03/11/12

 告白された。
 それも中学生に。

 それは、俺が時々行く食べ物屋さんで働いてるコなんだけど、
 それなりに会話とかもして、携帯のメアド交換とかもして、
 でもただそれだけで、それ以上の関係になるとは思っていなかったし、
 またそれを望んでもいなかった。
 俺は彼女のことを普通に妹のように思っていたし、
 向こうも俺のことを慕ってくれていたが、
 それは兄のように思ってくれてるんだ、と思ってた。

 だけど、ある日突然、
 普遍不変だと信じていた日常を破壊するメールが来た。

 「ヒカルさんから見て、私ってお子様ですか?」

 一瞬、嫌な予感がした。
 俺の取り越し苦労なら、それでいい。
 しかし、これは、この質問に対する答えは、
 今後両者の関係に、大きな嵐を呼ぶ気配を感じたのだ。
 ブラジルの蝶の羽ばたきが、テキサスに嵐を呼ぶだろうか。
 バタフライ効果、とは全然違うのだが、
 トルネードに発展するかもしれない小さな違和感を確かに感じた。
 第一、彼女が俺を「名」で呼ぶことは初めてだったのだ。

 俺は返答に窮した。
 正直言って、彼女をお子様だと思っている自分がいる。
 それは事実だ。
 しかし、そう答えることは、彼女を傷つけるような気がした。
 これを機会に、連絡が取れなくなってしまうような気がした。
 それは嫌だった。
 血こそ繋がらぬとはいえ、兄妹でいたかった。
 だからこう答えた。

 「お子サマだと思うよ。
  でも、俺は自分自身のこともお子サマだと思ってる。
  お子サマであることがデメリットであるとは思ってない。
  だから、このままでいいんだ」

 恋愛というものを意識して欲しくなかった。
 いつまでも、お互いお子様でいいと思った。
 近寄らず、離れず、このままヤマアラシが体を温めあうように。

 しかし、彼女の返信はこうだった。

 「ちょっと言いにくいんですけど…。
  この前言いましたよね、好きな人ができたって」

 聞いていた。
 その時、俺は「頑張れよ」と答えていた。
 「何かあったら、力になる」とも答えていた。

 ひたすらに、俺の勘違いであってくれ、と願った。

 「あのですね…。笑い飛ばさないで下さいね。
  一目惚れって言うか…。一年前から…。
  気になってたんです。おかしいですよね。
  6歳も年上やのにね…。どうしたらいいのか分からんくて」

 テキサスにトルネードが吹き荒れる。
 全身の無数の傷から、止め処なく血を流す二匹のヤマアラシが見える。
 もう元には戻れない。

 とにかく、「1日考えさせて」と答えて、考える時間を作った。
 しかし、時間があっても解決策へ辿りつけるのだろうか。
 そもそも、解決策はあるのか?
 どの選択肢を選んでも、バッドエンドしか待っていないのではないか?
 付き合う?
 付き合わない?
 そんなの決まってる。付き合えない。
 そもそも選択肢を選べる状況でさえないのだ。
 では、どうしてそう答えられない。
 …臆病なんだ。
 昔、バレンタインの時にチョコレートと共に告白されたことがあったが、
 相手のことが正直気に入らなかったので、チョコレートを返した。
 そしたら泣かれた。
 そして嫌われた。
 周りの女子も一緒になって、俺を非難した。
 悲しかった。

 よく考えた。
 普段、使わない部分の脳を一生懸命働かせた。
 そして、こう結論付けた。
 最も誤解なく、終局に辿りつくには、やはり会うしかない。
 電話?メール?それでは駄目だ。
 映画にでも誘おう。
 その後一緒にご飯でも食べて、そこでじっくり話し合おう。
 俺の気持ち。
 キミへの気持ち。
 そして、どうなるかは俺には分からない。
 でも、その結果を受け入れよう。


 相手が思春期だと、気を使うよ、ホント。
 いきなり刺されても嫌だし…ってこれはGPMのやりすぎか。