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映画『雨月物語』大映,1953年
監督:溝口健二/撮影:宮川一夫
脚本:川口松太郎,依田義賢
出演:京マチ子,森雅之,田中絹代
ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞 |
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溝口監督は名女優の田中絹代とともに西鶴作品も映画化して,世界的な賞賛を得た.ここでも田中の名演はいうにおよばず、森も京もただただすばらしい.
そして理想的なカメラマンの宮川一夫を起用して,圧倒的な美しさと幻想性を獲得した.黒沢明の《羅生門》で,宮川が太陽をレンズにとらえるタブーをおかし,撮影の常識をくつがえしたことは有名である.その独創的でクリエイティブな撮影技術は,ここでもいかんなく発揮されている.主人公たちを乗せた小舟が琵琶湖を行く名シーンは,巨大なガレージのような空間にプールをしつらえて撮影された.ライティングによる巧みな陰影とスモークが効果的に使われ,『雨月物語』の不吉で妖しい雰囲気がみごとに表現された.
日本映画の古典というにふさわしい名作である. |
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江戸時代の心理サスペンス 人と死者と妖怪がまじわる異形の世界 |
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江戸時代中期(18世紀)に活躍した,上田秋成の怪異小説『雨月物語』の世界にわけいる.日本や中国・朝鮮の文学や神話,伝説,伝承,説話,演劇など,さまざまな素材を駆使して創りあげた再創造文学の本質をあきらかにし,現代小説では不可能な技巧を駆使して,読者を不安におとしいれる心理サスペンスの醍醐味を味わってもらいます. |
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講義内容
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講義では,古典文法も古典の知識もいっさい必要ありません.
上田秋成は文学作品や芸術作品にかぎらず,過去や同時代につくられたさまざまな表現体(テクスト)をいったん解体したうえでみずからの作品にとりこみ,言葉の多義性を駆使しながら綿密な意図のもとに再構築をおこなった,希代の表現者です.日本・中国の文学や学問,文化,歴史などが作品のなかにどのようにとり入れられ,それが再構築されることでどのような命が吹きこまれることになったか,表現手法ともども作品の実態をさぐります.
『雨月物語』の世界
1. 導入
2. 概説:江戸時代の小説
3. 上田秋成の生きた時代
4. 怪異小説の流行
5. 『雨月物語』とは?
6-14. 『雨月物語』各編の解説と講読
6. 白峯(しらみね)
7. 菊花の約(きっかのちぎり)
8. 浅茅が宿(あさじがやど)
9. 夢応の鯉魚(むおうのりぎょ)
10. 仏法僧(ぶっぽうそう)
11. 吉備津の釜(きびつのかま)
12. 蛇性の婬(じゃせいのいん)
13. 青頭巾(あおずきん)
14. 貧福論(ひんぷくろん)
15. 映画『雨月物語』鑑賞とまとめ
授業形態:講義形式
テキスト:森田喜郎『校註 雨月物語』笠間書院.随時,プリントも配布します.
参考文献:新編日本古典文学全集48『英草紙 西山物語 雨月物語 春雨物語』小学館.
元田與市『雨月物語の探求』翰林書房.
元田與市『秋成綺想 十八世紀知識人の浪漫と現実』双文社出版.
大学の学術情報館に蔵書があります.
評価方法:期末レポート.毎回,授業に出席し,講義内容を理解しておくことが基本.
開講場所:書写キャンパス/7号館/7101教室
開講日時:月曜日/5限目(16:20-17:50) |