第8章:嘘も方便



「……何か考えがあるのじゃな……」

長老の声が少し暗くなった。

「これをお読み下さい」

アイリスが、ポケットから封筒を取り出し、長老に手渡した。

綺麗に閉じられている。それだけ重要な物なのだろう。

長老が、封を解き中の紙を眺めた。

「予想はしておった……。確かに円く収まり、レグルスも幸せになるじゃろう。

じゃが、……」

「かまいません。覚悟の上です。

そのあとの事は、ギルバートが解決してくれました」

何の事だ!?俺は何も考えてないぞ!

「分かった……。そなたの言うとおりにしよう

……すまぬな、わしは何も出来なんだ………」

「そんな、ウロボス様には感謝しております。

私を育ててくれたのも、一人暮らしのとき世話をやいてくださったのも、あなたでした。

ありがとうございました……」

アイリスが頭を下げた。深々と、これ以上頭が下がらないほどに……。

頭を上げたアイリス。辛そうな顔だった……

「……全然話が読めない……。どういうことなんだ?」

どうして哀しむんだ?円く収まって、しかもレグルスが幸せになるんだろ?

哀しむ理由が見当たらない。

「後から解るわ。気にしないで!

全部、これで解決するから!」

そうは言うが……本当に大丈夫か?

アイリスが辛い目に遭う流れだ……。

レグルスを止めたアイリスが、村で辛い目に遭う理由もない。むしろ英雄扱いじゃないのか?

「……僕は……負けたんだね………」

もう一度訊こうと口を開きかけた時、レグルスの目が覚めた。

「ちょうど良かった。ギルバート、彼をここに連れてきて!」

明るい声。ただ、顔はまだ暗い。でも………

「……ああ……分かった……」

そもそも、村を救ったアイリスが、不幸になる理由がない。

俺の考えすぎだよな………。

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