マングローブとりびあ







☆マングローブとは☆

 熱帯・亜熱帯の海岸沿いの、海水と淡水が混ざる場所(汽水域)に生息する植物群落の総称をマングローブといいます。つまりマングローブという植物が存在するわけではなく、特定の森林植生全体を指すのです。マングローブを形成する植物は、ヤシやシダの仲間も合わせると百種類以上にのぼるのです。

 マングローブを形成する植物は、潮の満ち引きにさらされる軟弱な地盤に生息します。このような特殊な環境に適応するため、これらの植物は他にはみられない特殊な機能や形状をもっているのです。






↑マングローブとは木の名前では
なく、ある植物全体のこと。


☆マングローブの特徴☆

根の形状

マングローブはその特殊な生育環境に適応するための特徴的な根をもちます。これらの根の役割は主に植物体の支持と、酸素の効率的な吸収です。

支柱根 (しちゅうこん)

幹の四方八方に広がる、タコの足のような根。根としての働きはもちろんですが、不安定な土壌で自分の体を支える役割をもちます。また通常、根では見られない光合成も行なわれています。

膝根(しっこん)

 読んで字のごとく、膝を曲げたような根。オヒルギ属などでみられる。膝根には呼吸根としての役割もあると考えられています。

筍根(じゅんこん)

地中浅く平行に伸びる根から、筍状に上に垂直に伸びる根を筍根といい、呼吸根の一種です。マヤプシキ属・ヒルギダマシ属でみられます。

板根(ばんこん)

 幹を支えるように四方八方に発達した、板状の扁平な根。巨大な種類のその発達した板根には圧倒されます。

耐塩性  

 

 マングローブは通常の植物が生育できないような高濃度の塩水を利用するため、次のような様々な塩排斥機能を持っています。

   根で塩分を濾過

    葉にある塩類腺から塩分を排出

    吸収した塩分を葉に貯めてその葉を落葉

    植物体内が多汁質であり塩分を薄める


種子の形状

マングローブは種子にも特徴があります。普通に海中に散布されたのでは発芽率も低く、酸素が少ないため正常に発育できません。そこでマングローブの一部の種では、主に母樹に付いている状態で種子を発芽させ、この芽に栄養を送るという形態をとっています。細長く成長した種子は時期になると落下し、泥に突き刺さってそのまま成長するか、海水で散布され分布を広げたりするのです。このような種子を胎生種子といいます。

胎生種子はマングローブを構成する植物全てに共通して見られるわけではありませんが、それでもマングローブの大きな特徴として知られています。







↑オヒルギ(Bruguiera gymnorhiza)の胎生種子。約15m。現地ではDogoと呼ばれている。
胎生種子の上部にあるタコみたいな部分は種子が海水中で運ばれる際の浮き輪となり、
上側に芽が下側に根がくるようになっている。運のいい種子はマングローブの根にから
まったり、カニなどの穴にささったりしてそこで根付く。             





☆マングローブの恩恵☆

 熱帯・亜熱帯の沿岸や汽水域に広く繁茂するマングローブは、豊かな生態系の形成の中心をなし、沿岸魚介類の生産をささえています。マングローブ生態系では樹木が主な生産者であり、そこから発生するマングローブデトリタスをエビやカニ、巻貝類が食べます。そしてそれらの生物を魚類が捕食し、その魚を求めて鳥類が集まります。またマングローブそれ自体が甲殻類や小魚などの隠れ家となり、生物多様性の豊富な生態系を形作り、ひいては地元住民の水産資源を支えているのです。

 また、マングローブ林は陸圏から流出する栄養塩や汚染物質、土壌の貯蔵場所としても働いています。つまり、栄養塩や土壌をトラップし、少しずつ河口域に供給するダムの役目を果たしているのです。この栄養塩を利用して有用な植物プランクトン(珪藻類)が多く繁殖します。これらは連続的に沿岸水域に供給され水産生物生産の基盤になるとともに、有害プランクトン(赤潮プランクトンなど)の増殖を抑制しています。また流出する土壌をトラップすることにより、サンゴ礁や藻場の破壊を防いでいるという事実もあります。

 このほかにも、マングローブ林は土壌浸食を防ぎ、海岸方面へ陸地を拡大したり、高波などの自然災害に対する防壁として役割を果たしています。 




☆なぜ減少したのか☆

 なぜ保護が必要なほどその数を減らしたのでしょうか。その理由は国によって様々ですが、主な原因としてエビ養殖池や農地・塩田などへの転換、リゾート開発のための埋め立て、薪炭材のための伐採があります。日本で消費されるエビや、日本で備長炭として販売されている木炭のほとんどが、これらのマングローブの犠牲の元に成り立っているのです。また、これら伐採による直接的な破壊に加え、開発地や農地から流れる赤土が堆積し、マングローブの根の呼吸を妨げています。

 

今回の研修先であるフィジー、ビチレヴ島は産業の多くを観光業とサトウキビにたよっています。リゾート開発、サトウキビ栽培による畑の開墾及び、薪や木材、染料としての乱伐で、現在では島の半分がはげ山という状態で、山から流れ出した土壌は、川を茶色く染めている。現在、フィジーでマングローブが減少しているのはこのようなことが原因と考えられます。



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