「俺の名は「主人公(ぬしびとこう)」、昨年ついにときめき中学を卒業したんだ」

「うんうん」

「・・・つまり、これで義務教育が終ったってことだ」

「・・・えっ、あれ?」

「これからは俺の道を行く! 格闘技をきわめ、キングオブハートの紋章を手に入れるのだあぁぁーーー!!」

 

「ちょっとまてえぇぇーーーーー!!!」

 

「・・・なんだ詩織、これからいいとこだったのに・・・」

 意気揚々と自らの抱負を語ろうとしたのを邪魔されて、不満そうに少年が言った。

「ぜんっぜん、違うでしょう!

 公はこれからきらめき高校に入学するんでしょっ!!

 ・・・それで、それでぇー、私に振り向いてもらえるように努力してぇー、

 

 「詩織、一緒に帰ろうぜ!」

 「え、・・・でも、友達に噂されるとはずかしいし・・・ごめんなさい」

 

 ・・・・・・なぁーんて、そっけなく断っちゃったりして、でもでも、ちょっと嬉しく思っちゃったりなんかしちゃって、・・・ごめんね公、また今度誘ってね、なぁーんて思うわけ、それからそれから・・・次第に私も公のことを意識するようになって、休日に一緒にデートとかして、

 

 「ねえ公、覚えてる?」

 

 ・・・なぁーんて、昔話に花を咲かせて、それからそれから・・・

 

 「・・・詩織・・・」

 「なぁーに、公?」

 「・・・君が欲しい」

 「えっ、そんな、私たちまだ高校生よ、・・・そんなこと、まだ早いわ。

  ・・・・・・でも、・・・・・・公となら・・・」

 

 わっきゃああぁぁぁーー!!! 公ってば、駄目よそんな・・・もう、やんやんやん!」

「おーい! 詩織ぃー! 帰ってこぉーーい!!」

「はっ!」

 ようやく自分の妄想から帰ってくる少女。

「・・・詩織、よだれよだれ」

 ごしごし・・・

 

 ・・・美少女がだいなし・・・

 

「と、に、か、く! ・・・公はきらめき高校へ行くのよ!

 そうじゃないと、「ときメモ」は始まんないのよ!!」

 少女がこれ以上ない正論を言った。

「・・・すまない、詩織・・・」

「・・・公・・・」

 少年はその意志の強さを示すかのように、こぶしをぎゅっ・・・と握り締めた。

「・・・俺は、・・・俺は師匠の下に弟子入りして、キングオブハートの紋章を受け継ぎ、いずれ師匠を超えるんだっ!!

 流派あぁーー! 東方不敗はあぁーー!!」

「だっ、だめよ公! そんなこと駄目よ!! ・・・それにときメモにあんな濃い人は出てこないわ!!」

 

 ・・・だ、出しては駄目なのかああぁぁーーーー!!!!(作者の魂の叫び)

 

「・・・そうかもしれない、・・・でも・・・」

「だめったら駄目!! そうじゃないと・・・絶交よっ!!!」

 

 ・・・なっ、なつかしいフレーズだ!!

 

「・・・少女よ・・・」

「だっ、誰?」

「あっ! あそこだ!!」

 公が指差すように、その人物はそこにいた。

 ・・・そう、

 

 電信柱のてっぺんに。

 

「・・・少女よ、行かせてやれ・・・。

 ・・・男にはやらねばならないことがあるのだ」

 トラ頭のマスクをかぶった、どおおぉぉーー見ても怪しいその男が言った。

「あ、あんたは・・・」

 公がつぶやいた。

「そう! ときメモのSSといえば定番の、世話焼き男「タイガージョー」とは私のことだああぁぁーーー!!!」

 

 バアアアァァァァーーーン!!!

 ・・・と大ゴマ見開きで目がアップになるタイガージョー。

 

「・・・ゆくがいい、公よ・・・

 そして、・・・真の漢(おとこ)となれ!!」

「すまない、タイガージョー・・・」

「ちょ、ちょおおぉっと待ちなさいよおおぉぉぉーーーー!!!!」

 当然のごとく詩織が突っ込みを入れた。

「私を無視して勝手に話を進めないでよっ!

 それに公は私のモノなんだからぁーー!!!」

 

 ・・・詩織ちゃんって、絶対こういう風に思ってるような気がする・・・

 

「し、・・・詩織、・・・お、お前・・・俺のことそーゆー・・・」

「だいたい昔っから思ってたんだけど、ときメモのSSになんであんたがでてくんのよっ!!

 ときメモは健全な一般ゲームなのよ!

 ・・・あんたみたいな18禁ゲーの汚れキャラが出ていいものじゃないのよぉっ!!」

 

 ・・・しおりん言い過ぎ・・・

 

 ・・・アリスソフトさん、私が言ったんじゃないですよ、しおりんだからねぇー・・・

 

「・・・まゆよ・・・」

「誰がまゆだっ!!!」

 

 ・・・まゆちゃんっていうのは、アリスソフトの超名作「Only You」に出てくるヒロインの一人なのだ。

 しおりんの容姿と設定に、沙希ちゃんの料理の腕と優しい性格を加えた、まさに完全無欠のヒロインなのだ。

 

「どぉーー、ゆぅーー、いみいぃぃーー?」

 

 ・・・深い意味はございませんです、はい・・・

 

「なぜ私が出ているのかと問うのか?」

 タイガージョーが静かに言った。

「そ、・・・そうよ!」

 思わず一歩ひいてしまう詩織。

「なぜならそれは・・・

 

 私がタイガージョーだからだっ!!!!」

 

 バアアアアァァァァーーーーーーーーン!!!!!

 

 ふたたび大ゴマ目アップになるタイガージョー。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・

 

 ・・・

 

「そ、・・・そうだったのか!!

 わかったぜ!! タイガージョー!!!!」

 公が感涙にむせびつつ叫んだ。

「は? ・・・・・・・・・ちょ、ちょっと、・・・公・・・」

 詩織が顔にいっぱい縦線を入れたまま、声を振り絞る。

「わかってくれたか、公よ!」

「ああ、わかりすぎるほどにわかったぜ!」

「あ、あのね、・・・こ、こおぉーってばっ!」

「いざゆかん! (おとこ)の道を!!」

「ああ! たとえどんなに険しくとも!!」

 詩織を無視して盛り上がる二人。

 

「・・・みとめない・・・」

 

「なにか言ったか詩織?」

 公が聞き返す。

 

「絶対にみとめないんだからあああぁぁぁーーーー!!!!!」

 

「少女よ、なぜだ?」

「当たり前でしょう? こんなときメモ、天が許しても私が・・・読者が・・・全国一千万のときメモラーがゆるさないわっ!!!!」

 

 ・・・やっぱりそうかなあ・・・ドキドキ・・・

 

「こんな話がときメモのSSだなんて、絶対に認められないわ!!」

 

 詩織はタイガージョーに負けじと、

 バアアアァァァーーーーーン!!!! ・・・と大ゴマアップになった。

 

 ・・・・・・・・・

 ・・・

「・・・しかたないな・・・」

「・・・やるのか、タイガージョー?」

「無論! ここまで言われたのだ、証明せねばならない!!」

「ふっ、・・・どーするつもりかしら?」

 詩織は手を組み右手を頬に当て、不敵に微笑んだ。

 

 ・・・その姿はヒーローものに出てくる悪の女幹部そのものであった。

 

「うるさいわねっ! ほっといてよっ!!」

 

 

「いくぞ! コウ!!」

 タイガージョーが目をカッと見開いた。

「おうっ!!」

 公も同じく目を見開いて応じた。

「「はあああぁぁぁぁーーーーーー」」

 両者ともに気をためていく。

 

「ときめきいぃぃーー!!」

 

「メモリアルはああぁぁぁーーー!!」

 

「「王者の風よおぉぉーー!!!」」

 二人は声をハモらせた。

 

「ささやき!」

 多数の拳をくりだすタイガージョー・・・

 

「きらめき!」

 負けじと拳をくりだす公・・・

 

「「ドキドキ、大好き!!」」

 両者の拳が互いの中央でぶつかり合う・・・

 

「感じよ!!!」

 

「「ハートはああぁぁーーー、熱く、ときめいている!!!!!!!」」

 

 ・・・・・・

 

 ・・・

 

「・・・お、おお、・・・タイガージョオオォォーーー・・・」

 感涙にむせび泣く公。

「・・・どーした? ・・・男子たるもの何を泣く?」

 そう言うタイガージョーの目にも光るものがあった。

 

 ・・・すばらしい! ・・・すばらしいぞ、二人とも!!

 

 ・・・君たちは光り輝いているぞおおおぉぉぉーーーー!!!!!!

 

「ちょっとまてこらああぁぁぁーーーーー!!!!」

 しおりんぶちきれ。

 

「みとめない、絶対に認めないんだからああぁぁーーー!!!!」

 

 ・・・みとめたくないものだな。・・・若さゆえの過ちというのは・・・

 

「シャアになってごまかすなあぁぁーーー!!!」

 

 ・・・・・・・・・

 

「・・・ちょっと・・・」

 

 ・・・

 

「・・・本気でこれで終る気?」

 

 ・・・

 

「せめて夢落ちにしてええぇぇぇーーーー!!!!」

 

 感涙にむせび泣く漢(おとこ)たちのそばで、しおりんの絶叫がいつまでも、

 

 ・・・いつまでもこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 

 ときメモSS第一作がこれか・・・・・・

 

 ・・・まあぁーー、これで消えてもタイガージョー書けたし、いっか。

 

(・・・本当にいいのか? 俺?)  

 

 

 

 


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