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TatteYahh! - 01/03/16

SPeaKeR が聞こえる。どこからともなく。ぼくはスピーカーを見上げた。(ぼくの部屋のスピーカーは高いところに設置してある。)コンポの音波波形が動いている。夏の暑いアスファルト道路で悶えるミミズみたいに波形がくねっている。でもぼくは電源を入れていない。まして再生した覚えもない。ぼくがミミズみたいだと思ったのを察したのか、波形はその躍動を弱めていった。ミミズは死んだ。
 と、急に暴れ出す。音は拡がりをみせ、ぼくを包み込んでいく。貧血の感覚でぼくは自己認識さえかなわなくなる。なにがなんやら分からなくなる。流れに飲み込まれる。ぼくは両手を拡げて空を仰いだ。砂で出来た彫像のようにサラサラと風に乗って消えていく。粒子になったぼくは意識を持たない。バラバラになったはずなのに一体感を感じる。空に、大地に、宇宙に。



TatteYahh! - 01/03/05

MooNLiGHT の頃、月はまだなくて夜には完全な闇があった。時間は今よりもずっとゆっくりと流れていた。人は皆臆病でひとかたまりになって夜を(完全な闇を)過ごしていた。完全な闇の中では自分の手のひらさえ見えなかった。肉体と心の境界があやふやになった。心が肉体から抜け出した。そこが夢だった。
 そして完全な闇には住人がいた。彼らは醜い姿をしていて、酷く不吉な顔をしていた。だから人はそれをおそれた。けれど、それは嘘だ。完全な闇の中でどうやって彼らを見るというのだろう?見えないから?もしかすると闇の住人は肉体をもたないのかもしれない。人の夢が具現化したものでさえあるかもしれなかった。
 とにかく、人は彼らと時間を住み分けていた。人は朝日が昇ると活動を始め、日が沈むと早々にひとつに固まり震えるようにして夜を過ごした。そして闇の住人が活動を始めた。
 あるとき一人の狂人が神を発明した。それから人が神にこう願い事をするのに時間はかからなかった。怖ろしい闇を取り払って欲しい。

 それからしばらくして何もなかった夜空に月が浮かんだ。

 完全な闇は姿を消した。闇の住人たちは居場所を奪われた。それと引き替えに人は何かを失った。ぼくたちが夜空に月を見ると、喪失感をかんじるのはきっとそのせいなんだ。

TatteYahh! - 01/02/22

 つり、ぽつりと街灯が空を舞い、トンネルがオレンジ色の口を開けてぼくを待ちかまえている。入ると風を遮るためか少し温かい。できることならトンネルの体内で消化されてしまいたいな。なんて情けないことを思う。
 ぼくはバンド練習の帰りで、疲れている。エレベーターかなにか乗り物で移動しているときのような浮遊感を耳の奥で感じる。後ろを振り返ると、カーブを描くトンネルの入り口は見えなかった。煙草や酒以外に、ウーロン茶も喉に悪いらしい。弱いけれど酸性なのだそうだ。ギターボーカルがそう言ってた。途中でコンビニに寄ってウーロン茶を買って帰ろう。
 コンビニでウーロン茶と煙草を二箱買った。頭の悪そうなアルバイトの高校生がおつりを間違えたけれど、疲れて口を開く気力がなかったのでそのまま何も言わずに受け取った。珍しく趣味のいい洋楽がかかっていたのでかろうじて救わる気がした。
 家に帰ると母が就職情報紙を差し出して「そろそろ紺のスーツでも買わなきゃね。」と言った。ぼくは黒人のジャズバンドがかっこいい細身のスーツを着こなしている情景を思い描いて、「そうやね。」と答えた。自分の部屋に入ると煙草と犬の匂いがした。



TatteYahh! - 01/02/10

 ローン羊ドリーの誕生以来、クローン動物は珍しくなくなったが、遺伝子操作をしたうさぎの「アルバ」をどう呼べばいいのだろう。受精卵に緑色蛍光性タンパク質(GFP)の遺伝子を注入し、青い光にあてると緑色に光るよう操作された“改造”うさぎだ。アルバはおしゃれなペットなのか、実験動物なのか。動物の権利を侵害していると見る向きもある。


 怒りを感じた。記事を読んだけれど全て言い訳に聞こえた。彼はアートという言葉を盾にしている。聖戦と称して戦争を奨励したのと変わりない。そして最後に確信犯的発言もしている。まるでビジネスを見越しているみたいだ。商売のために生命操作をしていいわけがない。

NS: 次はどんな挑戦を?

 遺伝子改変をほどこした犬を作りたいですね。うさぎと同じで、犬も愛すべき生き物だからです。しかし、体外受精の技術が犬にも応用できるようになるまでは、はっきり言えません。今年の夏くらいには可能になるかもしれませんが。他の動物や植物に関しては、まだ答えられる段階ではありません。今、勉強している最中です。

グリーンのうさぎが意味するもの――生命操作アートの波紋 - MSN ジャーナル



TatteYahh! - 01/01/19

 は左右逆に映る。どうして上下は逆にならないのだろう?



TatteYahh! - 01/01/18

 なきゃ。そう思って横になる。目をつむると、重いコートを脱いだみたいに体の力が抜けていくのが分かる。そしていろいろなことに想いを巡らせる。眠る前のその至福のひととき。そんなときにぼくはよくいい考えを思いつく。けれど、その思いつきは目覚めたときにはすっかり忘れている。思いついたことすら忘れてしまっていることもあるはずだ。このドキュメントは更新されています。保存しますか?PCと違ってそんなふうには誰もたずねてはくれない。だからぼくは枕元にメモ帳を置いている。思いつきを書き留めるためだけれど、これが結構辛い。だって一度寝る体勢に入ると体がすごく重たくなるのだ。後でメモ帳を見返してみて、自分でも意味が分からないことだってある。文字になっていない場合すらある。おそらくぼくは途中で力尽きたのだろう。
 それから人と話し(買い物の途中、喫茶店での休憩中のお喋りだとか、眠気と戦いながらするチャットだとか)をしているときにもよく思いつく。眠る前と同じで、きっと脳の総力がそこに集中しているからだと思う。そんなとき、以前引き出しにしまっていた無くし物を発見する。
 ところで、感覚というのは、つまり外からの情報を処理する窓口なわけだけれども、暗闇に徐々に目が慣れるように、あるいは小さな音も耳を澄ませば聞こえてくるように、感度を調整する機能が付いているものだ。またあるいは、盲目ならばそれを補うように聴覚が鋭くなるといったような補完機能まである。スティービー・ワンダーとか盲目の音楽家が成功している例もあるしね。琵琶法師も・・。
 眠る前は感覚がシャットダウンされている。あるいはスタンバイ状態。新しい情報は全く入ってこない状態。保存されたそれまでの情報の整理がはかどる。話し中は常に新しい情報が言語という形で脳を刺激する。それが思いつきを誘発するのだろう。



TatteYahh! - 00/12/08

 刺にはゲンガーと片仮名で、それからどこの国のものだか分からない文字が書き込まれていた。梵字みたいなクネクネした文字だった。中途半端に親切な名刺だなと思った。
「スミマセンガ時間ありますか?」不完全なイントネーション。「時間はあります。」とぼくは答えた。彼はヒットラーみたいなちょび髭をヒクヒクさせていた。でも鼻毛かもしれなかった。もし鼻毛だとしたら凄いことだ。
 彼が来たときぼくは大音量ヘッドフォンで現実逃避している最中だったので、気付くのにかなりの時間がかかった。ん?とヘッドフォンをずらして耳を澄ますと「コンニチワハ!」という如何にも外国人の日本語が聞こえた。語尾は鼻から抜けるような発音の仕方だった。玄関まで行くとつられてぼくも「コンニチワハ!」と挨拶した。宗教かな?
 彼はおもむろにコートの下から何かを取り出す仕草をした。う、撃たれる!?ぼくはマフィア映画の観すぎかもしれない。彼が取り出したのは見たこともない生き物だった。ぼくが不可思議な顔をしたのか、それを察したように彼は説明を始めた。「こいつはドッペルという動物ですよ。ワタシの国では結構フツウですよ。最近ニッポンでも都市部では増えているんです。こいつは人なつこいですよ。」ぼくはなんとも困り果てた。「はぁ・・。あのぅ、うちにはもう犬が一匹いるんです・・。」するとゲンガー氏はそんなつもりはないっといった風にアクションした。「イイエ、そういうじゃないですよ。こいつはペットにはすこし向いてませんから。ただ弱っているようなので食べ物を頂けないかなと思って、同郷の者としてホウっておけないんですよ。」なるほど。ぼくは「ちょっと待って」と言うと台所に向かった。
 台所に入るといつも癖で冷蔵庫を開ける。とろけるチーズが存在を主張していた。でもこういう場合食パンてのがセオリーだよな。そう思ってそれらしい場所を探してみたけれど、なかなか食パンは見つかない。仕方がないちょっとコンビニにでも行って買ってこようかと思ったけれど、なにかおかしい気がしたのでやめた。あまり待たせるのも悪いから、「ついカッとなって」殺人を起こす人がそうするように目に付いたものを手にとって持っていった。
 「さきいかですか・・。」さすがのゲンガー氏も困っているみたいだ。すこし気分がよかった。 ドッペルはさきいかをクチャクチャと食べた。食べているというよりはアメーバかなにかがそうするみたいに取り込んでいるといった感じだった。くちは未然形だった。気色悪い。ぼくは正直そう思った。思ったのを見透かしたみたいにドッペルはこっちを見た。目は異様に大きくて黒目の中で何かがぐるぐると渦巻いていた。ぼくは危うく吸い込まれそうになった。「び・ビール飲むのかな?」ぼくは咄嗟に口に出した。ゲンガー氏は抜け殻みたいにうなだれている。返事がない。「持ってくるよ。」とにかくその場を離れたくて、ぼくはビールを取りに行った。後ろからドッペルが大きな目でぼくを見ているような気がして、振り返れなかった。
 冷蔵庫にはビールが2本仲良く佇んでいた。娘を生け贄に差し出す父親みたいな気分になった。「ごめんよ。」ぼくはビールを両手にそれぞれ持って玄関に向かった。するとそこにはぼくがいた。ぼくにとてつもなく似た人物がいた。鏡に映る左右対称のぼくとは違った。写真なんかに映ってるあまり見慣れない方のぼくだ。なぜかそいつもビールを両手に持っていた。銘柄が違う。よく見ると顔もすこし幼かった。過去のぼくかもしれない。相手がぼくだったら、別に気を使わなくていいだろう。そのままぼくは大音量ヘッドフォンの現実逃避に戻った。しばらくしてからふとこれを文章にしたくなった。いまぼくはこれを書いているわけだけれど、たぶん”ぼく”はいまでも銘柄の違うビールを両手に持ったまま玄関に立ってるはずだ。



TatteYahh! - 00/11/16

 んな夢をみた。
 ぼくは剥き出しのコンクリートに直に座り込んでいる。周りには音楽仲間が思い思いのかたちでたむろしていた。空は澄んでいて、その透明度はきっといま世界で一番のはずだ。ぼくたちがいるのはまるで公共事業見直しのために取り残された残骸で、くぼんでいた。くぼみから見上げる空は一層きれいに見える。仲間の一人がメロディーを口ずさみ始め、いつの間にか皆がそれに合わせる。
 シーラがかじかんだ指で掻きむしるギターは、感情と旋律の循環で迫力を増す。彼女の感情はギターに増幅され、そのせいか指から血を流しているのにも気付いていない。それに感化された他の仲間がそれぞれの演奏を極地に達したか
 と思うと同時に、ぼくは目覚める。布団の温もりはぼくを絡め取っていた。体中汗びっしょりだったぼくはシャワーを浴び、首にタオルを掛けたまま台所に行った。体から発する蒸気がユラユラとぼくの後を追う。コーヒーを煎れるための湯を沸かし、しばし空白の時間。夜はまだ明けておらず、空気は澄んでいる。まるでまだ夢の中にいるような気分だ。ジジジジジジと湯が沸く音がして、ぼくはハッと我に返る。そしてこんなことを思う。夢の中の音楽仲間たちはいまごろどうしているのだろうか?



TatteYahh! - 00/10/23

 る特定の匂いを嗅ぐと鮮明に思い出すイメージがある。それは脳の記憶を司る箇所が嗅覚のそれとリンクされているからなのだそうだけれど、もちろん経験にないイメージは思い出しようがない。なのに僕は腐った水の匂いを嗅ぐとある情景がイメージとなってフラッシュバックする。正確にはフラッシュバックではないのだけれど、すごく感覚が似ている。立ちくらみの一瞬の盲目ほど時間の継続性はないし、サブリミナル効果を狙った広告の一コマのように見逃すこともない。どっと情報が流れ込んでくるという表現がすごくしっくりとくる。まるで圧縮ファイルを解凍するみたいな感じで、突然形を現す。それは懐かしくもあり、また圧迫感も備えている。忘れられない嫌な思い出のようにそこに水死体が浮かんでいる。映画の1シーン。まだ観たことのない映画の1シーン。



TatteYahh! - 00/10/17

はゲーム愛は幻想
僕は無知で世界は浮遊体
カラカラと音をたててぐるぐる回ってる

[ReTuRN]
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