突然ドンドンと乱暴に部屋の戸が叩かれた。
「………」
悪いとは思ったが、眠たかったので無視する。
部屋は暗いし、ばれないだろう。
物音を立てずにじっとしていれば帰るはずだ。
それに、もし緊急なら合鍵を持ってきて本当に居ないか確かめるだろう。
そのうち戸を叩く音が消え、部屋は静かになった。
今度こそ眠りにつこうと、大きな背伸びをして布団をかけなおす。
「熱く燃える火炎よ、燃え盛りて敵を討て “ファイアボール”」
「げ!?」
ギルバートがベッドから跳ね起き、戸の延長線上から外れる位置に飛び退く。
案の定、戸は燃えながら吹き飛び奥の壁に激突。壁にぶつかった衝撃で火は消え、火事だけは免れた。
難しい技術ではあるが、魔力をコントロールし爆発に重点を置いたのだろう。
煙がもうもうと立ち込める中人影が浮かぶ。全体的に体は細い。
右手には長い棒状の物、魔法を使った事から杖だと想像はつく。
髪は長い。
呪文を唱える声にもなんとなく覚えがあり、外見もギルバートの知る人物と一致する。考えるだけで憂鬱だ……。
ようやく煙が晴れてきた。人影が動く。
「久しぶりね。生きてた?」
何も無かったかのように襲撃犯はギルバートに近づき声をかけた。
まるで友人のようだが、襲撃犯と化す人物を友人と呼ぶのだろうか。
「……ハァ……」
対するギルバートは犯人を見て、大きなため息をつく。
頭を抑え、壁にもたれる。すっかり目が覚めた。
もうこの後眠れはしない、そう思いギルバートは気が滅入る。
今目の前にあることより……眠れない事を気にするのはどうなのだろうか。
やって来たのは1月前のゴーレム騒動で一緒に山に入ったメンバー、その中で一番むちゃくちゃだった奴。
「リーリア!」
少し遅れて、アルタイルがやって来た。
入り口から部屋を見て、
「も、申し訳ありません!ギルバートさん!」と顔を引きつらせた。
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