前作「Do you know〜」から2年を経て、先行シングルの「Square Window」と共に届けられたトム・ジェンキンソンの音楽。前作がある意味ではライブ盤だった事を思えば「Go Plastic」以来のオリジナルアルバムと言えるかも知れない。初回限定生産分には、先行で発売された「Square Window」の他、未収録の4曲を収録したボーナスディスクと(トムのご尊顔がお隠れになってしまう)紙パケ付き。
素晴らしい。素晴らしいの一言に尽きる。後でも書くがBleepでの試聴サービスを使ってある程度どんな音かは知ってしまっていたんだけども、そんな事は全くお構い無しで未知の衝撃を与えてくれるトム流音の洪水っぷり。低い唸りから徐々にドリルン節が炸裂する、まさしくオープニングに相応しい表題曲M1 ultravisitor。今アルバムの傑作たる所以であり最たる特徴でもある「聴かせる曲」のM3 Iambic 9 Poetry。M5 50Cyclesを皮切りに一旦以前のトムらしいノイズと変則の嵐が続く楽曲へと突入するが、M6-M8のような流れと言うか繋ぎ方は新しい試みを感じさせ、楽曲のジャンルすら変わってしまっている様は実に面白い。M8 steinboltなんかはもう完全にGabber。
折り返してM9-M10はダウンテンポでいわゆる大人しめの曲が短いスパンで続くのだが、今作ではこう言うスローテンポな曲においても今までのようなひたすらな暗さだけではなく、曲の変わり目が分からないように流暢に繋ぎそれを突然M11でツクツク変調させるなど、数々の趣向が凝らされていて聴いている人を飽きさせないと言うか休ませてくれない。そしていよいよ真打、「ultravisitor」と言う物語のクライマックスに相応しい怒涛のM13 Tetra-Sync!ようやくノイズだらけの世界から解脱したトムが行き着いた先は一点の黒もないEvery Day I Loveであったのだった・・・みたいな。
今作は総じていつにもまして生音が多かった気がする。あとベースやギターの音に異常なまでに固執していると言うか、明らかにドラムと電子音だけで構成されている音楽とは一線を画した新しいIDMを確立しようとしている。途中で歓声やトム自身が叫ぶ声が何度か入るのは、ライブ感よりも生音っぽさを演出する意図なのかなーとかなんとか。
この人はAphexなんかと同じくWarp所属なんだけども、そのWarp Recordsは04年に入ってから「
Bleep」と言うインターネット音楽配信サービスを稼動させ始めた事が話題になり、
スラドなんかにも取り上げられたりしたので認知度は以前より高まってきた。そのBleepでは楽曲試聴サービスも平行して行っており、このアルバムの楽曲も30秒区切りでだが全曲聴けるので一度試してみるのも良いかもしんない。