鞍馬山・自然観察会
                             2024年05月12日(日)

9:00叡電鞍馬駅前9:10−9:12仁王門前240m9:34−9:25ケーブル山門駅250m
−9:35由岐神社 275m9:39−九十九折−中門−貞明皇后行啓お休憩碑−
10:02寝殿340m−10:16本堂金堂360m−本坊(金剛寿命院)10:25−
10:41 霊宝殿(鞍馬山博物館)397m−11:01背比べ石−11:07大杉権現社 (昼食)11:36−11:49僧正が谷不動明王468m −11:54奥院魔王殿−
12:03 西門280m−12:22 貴船神社仁王門12:31(解散)−12:41
一の谷観光トイレバス停− 13:07貴船口駅

京都府山岳連盟自然保護委員会主催の観察会が
鞍馬山で開催された。

雨の予報で開催が危ぶまれたが、午前中は
大丈夫だろうということで開催に踏みきった。


叡電鞍馬駅に集合した参加者は52名。
2人の講師から鞍馬山の説明があった。
鞍馬寺の敷地は昔から保全されており、
モミシイ林の極相林となり豊かな
自然が残っている。

770年に建立された鞍馬寺は平安遷都より
前に奈良の僧(鑑真の弟子・鑑禎)が造った
ことに意義がある。
平安京遷都以前に京都で建立され
今でも現存するのは鞍馬寺、太秦の広隆寺、
東山の清水寺くらい。

駅前にある「縁の石」には
2020年7月7日の水害で叡電鞍馬線が
438日間運休したとある。

天狗のオブジェ前で集合写真をとる。
デナ21形電車の先頭部と動輪が
保存されている。

仁王門前まで歩く。
家の石垣などに使われている鞍馬石は
花崗岩と閃緑岩の中間 の花崗閃緑岩で
磁鉄鉱を含むため表面が赤褐色で
侘びさびがあって重宝がられている。



ミヤコワスレ(ミヤマヨネナの園芸種)、
新緑のイロハモミジがきれい。
ヤマモミジとは葉が裂ける数が違う。
イロハモミジは3〜9裂、ヤマモミジは9裂。

ケーブルの乗り場の普明殿前に聳える
高い木はタラヨウの雌。
ハガキの木として知られている。

参道下の溝にアカソ(カラムシ)、
道端にカンアオイ(葉が卵形、仲間にフタバアオイ、
ウスバサイシン、ギフチョウが好む)、
フタバアオイ(葵の紋)、
イラクサ科のウワバミソウ、ヤブマオ。

由岐神社は940年に建てられたもの。
段差のある地形のため柱の長さが違う
懸造り(舞台造り)になって、真中が
通路になった割拝殿になっている。


鞍馬の火祭りは由岐神社の祭りである。
拝殿の先には京都市天然記念物の高さ49m
の大杉がある。
次は高さ17mカゴノキである。
鹿子木と書くように
木肌に鹿の模様がある。
白い花のガマズミ、カナメモチ
(ソバの花に似ている)。

テンナンショウ(テンナンショウ属植物は
北海道から沖縄まで全国的に分布し、
約 30 種以上と種類が多く、
分類が難しい群として知られている。)
代表的な種としてはマムシグサ、
マイヅルテンナンショウ、
アシウテンナンショウなどがある。

カントウマムシグサ(性転換する。)
コウライテンナンショウ(茎に白い斑点)。
ウツギ。
ケシ科のクサノオウ(黄色い花 毒性)、タケニグサ。
ウリノキ(葉が3裂、ウリの葉に似ている)。ユキノシタ、
コクサギ(ちいさなくさい木、ミカン科特有の
油点がある。
コクサギ型葉序左右交互に2枚ずつ出る。
クサギはシソ科。

ウラジロガシ(葉の裏にロウ物質が
分泌されて雪白色になる。
) シラカシはロウ物質を分泌しない。

タラノキ、ヨウシュヤマゴボウ、ロウバイ、
ジンチョウゲ、コショウノキ(ジンチョウゲ科
果実が胡椒のように辛い)。

清少納言が「近うて遠きもの」と言った
九十九折。中門をくぐる。

弁財天に登る階段下の大木は
オオバノボダイジュ(シナノキ科)。
ヤマアイ。


金堂に出た。
翔雲台から南に展望が開け比叡山の
玉体杉が見える。
翔雲台は平安京の擁護授福のため
本尊が降臨した場所。
中央にある板石は経塚の盤石。

また本堂前にパワースポットがある。
金剛床という六芒星型の石が埋められている。
天のエネルギーが降臨するといわれこの
中心に立つと、エネルギーを感じることが
できるそうで、手をあげて実感している
人がいる。


本殿前には狛犬のかわりに
阿吽のトラの像があるが、これは
毘沙門天の使いである。
トラの像「吽」の横にボダイジュがある。
トラの像があるのは、鑑禎上人が、
鬼に襲われ、毘沙門天に助けられたのが、
「寅の月」「寅の日」「寅の刻」であった
ことからという。





鞍馬寺本殿金堂の本尊は「尊天」である。
堂内には中央に毘沙門天、
向かって右に千手観世音、
左には護法魔王尊が安置され、
これらを合わせて「尊天」と称している。

本坊(金剛寿命院)の前に集合した。
ここには鞍馬寺寺務所や鞍馬弘教宗務本庁が
置かれている。

前庭の「瑞風庭」には、炭酸カルシウムの
含有量が50%以上という石灰岩がある。

奥の院に護法魔王尊が降臨する様子を
表現している。

右の崖に緑色岩の案内がある。
緑色岩はチャートを含んでいる。

与謝野晶子の歌碑は石英閃緑岩だそうだ。


霊宝殿(鞍馬自然博物館)の前で
説明があった。
ここに1970年代から10年間 植生調査を
おこない、1100種ほどの植物名が
収録されているが、講師は
その中にない「コバンノキ」を発見したそうで、
興奮気味に語った。

与謝野晶子の書斎「冬柏亭」がある。
かなり質素な建物。
東京から移築したもの。

男児がオオセンチコガネを見つけた。
糞を処理する能力はすごい。
奈良公園のシカの糞を人間が
処理しようとすると5億円はかかるとか。
生息地域によって異なる色彩が見られる。

緑は近畿中央部、ルリ色は紀伊半島、
赤色はその他の地域。

ホオノキ、トチノキ テンナンショウ。
木の根道の広場にある大権現社跡で
昼食になった。

義経が16才のとき背の高さを
測ったという背比べ石は高さが120cm、
彼は成人しても身長が140cm
だったと言われ小柄だったようだ。


右の尾根にはいると竜神池があり、
ここは世界の霊がたむろしている
といわれ、大蛇退治の伝説もある
スピリツアリズムの世界である。

鞍馬山の地質は赤道にあった海底火山が
プレートにのって移動して日本列島付近の
プレートの沈む地点で剥ぎ取られた
付加体できたものであり、
2億数千年前の古生代から
中生代のものである。


チャートを含むグリーンストンがある。
これは相当深い海底で火山爆発の際に
砕けて火山灰とともに堆積したもの。


チャートは硬い石英質の岩石で火打ちに用いられた。
麓から革堂(こうどう)までは古生代の地層で
約2億5千万年前のもの。

魔王殿には650万年前に人類救済の使命を
おびて金星から降臨した魔王を祭っている。

地質的に見ると魔王殿は石灰岩のうえに
建てられたもので時代決定の指準化石の
フズリナがあることから
2億数千年前の古生代ものである。

魔王殿の前の石には白いウミユリの
化石があった。
水をつけると白い化石が浮かび上がる。

極相の案内板がある。
最初は光を好む松やナラなどの
陽樹が成長し、その日陰に
シイやカシなどの陰樹が芽生える。
成長すると陽樹を追いやり陰樹だけの
森となり永く安定する。

標高500m近くになるとモミが多くなる。
この辺りムササビが多くいたが
見られなかった。

カヤの大木にからまるフジツル。
フジは絞め殺しをしないそうだ。
振り返るとケヤキとウラジロガシが
からまって大木になっている。
コバンノキ(葉の形が小判に見える。
花は地味で雌花は黄緑色、雄花は赤紫色)、
カラスザンショウ、メグスリノキ、
ジャケツイバラ(鮮やかな黄色の花、
総花序が葉の上に上向きにつく)。

急な坂をおりると西門があり貴船川に出た。

人込みを描き分けて、すこし川上に歩くと
貴船神社の鳥居につく。
そこに大きなケヤキがあり、
鳥居の奥の左手の岩の上に
カツラの木がある。

最後の説明。
貴船の名前は神武天皇の母君が黄色い船に
乗ってこられたからと言われる。
絵馬発祥の地、また恋愛と縁切りの
両方の神である。
和泉式部が貴船神社で願掛けをし、
離れてしまった夫の心を
見事とりもどした。

また丑の刻参りで知られる。
丑の刻参りは、能楽「鉄輪」に
あるように神社の神木に憎い相手に
みたてた藁人形を釘で打ち込んで
呪うというもの。

ここで解散になった。
一の谷観光トイレバス停からバスで
帰る人、歩いて帰る人がいたが、
歩いて帰る人は途中で雨にあった。



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