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cd review "R"

Radioheadレディオヘッド / AlternativeRock

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the bends [1995/TOCP8489/#14][HMV]

ポストロックとかオルタナティブロックとかそんなジャンルの中で世界一と名高い(らしい)Radioheadのセカンドアルバム。今とは随分方向性が違うけれども彼らが売れる口火となった作品で、その音楽に「目新しさ」と言うか衝撃を受けるような斬新さ(おれがレディヘの音楽を聴くに当たって期待していた物)は見当たらない。

しかしそんな「質の高いロックアルバム」ぐらいの印象で聴き始めたらこれがとんでもない。平気でM4 fake plastic treesのような「アルバムの最後に持ってきても良い("If I could be who you wanted.All the time...All the time..."ほど素晴らしいフレーズはそう無い)」トム・ヨークの声を美しいと感じるメロディアスな曲、M6 (nice dream)のように呆けるほど凄すぎる曲がアルバム途中に織り交ぜられていて、最後まで聴いたら「穏やかなユルい曲ばかりじゃないのか?」と侮っていたのが間違いだった事を認識した。クオリティではない圧倒的な力を肌で感じられ、ポストロックの名作と言われる所以が分かる1枚。

日本盤ボーナストラックM14 killer carsは本アルバム中唯一のポップ曲なので、良くも悪くも普通の曲だが現在の音に結びつくきっかけのような音楽として考えたらある意味貴重(M13はどうでもいい)。しかしやっぱ俺はトムの切れそうなヴォーカルが好きだ。

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OK COMPUTER [1997/55229/#12][HMV]

M1 airbagから切に語りかけるトムの声に失禁しそうになるサードアルバム。前作からの流れを汲みつつも、さらにテクノらしい音を取り入れてオールドロックから離れだした実験作にして傑作。ポップ寄りのヴォーカルもありにけりだが基本的には切れそうな繊細な曲が主体になっていて、ポストロックの道をただひたすらに突き詰めていく様は、実験なのかそれとも計算されつくした「芸術」なのかの判断に迷うほどの完成度。

アルバム全体の印象としては前作よりぼやけた感じになったが、その凝り固まりの無さと言うか音の広がりが「爆発寸前の飽和状態」を保っていて、彼らのバランス感覚にただただ感動するばかり。で、そんな中で突然M4 exit music(for a film)のような曲が来るとドキっとする。"we hope that you choke...that you choke..."って普通に怖ぇしな。そしてM5 let downを境にして全てが断片的で不確定な世界に突入。一曲ごとにコロコロと曲調が変わり、M8 electioneeringでは分かりやすいギターポップをやったかと思えば、M9 climbing the wallsではまた何もかもを放棄した音楽になり(歌詞カードも放棄している)、M10 no surprisesでは前作M4で見せたような空虚な穏やかさを持った曲を披露。もう泣ける。

そしてラスト、M12 the touristでは"hey man slowdown...slowdown..."と、たゆたいながら終わるこのアルバムは間違いなくポストロックの傑作アルバムだと思われる。キャッチーなくせして聴けば聴くほど味が出る(いわゆるスルメ)と言う素晴らしいアルバムでもあるので完成度厨はさっさと買いに行ってください。まず俺か。

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KID A [2000/TOCP65777/#10][HMV]

そしてこのKID A。完全なオルタナティブロックとしての変化を成し遂げた傑作中の傑作(自覚できるほどクソな表現だが気にしない)。リリックは意味を失い(本当は歌詞は載っていないが日本盤には対訳がついている)、ただひたすらに「音の音たる部分」のみに磨きをかけてたどり着いた最果ての地。正直、過去2作から見れば全くの別バンドと言われてもおかしくないような変わり様だが、オルタナティブロックをやってるひとが音の音たる部分を追求すれば電子音楽を取り入れる方へと向かうのはむしろ自明と言う説も。

M1 everything in its right placeから電子音を使いまくったまるで唱えるようなテクノミュージックで始まり、M4 how to disapper completelyでは"I'm not here..."と恒例の切れそうなトムボイスで歌い続け、M5 treefingersはあろう事か電子音だけのアンビエントで完全なインスト曲。M8 ideotequeは、俺がサマソニ特番で始めて聴いたRadioheadの曲がコレだったんだが、どうやったらコレほどまでの音楽が作れるのかと冷や汗をかくぐらいトランシーな「静動混在した音の洪水」、凄すぎる。M9 mornign bellではまた無限のリフレインが延々と続き、そしてラストのM10 motion picture soundtrack。ここでこう戻ってくるのか・・・!まぁ基本的には全曲揃っての"KID A"であって「どの曲も」な訳だから「どの曲が」とか抜き出して評価してるのはアレなんだけど。

挑戦と挫折、能動と受動、夢と現実。その全てが一緒くたになったこのアルバムは「究極の1枚」だと言っても過言じゃないと思います。聴いてたら指先が震えてしまうアルバムなんかそうそう出会えるもんじゃない。

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I Might Be Wrong Live Recordings [2001/TOCP65950/#8][HMV]

では浸りましょーか。ひたひた。ポイントはM5 Ideotequeのイントロが聞こえた時の客のえらい嬉しそうな声。いいなあ。

・・・とかlowlifeさんとこのパクリは置いといてこのライブ盤。もはや語るべき言葉なし!な感じがするけどそうも言ってらんないので書いてみる。

曲順はアルバム収録順でもなんでもなくバラバラなので「アルバムではこれ出だしですやん」とかの違和感があるけど、聴き終わった時のアルバムの印象としてはオリジナルアルバムと同じぐらい上手く構成されてる事に驚く(勿論このCDを出すに当たって編集されてるんだろうけど)。あと熱いのはトムの声。CDと殆ど遜色無い声量と音を保てていて、叫んで誤魔化したり途中で声が出なかったりする所が一切無い上で、さらにライブならではの力強さ満点なのが凄い。生で聴きてぇー

あーこんな凄い奴らがサマソニ来てたのかーと今更気付く俺萎え。


Riow Araiリョウ・アライ / Techno, Electronica

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Front Mission Alternative [1997/sscx-10010/#16][F.M.F.F.O]

真っ黒なプラスティックジャケをそのままスキャンしたらこんな感じになりました。

プレイした人なら知ってると思うんですが、このゲームは取説の3ページ目に「本ゲームはハイクオリティな音響効果を実現しております。ヘッドホンを使用してのプレイを推奨します。」とか書いてあるんです。初めてプレイした当時は音響とか全然詳しくなかった(音のもたらすゲーム中の効果を知らなかった)ので「ふーん」程度にしか思ってなかったんですが、今割と性能のいいHPとアンプを使ってプレイしてみたら凄い事になったと言う・・・それはまぁ置いといて。

「ホントにこんな豊富にBGM使われてたっけ?」と疑ってしまう程バリエーションに富んだ楽曲の数々。リョウ・アライと言う人が今までどんな音楽を作ってきた人か全然知らないんだけど、これだけ前衛的で無機質な音楽(つまり俺の好きな音楽)を作れる人が目に付かなかったとは自分のアンテナの低さにションボリする限り。他に何か仕事してはるんかなぁ。

フロントミッションの世界を完全に把握/内包した音楽はフロントミッションの中にあったんだなと切に感じる一枚。コンセプトと完成像を元にこの人を起用したスタッフがすばらしいのか、それとも音と完全に調和が取れるようゲームを設計したのか、気になるところ。何にせよ、ゲームをプレイした人には是非とも聴いて欲しい。