転換する健康の質
キュアからケアへ…ということなんでしょうね

健康とは何だろうか?
病気がなければ健康だという単純で分かりやすい定義だが、最近では通用しにくくなっている。
「亭主元気で留守がいい」という時に、妻が夫に期待する元気度は江戸時代と現代ではかなり違うはずだ。

労働のかたち、生活のスタイル、個人の意識、医療のレベルなど、
時代と共に健康の質はがらりと変わる。

それを健康転換と名付けて解析し、将来の医療を検討する研究が最近盛んだ。

第一の転換は明治維新から1900年にかけて。
西洋医学の導入・確立などによって、飢饉・疫病から蔓延性感染症に病気が変わった。

次に1960年頃、出生率・死亡率が大幅にダウンする一方で、
経済の高度成長と共に、成人病などの慢性疾病が増え始めた。
そして医療に最新技術が投入され始めた。

これが第二の転換で、1980年頃からは低成長、高齢化、痴呆などの老人病が問題となってきた。
先進国共通の第三の転換である。

第二の転換までは、人間を機械に例えて、
その故障を切ったり貼ったりつないだりする修理が「医術」の中核だった。
しかし、人間が機械と全く異なる原理で制御されている複雑にして奥深い存在であることに気付いた。
当然、医療の技術や手法を開発する際のモデルも、機械的なものでは間に合わなくなった。

変転限りない一見不規則に振動する現象。
それを上手く説明するために、「カオス」や「ゆらぎ」理論を医学にも取り込むべきかどうかは分からないが。

日本人の平均寿命は生物学的に限界に近いと言われている。
第三の転換医療は、さらに寿命を延ばすことではなく、生きている間の充実度が問題になる。
いわゆる「クオリティー・オブ・ライフ(QOL)」である。

医療の目的をQOLに転換するには、
本来極めて主観的であるQOLをある程度客観的に評価する仕組みが必要となろう。

 

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