光芒に数個見える。
Haf.13 Pup 58 まばら
Haf.14 Pup 10 暗い。
Haf.15 Pup 3 三角に並ぶ6,7個と光芒。
Haf.16 Pup 5 小さい光芒に星が10個ほど。
Haf.17 Pup 2 小さく淡い光芒でそらし眼で5個。
Haf.18 Pup 2 NGC2467の中、10個ほどの小星団。
Haf.19 Pup 2 NGC2467の中、3個見える。小さい。
Haf.20 Pup 3 小さく淡い光芒で10個ほど見える。
Haf.21 Pup 3 東西に細長い 5,6個。
Haf.22 Pup 6 小さくまばら
Haf.23 CMa 24 割合大きく、数十個、二重円構造
Haf.25 Pup 2 割合まばらで20個ほど。
Haf.26 Pup 12 暗い星十数個

...AA248


1958 Barakhatova  K.A.Barkhatova 北アメリカ星雲付近の星団

★★★★★ Barakhatovaの散開星団
 はくちょう座に2つある。北アメリカ星雲の北西2度にあるBarakhtova1は、1958年にソビエトのK.A.Barkhatovaが発表した「Clusters in the region of North America Nebula 1958 」で研究されている。pdfファイルがネットで見つかったが、論文で彼は北アメリカ星雲付近にあるこの星団とNGC6996とCr428を研究していずれも距離は500pc.だと書いている。40p65倍の観望では視野の半分ほどもある大きな星団で明るい星から暗い星までいろいろ集まっている。
 Barakhtova2は、はくちょう座π1のすぐ東にある。これは1958年に研究されたようであるが、StarClustersによるとその論文はアメリカ海軍天文台の図書館にコピーがあると書かれているが、それ以上は調べられなかった。40cmでは12,3個の星が集まっているのが見えたが、DeepskyPediaから調べるとFinlandのJaakko Salorantaが、8インチで見たスケッチを残していた。

WBDA,StarClusters,DeepskyPediaなどデータから総合すると次のような位置である。

Bark 1 20h53m42s +46 02.0 20' 北アメリカ星雲の北西2度
Bark 2 21h43m38s +51 14.3 5' はくちょう座π1のすぐ東

...AA249


1958 Berkeley   カリフォルニア大学 Catalogue of Star Clusters and Associations

★★★★★Berkley散開星団

ArchinalのStarClustersによると「possible Galactic open clusters Setteducati.A.F. and H.F.Weaver 1960」がもとと書かれている。
いずれにせよ、バークレイ校の名前だ。


 Berという符号が付いた散開星団は104個ある。1958年にカリフォルニア大学バークレイ校から出された「Catalogue of Star Clusters and Associations」がルーツのようで、Jiri Alterらがパロマースカイサーベイの写真から見つけたものだ。このタイトルでずいぶんネットを探したが、もとの論文は見つけられなかった。Berkleyのリストの中には古い星団が多いそうで、Ber17は100.6億〜100.8億才で銀河系で最も古いらしい。
 アリゾナのフェニックスにある East Valley Astronomy Club のホームページにはBerkeley散開星団の観測プログラムがあって88個の星団がリストされている。彼らのHPには双眼鏡によるメシエ天体プログラムからパロマー球状星団やクェーサー観測プログラムなどディープなものまである。

...AA254 2015


1958 Lynga     Gosta Lynga Catalogue of Star Clusters and Associations

 


1959 Pismis    Paris Pismis Nuevos Cumulos Estelares en Regiones del Sur

★Pismis散開星団のカタログ
  今年のワディーではPismisの散開星団を何個か見たが、このPismisって何なのか調べてみた。これはParis Pismis さんが1959年に「 Nuevos cumulos estelares EN regiones del sur <New stellar cumulos IN regions of the south.>」というタイトルの論文の中で紹介した散開星団のリストのようで、24個あります。
 Paris Pismis(1911-1999) は、トルコ出身でイスタンブールの学生でした。ハーバードに留学したときに第二次世界大戦がはじまり、トルコには帰らずにアメリカにとどまった。そしてメキシコから来ていた数学者 Felis Recillas と知りあって結婚し、メキシコへ移った。Pismisは、生涯で20カ国以上を訪問して6ヶ国語で天文学の普及に努めた。またメキシコで多くの天文学者を育てた。...Two Turkish Lady Astronomers, Dorrit Hoffleit, JAAVSO Volume33,2005 から。
PismisについてはGoogleしてもなかなか出てきません。詳しいのはスペイン語のページです。

..AA223 Apr.2008


1959 Stephenson  C.B.Stephenson

 


1956 Stock     jurgen Stock

 


1966 Czernik    M.Czernik New Open Star Clusters

 


1966 Dolidze

 


1966 Do-Dz

 


1970 Ruprecht    J.Ruprecht G.Alter Catalogue of Star Clusters & Associations

 

★★★★★ Ruprechtの散開星団


Alter G. Ruprecht J.,Vanysek V. 1958 Catalogue of Star Clusters and Associations
1965年にチェコスロバキアのJ.Ruprechtが発表した「Classification of open star clusters 」がルーツである。
Ru: Ruprecht J. Ruprecht, 1966. Classification of open star clusters. Bulletin of the Astronomical Institute of Czechoslovakia, Vol. 17, pp. 33-44 [ADS: 1966BAICz..17...33R]

ここらでRuprecht散開星団をまとめようか。


The Star Sweepers Ruprecht's Mission Galaxy Map の解説

 1963年の終わりごろ、チェコの天文学者J.Ruprechtは、アルメニアの火山、アラガツ山への坂道を上がり、ソビエトの主要なByurakan天文台に向かっていた。彼は、その天文台でB.E.Markarianが10年以上にわたって編纂したOBアソシエーションと星団をIAUから託されて調査しに来た。Ruprechtは、それまでにわかったOBアソシエーションのデータを集め、その決定版を作ろうとしていたが、ネットがない時代では尋ね歩かねばならなかった。
 OBアソシエーションは、巨大な分子雲からそろって生まれた若い高温星の集団だ。その位置を調べると銀河系の形を描く重要な手掛かりになることを最初に指摘したByurakan天文台のV.A.Amnartsumianは、そのときにIAUの会長であった。 Ruprechtは、1958年に出版された星団とアソシエーションのカタログとそれに続く増刊号の主な編集者であっただけでなく、星団研究の中心的な存在であったのでこの仕事にふさわしい人だった。
 彼は1964年8月26日にハンブルグで開かれたIAUの第12委員会で結果を発表した。星団部門の委員長を務めていたハンブルグ天文台のHans Haffnerは、Ruprechtの労をねぎらい、委員会はそのリストを出版することにした。Ruprechtが作ったデータは、次の世代の研究者に銀河系の地図を作るときに使われた。
 銀河系の地図作りはまだ始まったばかりだ。Ruprechtのように研究者から基礎になるデータを集めることは重要な役割だった。Ruprechtが集めた星団のデータは、Gosta Lynga と David Leisawitz によってコンピュータへ、そしてブラジルのWilton Dias によってインターネットへと引き継がれた。

 1970年代になると、多くの研究者がそのデータを使って銀河系の地図を描こうとした。東西の二人の女性、ミネソタ大学のRoberta Humphreys とロシア科学アカデミーのVeta Sergeevna Avedisovaもだ。2人は、銀河系の渦巻き腕にある高輝度星や星団の距離と特徴を調べる 経験を積んでいた。
 HumphreyのOBアソシエーションの高温星に関する論文は1978年に出され、そのデータベースの更新を続け、Cynthia Blahaがまとめている。
 Veta Avedisova が1984年に出した散光星雲の距離に関する論文は英語に訳されてないが、主な表はラテン語で出されている。彼女らは、赤外や電波でしか観測できないものまで含めて、3200個以上の星形成領域と6万6千ものサブ領域に関する膨大なデータを作り、最新版は2002年に出されている。

 続いて若い2人の女性天文学者が重要な研究をおこなった。
 ウクライナ国立科学アカデミーの中央天文台のNina Kharchenko のチームは、ヒッパルコス衛星で得られたTychoカタログを使って星団の解析をやりなおした。彼女らの仕事により、513個の星団と7つのアソシエーションの距離など基本的な数値がより正確に出され、100個以上の新しい星団も見つかった。
 マルセイユの天体物理学研究所のDelphine Russeil は、Yvon Georgelin らとHII領域の距離の推定を続けて行った。その結果には500の星形成領域の距離が示された。
 彼女らの研究は、明るい恒星を使って行われたが、銀河系のダスト雲の吸収がこれを阻んでいる。しかし、見えている範囲がより正確にわかったので、見えない部分の星形成領域を赤外線などで観測することに役立つだろう。



てがかりとなるもの

Alter G., Ruprecht J., Vanysek V., 1958, Catalogue of Star Clusters and Associations, Publishing House of the Czechoslovak Academy of Sciences, Prague.

Alter G., Hogg H. S., Ruprecht J., Vanysek V., 1959, BAC 10, No. 3, Appendix.



..AA249 2015

 


1971 Basel     バーゼル天文研究所 A Catalogue of Galactic Star Clusters Observed in Three Colors

★★★ Basel の散開星団カタログ

 Basel何番という散開星団は20個あります。はくちょう座に5個ある他は、ペルセウス座やほ座など、ほぼ全天にばらばら。20個のうち5個は別のカタログと重複しているので、Basel2をKing19 と呼んだりする。

 ネットで調べると、Basel1と2および3は1965年にGrubissich.C.が書いた論文、Basel4は1965年のSvolopoulosの論文、Basel5から20は1971年にBecker.WとFenkart.R.が書いた論文に現れたものだそうだ。いずれもBasel astronomical institute で、スイスのバーゼル大学の研究所の名前にちなんで付けられた名前。私は今までベイゼルと発音していたが、バーゼルと改めねば。星団の記号は「Bas」とか「Ba」とか書かれる。

 11番は2つあって、おおいぬ座のものがBa11A、オリオン座にあるものがBa11Bとなっている。これまでの眼視記録を見ると、15,18,19の3つがまだ見ていないが、2013WAで18と19を見た。あとは、はくちょう座にあるBa15だけだ。

Basel 1: Grubissich, C., 1965. Dreifarben-Photometrie von zwei offenen Sternhaufen in Richtung der Scutum-Wolke. Zeitschr. Astrophys., 60, 249-255.
Basel 2, 3: Grubissich, C., 1965. Dreifarben-Photometrie von zwei offenen Sternhaufen nahe NGC 7510. Zeitschr. Astrophys., 60, 256-263.
Basel 4: Svolopoulos, S.N., 1965. The two distant open clusters King 8 and An. Basel 4. Zeitschr. Astrophys., 61, 97-104.
Basel 5-20: Becker, W. and Fenkart, R., 1971. A catalogue of galactic star clusters observed in three colours. Astr. Astrophys. Suppl. 4, 241-252. Originally 12 open clusters. The numbering has been continued up to 20, cluster 11 is divided into 2 clusters A and B.

...AA245 May 2013


1975 Bochum     ルール大学ボーフム Catalog of Star Clusters

★★★ Bochumの星団カタログ

  wikipediaによると、ボーフムと表記されている。ドイツのBochumにあるルール大学の天文学研究所から1975年に出された星団のカタログだ(Astronomical Institute, Ruhr Univ., Bochum, Germany Catalog of Clusters 1975)。

 15個の星団がリストされているが、6個は赤緯-40度より南にあって北半球から困難だ。それらうのうち、とも座にあるBochum4はNGC2409と同じもので、これは私はまだ見ていない。 これまで見たもののうち、一番良かったのはBochum3で、小型ながら20個ほどの星が見えていた。

...AA245 May 2013


1975 vdBHa      S.Van den Bergh etc.A Uniform Survey of Clusters in the Southern Milky Way

vdB-Haは、Sidney van den Bergh と Gretchen L. Hagen が1975年に発表した南天の天の川沿いの散開星団サーベイの報告には262個がリストされている。この中でそれまでのカタログに掲載されていなかった63個の星団をvdB-Haで呼ぶ。サーベイは、セロ・トロロのCurtisシュミット望遠鏡で、銀経250°から360°、星座ではとも座からさそり座にかけて幅12°でサーベイ観測が行われた。たとえば、さそり座のエビ星雲付近では、vdB-Ha203と204はそれぞれCr316とNGC6242とカタログされていたが、vdB-Ha202と205が他のカタログにないのでvdB-Haで呼ばれます。


1975 Westerlund

 


1979 Waterloo     M.P.Fitzgerald etc

 


 

Sky&Telescopeに次のようなことが書かれていた。...2013年2月

★★★★★ へんな名前の星団を見ようという記事(Exploring Those Odd-Named Star Clusters)がSky&Telescope にあった。だいたい次のようなことが書かれている。

 100個あまりのメシエリストの後、ハーシェルが2500個も記録し、それらは1888年にNGCカタログにまとめられた。が、簡単な星図でもNGCでないStockとかTrとかCr等の星団が出てくる。これらは淡いだけでなく当時の狭い視野の望遠鏡には大きすぎたりまばらであったりしてNGCやICに載ってないのだ。多くは小口径向きであるし、光害があってもそれを見て、なぜカタログにしたか見てみよう。

 Jurgen Stock (1923-2004)は、ドイツ生まれだが1950年代初めにオハイオのクリーブランドにあるCase Western Reserve大学で25個の星団をカタログにした。彼はその25個を発見したのだが、多くは暗いか見栄えがしないので普通の星図には載ってないが、全部がアマチュアの望遠鏡で見える。Stockの星団は天の川に沿ってはくちょう座からきりん座あたりにあるが、だいたいは大きくてまばらだ。

 Trは、スイスの天文学者Robert Trumpler(1886-1956) のことだ。彼は星団の距離、大きさ、分布を研究したとき37個の星団をリストしたが、一番目立つ星団でさえ見逃されている。

 Mrkは、アメリカの天文学者Beniamin Markarian(1913-1985)だ。当時はソビエトであったがグルジアのByurakan天文台で星団を撮影し、50個をカタログを作った。彼は星団の安定性を研究していたので、リストされた星団のほとんどは暗く目立たないもので、眼視的に面白いものはない。

 Crは、スイスの天文学者Per Collinder (1890-1975)が1931年に作ったカタログで、大小、明暗いろいろな星団が含まれる。471個もあるが、多くはMやNGCと重複している。 ほかにも Bark,Berk,Biur,Do,Do-Dz,Haf,K,Ly,Mel,Ru,Ste,VdB,Westerなどいろいろあるよ。

 この記事を書いたDavid A. Rodger は、バンクーバーのH.R.MacMillanプラネタリウムの人で、天の川を見ていたときにコートハンガーCr399に出くわしたことで、Collinderのカタログがお気に入りらしい。2年前にアリゾナのThomasWatsonの記事を読むまでPerCollinderについてよく知らなかったそうだ。

 Watsonも星を見ていてCrカタログに興味を抱いたらしい。ネットや図書館で調べると、Collinderは博士論文で星団のことを研究した学生だったが、そのときはカタログには至らなかったようだ。

 Watsonは、2005年冬にNancy ThomasがAmaceur Astronomy に"Per Collinder and his Catalog"と書いていることを見つけた。Nancyは「アマチュアが天文家がチャレンジするリストとしてちょうどよい」と締めくくっていた。Watsonは自分でも挑戦してみようと、彼女からリストを入手し、整理したのだった。

 Watsonによると、Collinderは星団の分布を調べて銀河系の構造を知りたかったようだが、その結果彼のカタログ自体もその分布を反映しているという。

 赤経順に並んでいるCrカタログでは20番までのうち19個はカシオペヤ座にあるが、そのうちCr15以外はNGC,IC,Mと重複している。471個もの星団のうちのわずかなものだけCrという記号で表記され、他のものはCr42がM45プレアデスであったり、Cr285は北斗七星の5個を含む巨大なおおぐま座運動星団だったりする。

 接眼レンズを通してCollinderの星団を見るとき、Collinder自身は眼視で星団を発見したのではなく、多くの天文台で写された写真を見てリストしたことを知っておこうとWatsonは書いている。Collinderは星団をプレアデス型、プレセペ型、じょうぎ座μ型と3つに分類している。じょうぎ座μの星団はNGC6169だが、Watsonによると「名前のもとになった星の周りに2,3個の暗い星があるかなりまばらな星団」らしい。<私はまだ認識していないので、次のwaddiの目標にしよう。>

 Cr45(きりん座のNGC1502)、Cr112(いっかくじゅう座のNGC2264)をチェックしよう。これらはμNor.型になっているが、Collinderの言うプレアデスやヒアデス型とどう区別できるだろうか。<私が見た印象では、NGC1502は明るい二重星のまわりに星がたくさん集まっていて、それぞれがキラキラ輝く華やかな星団だ。NGC2264は、いっかくじゅう座S星が明るく光り、その周りにばらばらと星が集まっている。>

 Davidは、I love star clusters! と書き、Crカタログの多くは彼の住むバンクーバーからでは南に低く見えないが、カシオペヤとケフェウス座の他にもペルセウス座やいて座など北半球からでも見えるものが多くあって見るのが忙しいよ。Collinderのカタログはネットから見えるし、MとNGCリストだけに頼っていると見逃すgemsがあるよと結んでいる。