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cd review "S"

崎元仁サキモト・ヒトシ / GameMusic, TechnoOrchestra

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Radiant Silvergun Soundtrack + [2004/ABCA-5043/#26][Amazon]
98年5月にトレジャーからリリースされシューターの間で「銀銃」の名を知らぬものなしとまでバカウケした業務用STGの名作「レイディアント・シルバーガン」の同年に発売されたOST復刻盤。崎元仁氏はオケが大好きな音屋さんで他にはベイグラントストーリーやらFFタクティクスの音楽も手がけている。

随分古いゲームのOSTだから実際にプレイした人は全曲聴いてるだろうしあるいはもう耳タコになってるかも知れないが、曲がどうのではなくこのCDはとにかく音がいい。明らかに一般のCDよりもワンランク上の録音をされていて、実際に使っているもの+2万円の出力機器で聴いてるような感覚(CDなのに音がいいとか悪いとかあるのか、と言う疑問があるだろうけど細かい説明はここ読んでもらって、マスタリングによる音の良し悪しは確かに「ある」)。技術者が頑張らはったのであろうこの音質は何よりもまず拍手で褒め称えたい。

恐らくおれが今まで聴いてきたどのゲームミュージックのCDよりも音がいい。この音質は一度でも銀銃をクリアしたことのある人、むしろ実機やサターンで聴き込んだ人にこそ是非とも聴いて欲しい。高音の伸び・締まった低音、この音質の極まったM8 Pentaを聴けばあのいやらしい銀銃攻撃が昨日の事のように・・・(M22のオリジナルバージョンと聴き比べるのもおもしろい)。

Squarepusherスクウェアプッシャー / IDM, Drill'n'Bass

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Feed Me Weird Things [1996/CAT037CD/#12][HMV]
トム・ジェンキンソンの1st。ドリルンベースの開祖としてエレクトロニカ界で超メジャーな存在のトムさんだけど、彼を見出し初のアルバムにして大傑作となる今作を世に出したのはこれまたエレクトロニカで最も有名なAphex Twin(Richard D James)だったりして、まぁ流石は流石にその辺のひとだなぁと言ったかんじだ。今ではすっかりヒゲ面+小太りのおっさんだけどこのデビュー当時は21歳と言うからアレ。

1曲目のSquarepusher Themeはその再現率の高さと絶妙なFC音源っぷりが人気を博し(←てきとう)FamiCompoの3位に入ったのでネット上のオタ界隈では割と有名な曲やも。1位のみこみこナース再現っぷりも面白いが完成度としてはこっちの方が上だと思う、と言うのはどうでもいいので置いといて、Ultravisitorやなんかと比べて完全に打ち込み傾注で全編色気がないストイック(※うまい表現がみつからないから暫定で「ストイック」を使用)なドリルン・感傷的なアンビエントのみで、今の生音重視でライブでもベース弾きまくってる彼からしてみれば「若い」ようにも思えるがやはり勢いのあるドリルンは格好いい。

M4 Dimotane Coのように直球でドリルンやってるモノも今作の一つの特徴と言うか「Squarepusherの1st」のウリなんだけど、一方でM2やM7のような打ち込みならではの(割とトムっぽくないんだけど)変則ドラムンも聴き応えがある。これでも良いのか・こういうのもアリかみたいな音楽の出発点となっただけあってとても「幅広い方向に伸びていきそうな」楽曲郡が活動初期ゆえにまとまった位置にあるかんじで楽曲間にギャップとか意外性はないんだけど、同じコンセプトのものを今のトムが作ったら各ベクトルがこうも上手く一箇所にまとまらなかっただろうなぁと思う。特に、後半のM8-ラストまでの流れがドリルン→アンビエント→ドラムン→超ドリルンと変化に富んでる割には、聴いてて別に違和感がないという不思議体験ができておもしろい。

1stだけあってあまりトムらしい実験的な内容はうかがえないけれど、その分彼の持つエネルギーがそのまま全部詰まっているのでドリルン愛好家にはたまらない一枚。ただ、ひたすらにストイックなので(ジャジーで色気あるのM11ぐらい)アルバムを通して聴ける人と聴けない人が居ると思う。おれ推薦盤だけど良くも悪くも「エレクトロニカを聴く人/下地のある人」向けか。

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Big Loada [1997/INTDE-90257/#12][Amazon]
来日記念と言う事で聴いた事がなかったトム・ジェンキンソンの(たぶん)4thオリジナルアルバムを買ってみた。おれが買ったのはUS盤だけど、同タイトルで曲構成が異なるEP盤や収録曲が全然違うUK盤とかも出てるらしいので注意。

今まで知らなかった曲を聴くたびに何かしら驚かされるSquarepusherだけど、このアルバムを聴いてやっぱり彼は天才とは違ってテクノ庶民の代表なんだなぁと改めて思った。IDMと言うかドリルンアーティストの感想を書くたびにAphexを引き合いにだすのがおれの視野の狭さを物語ってて恥ずかしいが、やっぱりあの辺の天才かつ変態が作る音楽から感じられるようないわゆる「電波っぷり」がトムには無いと言うか、聴いていて凄いと思ったり感動したりするんだけどそれは理性(Intelligentなだけに)の内の情動にその音楽の面白さが分かる辺り、ちゃんと置いてけぼり食らわない表現をしてる人だと思った。まぁでもそれは天才である事の否定に繋がるんじゃなくてただ奇怪な音楽をやってないだけと言う見方も出来るし、過去に理解できない曲を作った事がなかったかと言えばそうでも無いんだけど。

で、このアルバム。M1からクリス・カニンガムがMVを手がけた事(「大阪孤児の家」)で有名なCome on my selectorからスタートし、ゲームミュージックのようなM2 A journey to reedham(7.AM mix)からM4 massif(stay strong)にかけ、高速のD'n'Bに軽めのメロディ、重圧な中に垣間見えるトムのやさしさ(?)でいきなり今作中最大の盛り上がりを見せる。48秒と短いがレトロなかんじのM7を挟んで後半戦に突入し、M8ではクラシックギターの音を使ってよく分からない物悲しさを演出。そしてM9 problem childでこま切れ高速ドリルンの真髄を発揮して後半のヤマ場を迎える。本作の特徴として一つとして腰を据えた曲が無いことが挙げられるんだけど、「腰の据わらなさ」においてこれは最高潮の格好よさを誇る名曲。M11 lone ravers(Live in chelmsford mix)は日本盤の「Hard normal daddy」に収録されていた物と全く同じでちょっとアレ。ラストのM12ではアンビエント調の曲を披露して終了。

PCとの相性が悪かったのかCD-EXTRAで収録されてるはずの「come on my selector」MVは見れなかった。まぁクリスのDVD持ってるからそれでみりゃ良いんだけど。トムのキャッチーな部分が全面に押し出されていて、実に「格好良い」アルバムになっている。

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Ultravisitor(初回限定盤) [2004/BRC82LTD/2CD/#20][HMV]
前作「Do you know〜」から2年を経て、先行シングルの「Square Window」と共に届けられたトム・ジェンキンソンの音楽。前作がある意味ではライブ盤だった事を思えば「Go Plastic」以来のオリジナルアルバムと言えるかも知れない。初回限定生産分には、先行で発売された「Square Window」の他、未収録の4曲を収録したボーナスディスクと(トムのご尊顔がお隠れになってしまう)紙パケ付き。

素晴らしい。素晴らしいの一言に尽きる。後でも書くがBleepでの試聴サービスを使ってある程度どんな音かは知ってしまっていたんだけども、そんな事は全くお構い無しで未知の衝撃を与えてくれるトム流音の洪水っぷり。低い唸りから徐々にドリルン節が炸裂する、まさしくオープニングに相応しい表題曲M1 ultravisitor。今アルバムの傑作たる所以であり最たる特徴でもある「聴かせる曲」のM3 Iambic 9 Poetry。M5 50Cyclesを皮切りに一旦以前のトムらしいノイズと変則の嵐が続く楽曲へと突入するが、M6-M8のような流れと言うか繋ぎ方は新しい試みを感じさせ、楽曲のジャンルすら変わってしまっている様は実に面白い。M8 steinboltなんかはもう完全にGabber。

折り返してM9-M10はダウンテンポでいわゆる大人しめの曲が短いスパンで続くのだが、今作ではこう言うスローテンポな曲においても今までのようなひたすらな暗さだけではなく、曲の変わり目が分からないように流暢に繋ぎそれを突然M11でツクツク変調させるなど、数々の趣向が凝らされていて聴いている人を飽きさせないと言うか休ませてくれない。そしていよいよ真打、「ultravisitor」と言う物語のクライマックスに相応しい怒涛のM13 Tetra-Sync!ようやくノイズだらけの世界から解脱したトムが行き着いた先は一点の黒もないEvery Day I Loveであったのだった・・・みたいな。

今作は総じていつにもまして生音が多かった気がする。あとベースやギターの音に異常なまでに固執していると言うか、明らかにドラムと電子音だけで構成されている音楽とは一線を画した新しいIDMを確立しようとしている。途中で歓声やトム自身が叫ぶ声が何度か入るのは、ライブ感よりも生音っぽさを演出する意図なのかなーとかなんとか。

この人はAphexなんかと同じくWarp所属なんだけども、そのWarp Recordsは04年に入ってから「Bleep」と言うインターネット音楽配信サービスを稼動させ始めた事が話題になり、スラドなんかにも取り上げられたりしたので認知度は以前より高まってきた。そのBleepでは楽曲試聴サービスも平行して行っており、このアルバムの楽曲も30秒区切りでだが全曲聴けるので一度試してみるのも良いかもしんない。

涼宮ハルヒの憂鬱(平野綾、茅原美里、後藤邑子)スズミヤハルヒノユウウツ / Pops

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涼宮ハルヒの詰合 / 平野綾、後藤邑子 [2006/LACM4268/#3][Amazon]
TVアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の作中で使われた歌モノをCDに収録したもの。第一話のしょっぱなで使われてその余りの低クオリティっぷりが逆にオタ心理を掴んでしまった「恋のミクル伝説」のほか、12話のライブアライブ(SFCゲーではない)でハルヒこと平野綾が文化祭バンドに扮して歌いまくってた二曲が入って1200円。Amazonクーポン使って500円引きにしたのに送料がかかってジャスト1000円!意味ねぇ!

作中で学園祭ライブをやってるシーンの出来不出来は京都アニメーションの手腕にかかっており、適当に手をジャカジャカ動かして口パクぐらいちょっとあってればいいかなーと言うトコロをあれだけ動きまくってくれたのに感謝感激雨霰と絶賛してDVDを買う判定を下したのはいいんだけど、基本的に京アニの手とは関係ない「楽曲」の部分でも実に耳をみはる(?)ものがあり、いや別におれは自分の音楽趣味や音楽センスが優れてるとはミクル単分子カッターほども思わないんだけども、これだけ良い音楽ならCD買って聴き続けてやっても構わないぜコンチクショウと言う考えに行き着いたので購入。あー、良い曲って言うとまるでアニソンの作法を悪いと言ってるような感じになっちゃうので、「真面目にバンドやってる曲」って言ったほうが良いのか。デビュー当時のジュディマリみたいなイメージ。

あとあれ、平野綾ホント歌うめぇよ。