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NINの記念すべき第一作アルバム。俺が最初に聴いた二作の内の一つ。
使用しているシンセが古いからか音一つ一つは古く聴こえるが「音楽」その物は全く劣化の色が無く、デビュー当時から既に自己破壊願望と外向きの攻撃性を兼ね備えたトレント独特のパワーを持っていた事が伺える。彼の足跡・音楽変遷を辿る為にはこのアルバムを聴く事は必須であろうと思うが、聴き始める上でまずこのアルバムから入るのは少々酷と言うかパワフルすぎて聴き難いかも知れない。
例外的にこのアルバムにはリミックス盤が存在しない。(US盤のみ発売されている「Head Like A Hole」がリミックス盤にあたると言う話を読んだ事があるが、俺は国内盤しか手元にないのでどうとも言えない。因みにこの文では基本的に日本盤を元に解説する)
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日本で言うところの「ミニアルバム」にあたるEp盤(レコード時代の「extended play」の名残)としてリリースされた本作は、6曲+2曲(これがまた捻くれていて、M7〜M97までは無音状態が続き、M98・M99とまた曲が入っている)構成になっている。三面デジパック仕様と言うのも珍しいが、実はコレを作るにあたってレーベルから「ジャケに金がかかりすぎる、勘弁してくれ」と言われたが、これじゃないとダメだと強行したと言う逸話が残っていたり。
本作はトレントの持つ対外攻撃性のみを前面に押し過ぎた感があるがそれがまた他の作品には無い暴走性を生み出していて、聴いているとそのキャッチーさの中にある力に驚かされる。片方では短く思えるが対になるEpと併せて一つの作品として聴いた時、あぁこれで完成してるんだなぁと感嘆。
Pig Studioで撮影されたGave UpのPVは秀逸。
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元Epが「壊す」のなら対になるEpは「直す」と、タイトルだけ見れば安直に思えるが実際に音を聴くととんでもない。原曲が何だったかは分かるんだけど、どこをどうリミックスすればこんな物になるんだと言いたくなる曲ばかり。再生スタートして流れるTr.1、続いて流れるTr.2が余りに暴れまくっていて、ただただ流されるままに聴いている事しかできない。
しかしこのBroken/FixedもPHMよりキャッチーだからと言ってNIN入門として聴くにはまだ難しい部分があると思う。特にこのFixedはM1 gave up(remixed by coil with danny hyde)は一見キャッチーだが続くM2 wish(remixed by j.g. thirlwell)以降はノイズとがなりの連続で、NINがどんな音楽なのかを大まかに分かっている人でもその解釈に苦しむ。ハッキリ言って、M6 screaming slaveは聴く人によっては倒れそうな音楽だし。と言う訳で初心者はこれも避けた方が良い。
取り合えず、このアルバムを聴きながら電車に乗ると全編に渡って周囲に物凄く迷惑がかかるので要注意。
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コレ。傑作。
一曲目からいきなり「Mr.Self Destruct」なんてタイトルでノイジーな叫びと物凄い内容の歌詞が飛び出し、M2 piggy・M3 heresy・M4 March of the Pigsと、自己嫌悪を吐き出すかの如き音楽でありながらも、どこかキャッチーで変化に富んだ曲が続く。さらにM6 Ruiner・M7 The Becomingなどのメタルな曲があり、壮大な寂寥感を漂わせるインスト曲のM11 A Warm Place、そしてすべてに絶望したM14 The Downward Spiralへと続き、最後はライブのラストで必ず歌われる名曲中の名曲「Hurt」で終わる。
NINを聴き始めるのなら(今のNINとは少し違うが)このアルバムから入って間違いではないだろう。大体こんな感じの音楽を作る人だと言うのを端的に表した作品が傑作なんだから、正直もう何も言う事は無いような気がするけど。因みにM5 closerは別ヴァージョンだがブラピとMフリーマン主演のサイコ映画「Seven」のOPクレジットで使われた。
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その傑作「TDS」と対になる形で作られたリミックスアルバムがこれ。元アルバムが「螺旋状に落ちて行く」のなら、リミックス盤は「更に螺旋状に落ちて行く」と言うネガティブさ。そして前回に引き続き完璧なまでに「混ざり合わない同一のアルバム」になっている。
NINが作る全てのリミックス盤に当てはまる事なんだが、もう通常のオルタナティヴロックと言う括りには分類できないように思う。このFDTSも音を切り取って聴けばロックと言えなくも無いけど、アルバム単位でみた時とてもじゃないけど「ロック」とは思えなくて、様々なジャンルの音楽が持つ特徴や技術をごちゃ混ぜにして一つの作品に仕立てたと言う感じ。テクノ畑出身のリミキサーを使っているのもその理由の一つだろう。
今NINのリミックス盤は三作出ているが、おそらくこれが最も優れたリミックス盤だと思う。hurtのライブ音源や、Ruinerのエレクトロニカ解釈、アルバム上の最終トラックTr10までも自己破壊願望で埋めてしまうその構成。TDSと併せて聴くと興奮度倍増で、TDS&FDTSはNINの中で最も取っ付き易いアルバムのセットだと言える。
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このシングルは6曲構成だが全て「the perfect drug」のリミックスになっている。順にリミキサーを挙げると、M1 Meat Beat Manifesto、M2 Plug、M3 NIN自身のリミックス、M4 Spacetime Continume、M5 The Orb、M6 originalとなっていて、これは最早ロックではなくむしろテクノ盤に近い。
この曲はNINにしてはキャッチーさが前面に主張され過ぎているかなり異質な存在で、PVも従来のNINのような破滅的・おどろおどろしい物ではなくどちらかと言うとスマートな映像になっていて、一体どうしたんだ?と言えばそれはトレント自身がスランプだった時期に頑張って作ったからに他ならない訳で。トレント自身のオリジナル曲と言う観点から言えばある意味でこれは失敗作にあたるのだと思う。
だが、本人によりリミックスされたM3を聴けばこれはまさしくNINの音楽に聴こえるのも確かであって、じゃあなんでM6のオリジナル(嫌いではなくむしろ好きだが)がどうしてあそこまで聴き易さを前面に押し出したキャッチーな「トレントらしくない」音楽になっているのかが疑問・・・
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初の二枚組みアルバム。TDSがリリースされたのが94年だからブランクは実に5年。その5年を経て届けられた音が、今までのアルバムでは垣間見る事しか出来なかったトレントの激しい他者否定の裏にあった繊細さを真っ正面に持ってきたこのアルバムだった。
普通、アーティストがその方向性を変えた時に納得出来てもその変化に戸惑わない事は無いのだが、不思議とNINがこう言う変化の仕方をしても俺は気持ち悪さを感じなかった。恐らくそれは彼の音楽の中に繊細さが元からあった要素だからなんだと思うが、表面の音楽性だけを見れば大変化してる訳で、それを大変化と感じさせないで内包して「味」にしまうアーティストってのはNINぐらいじゃないかなぁと。で、変化したと書いた通りピアノメインの曲が目立ちノイジーな曲が減っているので、所謂HRを毛嫌いする人にはこのアルバムから入ってもらったら良いと思う。
Disc1では先行シングルで発売された「世界の終わる」M2 the day the world went awayや、その荒涼とした歌詞とPVが痛烈なM5 We're in this together、壮大さを感じさせつつも未完のまま終わってしまうM12 the great below。そしてDisc2へと続き、極めてロックらしいM3 where is everybody・M6 starfuckers inc.(そこから急にM7 complicationへ転じる流れも)や、M10 underneath it allからM11 ripe(with decay)にかけての終末的な終わり方。そのどれもが今までのNINの音楽の行き着く先であって、荒野のようであり細く積み上がった石のようでもある一つの芸術作品になっている。
因みにstarfuckers inc.のPVには暫く不仲が報じられていたトレントの弟子(?)であるMarilyn Mansonが出演しているので機会があれば見てみるのも良いだろう。演出がニクイ。
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初の日本公演も無事終了した2000年の末にリリースされたThe Fragileのリミックス盤。このアルバム発売にあたって、リミックス盤(このTFAの事)とライブ盤CD(後に出た「and all that could have been」)、さらにはライブDVD(CDと同タイトル)も同時発売になる予定だったのだが、例によって例の如くにライブ盤が延期になりファンが揃ってションボリな事になったりしたのは余談。
内容はと言うと、大胆に曲を分解・再構成しているもののアルバム全体を通して「凄すぎて笑いが止まらない」程ではなかったと言うか、それは全体的に聴き易過ぎる(変化が少ない)と言うのが原因の一つとしてあると思う。M5 the frail(version)からM6 starfuckers.inc(version)へと繋がる流れと、M7 Where Is Everybody(version)とM10 Starfuckers.inc(version)のそれぞれは素晴らしいが、アルバム自体の纏まりとその終わり方はThe Fragileで聴かせてくれたような余韻・虚無感の残る物ではなかったのが非常に惜しい印象を与えているのだろう。The Fragileがあれほど会心の出来だったんだからリミックスも頑張って欲しかった、と言うかリミックスも2枚組みで出す位の心意気で全然構わないのになぁ。
因みにこのアルバムの発売日が00/11/22なのだが、12月頭の修学旅行中にこのアルバムの事を思い出し(NINを知ってる友人と)帰りのバスで大騒ぎして旅行から帰るなりその足でCD屋に買いに行ったのを覚えている。
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ライブ盤にあるまじき高音質録音で音が無茶苦茶クリアなのが凄い!普通のスタジオ録りCDと大差ない音質のこのアルバムは間違いなく名ライブ盤として歴史に残るものなんだけども・・・コレを聴くとまたライブに行かなかった事で自責の念に潰されるからsage。ああああああなんでPS2発売日買いを選んじまったんだろうなあああああああ
初回盤(もしくは海外のLtd盤)に付いているDisc2 Stillは未発表曲も含めた9曲収録のアンプラグド盤。ライブ盤はライブの熱狂を感じさせるアルバムで良いんだけど、このStillはNINがアンプラグドでどれぐらい素晴らしい歌を聴かせてくれるかが詰め込んである傑作。この一枚だけで売りに出しても良いぐらいの物なんで、これからCDを買おうと言う人は二枚組みの物をお探し下さい。
あー、ライブ行けば良かったなぁ・・・
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