08/05/01 早速タイトル変更。
キミとチューハイ(仮)に。
中二病をメインにしてたら、過去の恥ずかしい記憶が蘇りすぎて。
中二病はできるだけさらりと流します。
今回、久々に登場人物の名前を考えました。
お酒に合いそうな名前で、出席番号が近そうな。
「かったりー」
俺は、ため息まじりにぼやいてから、
バスのステップをトントンとリズムよく、できるだけかろやかに降りた。
停留所にいた大人たちがちらりと俺を見て、また視線をそらす。
そんな状況がここちよくて、俺はもう一度ため息をつく。
「あーあ、かったりー」
バスの停留所をあとにし、病院への道を歩く。
俺の姿はまわりにどう映っただろうか。
俺のことを「身体能力が高い人間」と見ているかもしれない。
「何か特殊な背景を持った人間」と見ているかもしれない。
もちろん、俺は特別に身のこなしがよいわけでもないし、
ましてや正義のために闇と戦う特殊機関の一員でもない。
でも、そう思われたらかっこいいじゃないか。
15分ほど歩くと、病院についた。
俺はすました顔で自動ドアを開ける。
ほんとうは一人で来院することは初めてだ。
それでも、できるだけさっそうとクールによそおった。
診察券を受付に渡し、待合室に座る。
足を組んで、腕も組んでみる。
サングラスでもかけてみたい気分だ。
さすがにサングラスは持っていなかったので、
俺は代わりにかばんからMDウォークマンを取り出した。
イヤホンを耳に入れて、電源を押す。
流れるのはSUM41のパンクメタル。
英語の歌詞はまったく理解できないのだが、
彼らの魂は理解できている。
映画「ゴジラ」の挿入歌に使用されたから、
にわかファンも多いだろうが、
俺はそんなにわかファンとは違う。
話題性など関係なしに、彼らの音楽性が好きなのだ。
曲が盛り上がるにつれ、周囲の雑音が消えていく。
次第に、俺は陶酔感に包まれていった。
J-POPしか聞かないヤツらとは違って、洋楽を楽しむ俺。
自分に酔っていたのかもしれない。
俺の意識は、やがてこの腐った世の中から飛び出していた。
しかし、それは一瞬だった。
突然、俺は後ろから肩をポンと叩かれたからだ。
俺の意識は再びゴミの世界に戻される。
俺は振り返った。
そこに立っていたのは、同級生の遠藤
真理(えんどう まり)。
なんでこんなところに同級生がいるんだ?
彼女はニコと笑うと、口をパクパクと動かした。
おそらく何か話しかけてきたんだろうけれど、
MDのボリュームが大きすぎて聞き取れなかったのだ。
俺は片耳のイヤホンだけを外す。
「えんどう豆かよ」
「え・ん・ど・う・ま・り!」
「で、なに?」
「病院でウォークマンはやめておいたほうがいいと思うよ?」
「うるさいな。携帯電話じゃないんだからいいだろ」
「電子機器だからーとか、
心臓ペースメーカーがーとか言うつもりはないけどね。
たださ、キミの名前さっきから呼ばれてるよ」
「マジ?」
「本気と書いてマージ。
いとーさーん。いとーハムさーん。一診にお入りくださーいってさ」
「イサオ!」
俺は短く自分の名前を叫ぶと、
急いでウォークマンをかばんに押しこみ、第一診察室へと向かった。
視界のはしっこで、えんどう豆がチロと舌を出したのが見えた。
08/05/03
導入が終わらないな。あと二人は登場人物欲しいし。
ゆるーい感じのお話になりそう。
やまなし、おちなし、いみなし、みたいな。
診察室に入る。
医者が「伊東 公(いとう いさお)君だね?」とたずねる。
俺は「はい」と返事する。
診察室はもっと消毒液のニオイがするのかと思っていたけど、
実際はそうでもなくて拍子抜けした。
小学校の保健室のほうが緊張したくらいだ。
背もたれのない黒い丸イスに座らされると、
俺は言われるがままに上半身の服を脱いだ。
ひんやりとした聴診器を胸に当てられる。
そのあと、隣の処置室で心電図をとられて、数分で俺は釈放された。
「異常ないね」と医者は言った。
当然だ。どこも具合悪いところなんてないのだから。
先週学校を休んだら、たまたま内科健診の日だったようで、
こうしてわざわざ診療所に健康診断を受けにきただけなのだ。
健康診断なんてどうでもいいと思ったのだが、
高校受験とか推薦とかの話になってくると必要らしい。
くだらない大人が決めたくだらないルールだな、と思った。
診察を受けながら、俺は遠藤のことを考えていた。
アイツはどうして病院に来たんだろう。
待合室に戻ると、遠藤は俺がさっき座っていた場所に座っていた。
彼女はすぐに俺を見つけて、手を振ってくる。
俺はとりあえず、彼女の前まで歩く。
「おかえり」
「ただいま」
「あ、つめるから、ここ座りなよ」
彼女はそう言いながら おしりをちょっと浮かせて、はしに寄った。
遠藤の隣に、俺が座れるくらいのスペースができる。
いや、でも。俺はドキリとした。
これはちょっと近すぎるだろ。
「いいよ、俺。立ってるの好きだし」
ここで喜んで座ったら、軟派なヤツだと思われる気がした。
硬派はかっこよくて、軟派はかっこわるい。
そういうもんだ。
すると、遠藤は「ちぇー」と舌打ちした。
「残念、ひっかからなかったかー」
「ひっかかるって、何が?」
「ハムの詰め合わせ完成!って言うつもりだったのに」
「くっだらねー」
「あはは、確かに」
遠藤は俺のことをハムと呼ぶ。
「公」という字を縦に読むと「ハム」となるだからだそうだ。
苗字も「伊東」だし、なおさらだった。
「ハムはどうして病院に?」
「ああ、俺は」
素直に答えようとして、少しためらった。
瞬時にいろいろな設定が脳裏をかすめたからだ。
定期的に薬剤処方を受けないと、最終兵器になってしまう設定。
本当は大人だけど、黒の組織のせいで子供に変えられ、
元の姿に戻る方法を探している設定。
そこまで考えて、俺は首をぶんぶん振った。
おもしろいけれど、無理だ。
だって、遠藤は俺が先週内科健診を休んだことを
当然知ってるわけなんだから。
「俺は内科健診を受けに来ただけだよ」
「あ、ハム、内科健診なんだ」
「うざったいよな、ホント」
「先週休んだよね?」
「知ってるだろ。お前の席は俺の後ろなんだから」
「うん、知ってた」
遠藤の反応がちょっとおかしいような気がした。
なんだろう、この違和感。
まあ、きっとたいしたことないよ。
俺は、たいして気にとめず、今度は遠藤に質問を返した。
「えんどう豆は?」
「私?」
「健診受けたばっかりだろ」
「女の子にそんなこと聞くかなー?」
「え、そういう事情なら聞かないけど」
「そういう事情ってことにしといて」
「女の子ってガラじゃ全然ねーのにな」
「だって」
「うん?」
「だって、もしホントのこと言ったら」
ドクン。
俺の心臓が脈うった。
遠藤は立ち上がる。
俺の目の前を通り過ぎる。
すれ違う瞬間、遠藤は俺の耳もとにささやく。
「私は、キミを殺さなければならない」
そう言うと、そのまますたすたと会計をすまし出て行ってしまった。
08/05/05
難波にできたフリーフォール、ヤバフォ。
GW限定の500円だから乗ってみました。
予想以上に楽しかった。
もう2往復くらいしてくれたらいいのに。
次の日、教室につくと親友の「仮分数」が黒板をきれいに掃除していた。
「あれ、かーびー日直?」
「お前がな」
そう言って、「仮分数」は黒板消しを俺に向かって投げた。
ゆるやかなパスだったので、俺はかんたんにキャッチできた。
が、黒板消しというのは、ちょっとの衝撃で爆発するのだ。
バフッと黒板消しからチョークの粉が飛び散る。
「ちょっと!」「ハム!」「サイテー!」と、
席の前の方に陣取っていた女子数人組が、かん高い声をあげる。
俺は「ワリー」と言ってから、ジロリと親友を睨んだ。
親友は悪びれる様子もなく「どんまい」とか言っている。
「何がどんまいだよ。お前のせいだろ」
そこでキンコンカンコーンとお決まりのチャイムがなった。
担任のゴリが入ってくる。俺たちはあわてて席につく。
教室がシーンと静かになる。
前の席の仮分数が少し振り返って、
「ハム、号令」と小さく俺にささやいた。
そうだ、今日は俺が日直なんだ。
「きりーつ、礼!」
「おはようございます」と全員がそろえて挨拶する。
そして俺の「着席」という言葉でみんなが座る。
なんだか自分が偉くなったみたいだ。
ゴリは教卓をちらりと見て、
「おーい、日直! 出席簿がないぞー」と叫んだ。
やべ、持ってくんの忘れた。
「先生、あります」
俺の後ろの席がガタと音をならした。
遠藤 真理だった。
私は、キミを殺さなければならない。
昨日の記憶がよみがえる。
遠藤はすーっと前に進んで、教卓に出席簿を置いた。
「出席簿をおうちに持って帰るつもりだったかー?」と
ゴリは面白くもない冗談をとばす。
クラスの男子が数人ニヤニヤ笑う。
「学級日誌といっしょに机の中に入れてしまって」
遠藤は、返す必要もないのにゴリにきちんと返事する。
こちらには、クラスの女子が数人クスクス笑う。
ホント、くだらないクラスだ。
08/05/06
井口がどうしてかーびーなのかは、またいつかの話。
中二病と思ってたけど、ただの五月病かもしれない私。
五月だなあ。
仕事辞めたいなあ。
遠藤が席に戻ってくるとき、俺は小さく「さんきゅ」と言った。
遠藤はにこりと笑って「うぇるかむ」と答えた。
それは1年の英語の教科書でトムとメアリーが交わした会話だった。
あの頃の授業は楽しかった。
今はどうだ。現在完了?
なんなんだよその時制。
それよりももっと日常の英会話を教えてほしいよ。
1時間目の英語の授業を受けながら、そんなことを考えていた。
あっという間に終わった。
終わったあともぼーっとしていたら、頭をはたかれた。
見上げると、仮分数だった。
「こら日直。さぼってないで仕事しろ」
「かーびー。俺の代わりに黒板消しておいてくれー」
「なんで俺が。俺は日直なんてもう飽きた」
仮分数の本名は井口 裕也(いぐち ひろや)。
だから、出席番号は俺の一つ前になる。
出席番号2番が井口。3番が伊東。4番が遠藤。
今日の日直は3番4番だから、もちろん昨日の日直は1番2番。
つまり、仮分数は昨日が日直だったわけだ。
また、1学期はしばらく出席番号順で席が決まる。
だから、仮分数の後ろが俺で、俺の後ろが遠藤だった。
「なんでも吸いこめるんだろー。チョークの粉も吸いこめよー」
「吸い込めるか!」
「吸湿性ばつぐんだろー?」
「少ない日でも不安だ!」
「今のボケ、詳しく説明してもらえますか、解説の井口さん」
仮分数は顔が真っ赤になった。
勝った。俺は思った。
そんな子供じみたやりとりをしていたら、
遠藤が黒板を消し始めていた。
俺はゆでたこになった仮分数を捨て置き、あわてて黒板に向かった。
「黒板は俺が消すよ」
「へいき。それより、ごめんね」
「ごめんって何が?」
「井口くんから聞いてないの?」
「少ない日でも不安ってことしか」
「なーに、それ」
俺は親指でクイと仮分数をさした。
彼は真っ赤になってうずくまったままだった。
遠藤はきょとんとした面持ちで、
ちょっと首をかしげてからため息をついた。
「よく分かんないけど、くだらなさそうな話だね」
「純情なんだよ、かーびーは」
「男子ってさ」
「うん?」
「どうしてエッチな本とかビデオの数で、
自分が大人だってアピールするんだろ」
「は?」
「よっぽど子供じゃない?」
「え、えっと……。
18歳未満じゃ買えないものを持ってるってことで、
自分は大人だ!ってアピールしてるじゃないかな」
なにまじめに答えてるんだ俺。
人間、言い訳がましくなると口数がふえる。
つまり俺にも思い当たるフシがあったわけで……。
「ハムも持ってるの?」
「何を?」
「エッチな本」
「アホか!」
俺は、遠藤の持っている黒板消しを奪うと、
一気に黒板を消した。
「おー、さっすが男子」
「あ・の・な」
「私じゃ、黒板のてっぺんの文字、消せないもん」
俺は恥ずかしくて、逃げるように席にもどった。
仮分数と同じような真っ赤な顔になっていたと思う。
そう、俺も負けたのだ。
えんどう豆め。
ほんとうはもっと聞きたいことがあったのに。
昨日の「キミを殺さなければならない」発言もそうだけど、
今度はなにが「ごめんね」なんだよ。
08/05/09
夜遅かったのだけど、ROUND1のスポッチャに行ってきました。
なんかもう、体中がガタガタです。
バレーボールはさすがに圧勝でしたけれど、
テニスとかボロボロでした。
中学校のときはテニス部だったんだけどなあ。
でも、3時間遊んで1500円でとってもお得でした。
ゲームセンターもお金いらないし、
カラオケとかもできるらしい。
でも、タオル持っていくべきですね。
汗拭きタオル。
2時間目、数学。
現在完了より因数分解の方が使い道がないと感じた。
分解されるxやyの気持ちも考えてやってくれ。
俺はペンをくるくる回す奥義をマスターするために、
とにかくペンを回し続けた。
5分ほど練習して、そのあいだにペンは7回も床に落ちた。
まずい。
俺の第六感がそうささやく。
これ以上、机の下にペンを落としたら、
さすがに教師に怒られる。
俺はペン回しをあきらめた。
目に前の仮分数は、熱心にノートを取っている。
アイツはホント勉強熱心なのだ。
だから「仮分数」というあだ名をつけられたのだが。
手持ち無沙汰な俺は、ルーズリーフに
「私は、キミを殺さなければならない」と書いてみた。
書いて、恥ずかしくなってすぐ消しゴムで消した。
もしホントのこと言ったら、か。
遠藤はどうして病院に来たんだろう。
まさかほんとうに最終兵器とか?
薬を飲まないと、鋼鉄の翼が背中から生えるとか?
俺は問題を整理するために、
ルーズリーフにさらさらとまとめてみた。
問題:女子が病院にいく理由を列挙しなさい。
・カゼをひいた。
・花粉症がとまらない。
・夜ねむれない。
思いつくのはこんなものか。
どれも俺が殺されるには不適当な理由だ。
蚊がぱちんと叩かれる理由のほうがずっとまっとうだ。
俺は、そのルーズリーフをファイルからはずし、
4つ折りにすると前の席に投げた。
仮分数にも考えてもらおうと思ったのだ。
数十秒後、仮分数がさっと後ろに紙をまわした。
俺は瞬間的にそれを受け取る。
あたかもリレーのバトンのように。
大丈夫、教師には見られていない。
ルーズリーフには、さっそく補足が書かれていた。
・頭痛、腹痛、発熱、咳、喉の痛み、食欲低下、嘔気。
(カゼの諸症状というべきか?)
・生理がこない。
どうやら仮分数は、さっきの生理用品ネタを
そうとう悔やんでるらしかった。
自虐的なネタが、それを切実にものがたっていた。
だけど、生理がこないのは、遠藤が言いたくない理由になりえる。
中学2年で生理がこないのは……あれ、遅いのか?
うーん、ぜんぜんわからん。
でも、もしふだんは生理がきていて、
それが突然今月こなかったのだとしたら。
それがどういう意味なのかくらいは俺でも分かる。
そこまで考えて、俺は頭をぶんぶん振った。
ありえん。遠藤にかぎって。
なんていうか、あってほしくなかった。
つーか、そういうのは産婦人科だろ!
俺が昨日いった診療所は内科専門だ。
だから、たぶんだけど、違う。
俺は、さっそく返事を書いた。
仮分数を軌道修正する目的で、少し説明も加える。
・貧血とか女子がなりやすそうな内科のびょーきで。
・女子は便秘になりやすい?
そして、また前に投げる。
仮分数はすぐに返事を書いて、後ろにまわす。
どんなことが書いてあるかな、と楽しみに開いてみる。
しかし、そこには新しい項目はつけたされていなかった。
ただ、問題文に矢印がひっぱられていた。
問題:女子が病院にいく理由を列挙しなさい。
↑
遠藤のことか?
俺は、それ以上書けなかった。
くしゃりと丸めて、机の中につっこんだ。
だって、図星だったから。
なんで、なんだよ。
ホント、かっこわりー。
08/05/16
「相棒」とか、「魔法にかけられて」とか、
なかなか映画を見る機会が多いのだけれど。
なんかすっきりしないんです。
「椿三十郎」と「未来予想図」は良かったと思ったのに。
何が違うんだろう。
期待しすぎるのがいけないのかな。

宮部さんから頂いたリラックマです。
私はクマグッズかなり持ってます。
ファイルとかマグカップとか含めだしたら、10個以上は確実。
またUFOキャッチャーでクマ狩りします。

続いて、せいな様に頂いた黒ミネルウァ。
紫陽花しようか!の裏設定の話をしていたら、
その設定を具現化してくださいました!
その気にさえなれば、
モリアとミネルウァが仲良くなる前の話とか、
どうやって仲良くなったのかとか、
そういうサイドストーリーもできなくはないですね。
本編中では、一人で泣いてたミネルウァをモリアが慰めたことで、
二人は仲良しになったと説明していた気がします。
数学の授業が終わった。
俺は、仮分数に見透かされたことで、
彼のすぐ後ろの席にいるのが居心地悪かった。
だからすぐに黒板を消しに行こうとした。
黒板消しを手に取ると、
「まだ消すなー!」と各地でブーイングが起こった。
ふだんノートなんて取りそうにもないやつまでブーブー言っている。
中間1週間前で、なんちゃって勉強モードになってるんだろう。
仕方ない、ちょっと待つか。
すると、仮分数と視線が合う。
仮分数は、くいくいと手まねきした。
俺は、足取りが少し重かったが、開き直って明るくふるまった。
「四字熟語で例えるなら以心伝心ってやつ?」
「ハム、昨日病院行ったよな」
「ああ、そこで偶然遠藤にも会ったよ」
「な、えんどう豆ー」と、
俺は、二つ後ろの席でノートを取っている遠藤に話を振った。
「え、なんの話?」と遠藤は返す。
なんだ、聞いてなかったのか。
すると、仮分数がまた、くいくいと手まねきした。
さっき俺を呼んだように、遠藤を手まねいた。
おいおい、遠藤なんか呼んでどうするつもりだよ。
遠藤は、ノートを取る手をとめ、シャープペンシルを置いた。
そして素直にこっちまで来る。
なにか悪いことをしてこれから怒られる子供みたいに、素直で。
あまりに素直すぎて、なんだか意外だった。
「井口くん、どこまで話したの?」
「まだ何も言ってない」
二人の会話で、ピンとくるものがあった。
さっき黒板を消してるときに、
遠藤が「ごめんね」と言っていたことに違いない。
おれはにやりと笑った。
「おい、遠藤、なにやらかしたんだよ」
ごめんね、と言っていたことから、
俺は遠藤がなにか失敗をしたのだと思った。
遠藤が口を開きかけた。
しかし、仮分数がすぐに口をはさむ。
「遠藤は悪くない」
俺は、なぜかいらだった。
遠藤をかばう仮分数に?
そうじゃない、仮分数はいいヤツだ。
ただ自分だけがひどく悪者に見えてしまって、それがイヤだったんだ。
「それじゃあ、なんなんだよ!」
思っていた以上に荒々しい声が口から出た。
そんなつもりじゃなかったのに。
遠藤はビクリと肩をふるわせた。
08/05/20
哲学をやってみよう。
というわけで、やってみます。
まずは、何か哲学的な文章を考えてみます。
「フライパンとフランスパンは硬いところがそっくり」
ついうっかり思いついただけなのですが、
なかなか哲学的な気がします。
そんな苺狩りをしました。
先週末。
「ごめんね」
「ごめん」
俺と遠藤のセリフがかぶる。
そして、沈黙。
仮分数がため息をつく。
「お前らが昨日仲良く病院に行ったのをクラスの誰かが見たらしいんだ」
「仲良くって、待合室でちょっと会話しただけだよ」
「それだけか?」
「それだけって……」
私は、キミを殺さなければならない。
あのときの言葉がよみがえった。
いや、関係ないよ、あんなの。
「それだけだよ、なあえんどう豆」
遠藤はこくりとうなずく。
それを見て仮分数は「それなら言うが」と前置きしてから、
言葉を続けた。
「お前ら、付き合ってるってウワサだ」
「はあ?」
俺は意味が分からなかった。
待合室でちょっと会話しただけで異性交際?
キスで妊娠と同じくらいぶっとんでる。
俺はおどけたが、仮分数はまじめな顔つきのままだ。
「そうなのか?」
正直なところ、悪い気はしなかった。
だが、硬派がかっこいいという基本スタンスに反していた。
女子とチャラチャラ付き合うなんて軟派な行為だ。
そんなのかっこわるい。
「そんなわけないだろ、なあ……」
なあ、えんどう豆。と言うつもりで、俺は遠藤を見た。
しかし、遠藤は、さっきと違ってうなずかなかった。
「男子にとって」
遠藤は口をひらいた。
俺は怖かった。
なぜか、怖かった。
「女子とウワサになるのは、そんなにイヤなことなの?」
イヤじゃないよ。
だけど、かっこわるいよ。
だからイヤだと思わないと。
かっこいいってそういうことだろ。
「え……」
頭の中でいろいろなものがぐるぐるまわる。
なにがかっこいい?
なにがかっこわるい?
なにがスキ? なにがイヤ?
「えんどう豆だって、イヤだろ。俺とウワサになるなんて」
ひきょうもの!
俺は今、最低にかっこわるいことをした。
責任を全部遠藤に転嫁したのだ。
「あ、そろそろ黒板消さないと」
そして俺はその場から逃げた。
俺の、ひきょうもの……。
08/05/28
13年ぶりになるのかな。
ディズニーランドに行ってきました。
あ、それとシーにも。こちらは初めてです。
13年ぶりだったから、あまり覚えてないのだけれど、
カリブの海賊はあきらかに変わってました。
昔はジャック・スパロウなんていなかったもん。
ファスト・パスなんていう愉快なシステムができたんですね。
150分待ちのスプラッシュマウンテンを
5分くらいで乗れたときには、優越感を味わえました。
ただ、あれは。
予想以上に濡れる。
あんなに濡れたかなー、記憶はあてになりません。
マスカラとかひどいことになるので要注意です。
他にも築地で海鮮丼食べたり、
秋葉原でクマ狩りしたり、
痴愚神以上に痴愚でなければ買えないようなものを買ったり、
それを人にあげたり、なんか面白かったです。
新大阪駅で、エスカレータ右側に人が並んでるのを見て、
帰ってきたなーと思いました。
それと、もう一つの話題。
紫陽花しようか!についてです。
ブログで感想とか批評とか書いてくれてる人を結構見かけます。
気が付いたのものは、できるだけコメント残すようにしてます。
これがよく考えてくれてるんですよね。
すごく深くテーマを考えてくださったり、
自分で問題提起してそれに対する答えを導いたり。
全体的にユカ好きが目立つかな。
ファンクションキー9を気に入ってくれる感じ。
ネットラジオで実況プレイしてくれる猛者までいまして、
その声がなかなかセクシーだったので、
ボイスつけても面白そうだなーと。
フルボイスにしたら200MB超えそうなので、しませんけれどね。
三時間目が始まった。
未然、連用、終止、連体、仮定、命令。
いったい、なんの呪文なんだろう。
俺のノートには「サ行変格活用」と書かれただけだった。
どうにも授業に集中できない。
ま、あとで仮分数にノートをコピらせてもらえば平気なわけで。
俺は、うしろの席の遠藤が気になって仕方がなかった。
今、遠藤は何をしている?
まじめに授業を受けている?
それとも俺のことを気にしてる?
「女子とウワサになるのは、そんなにイヤなことなの?」
裏を返せば、遠藤は男子とウワサになってもイヤじゃない?
その男子が俺であっても?
俺はどうなんだ。
女子とウワサになることは、イヤか?
そんなの、その女子による。
今回、その女子とは?
俺は机の中から丸められた紙を取り出し、ゆっくり広げた。
問題:女子が病院にいく理由を列挙しなさい。
↑
遠藤のことか?
女子とウワサになる。女子イコール遠藤。遠藤とウワサになる。
俺の頭の中では、数学の方程式が組みあがっていた。
遠藤とウワサになる。
かっこいい? かっこわるい?
わかんねーよ、俺には。
「どうしたらいい?」
授業が終わると同時に、俺は仮分数に相談した。
「気にしなきゃいいだろ」
「そうは言っても、気になるよ」
「根も葉もないウワサなんだから、75日で自然消滅するさ」
「75日は長すぎだろ。1学期中そんなウワサが続くんだぞ」
「そんなにイヤか?」
仮分数の質問に、俺はすぐ返事できなかった。
そうなんだ。結局、この問題にぶちあたるんだ。
そう、さっきの文法の時間になんども考えたこの問題に。
イヤなのか?
正直、遠藤とだったらそんなにイヤでもない。
だけど、かっこわるい……だろ?
だから、こう言うしかなかった。
「イヤに決まってるだろ」
ガタ!
後ろの席で、イスが床をこする大きな音がした。
遠藤だった。
遠藤は、そのままこちらに近づいてくる。
「なんの話?」
「ハムが遠藤に言いたいことあるってさ」
仮分数、てめー!
しかし、俺はもう引き下がれなくなっていた。
もう言うしかなかった。
「女っ気ないし、胸ないし、えんどう豆だし、
ノート取るの遅いし、出席簿持って帰ろうとするし!」
「私だって、ハムとなんか!
かっこつけだし、
授業中窓の外ばっか見てるし、ノート取らないし、
エッチな本持ってるし、日直のこと忘れてるし!」
「そうやってすぐにムキになるし!」
「女の子に思いやりがないし!」
「はい、ストーップ」
仮分数がレフェリー役を買ってでる。
そして、にらみあう俺と遠藤の間に入る。
「ウワサを一瞬で消すいい方法があるぞ」
「教えて!」
俺と遠藤が同時に仮分数にせまる。
そしてあわてて一歩しりぞく。
仮分数はそんな俺たちを見てニッと笑う。
「お前ら、ほんとうに付き合ったらいい」
|