読書を広げる
西 條 陽 之

 光村図書「本は友達」では6年間を通して様々な観点から読書生活を豊かにしていくこと、5年生では作家に着目して読みを広げることを狙いとしている。本校では毎日十分間の朝読書の時間を設けている。子どもたちは「ひみつシリーズ」や恋愛ケータイ小説、ゲームやアニメのノベライズ化されたものを好んで読む傾向があり、本を手に取る理由としては、作品の内容、表紙、本の厚みから選ぶことが多い。作家に着目して読書を展開していく経験はほとんどないということだった。文学作品や作家との出会いを通して、新たな読書生活を展開することで思考力や読み解く力を高め、人生を豊かにするような本との出会いに繋げたいと考えた。

 とは言え、一人一人の読書スピードにも偏りがあり、選書の好みもバラバラである。作家を決めて複数の本を読み、作家性や描かれるテーマを見出すには膨大な時間が必要である。そこで、単元が始まる三週間前から着目する作家を同じくする「読書サークル」を設定した。同じ作品や作家について語り合う仲間がいることで協働的に学ぶ必然性を持たせた。また、ICT活用として、読書記録をブックリストとして残したり、サークルごとのページを使って情報を共有できるようにした。

 作品や作家について情報を共有することで自分の考えを広げる姿が見られた。特にマッピングを使って「テーマ」や「印象に残った出来事」、「主人公」などの観点に分けて書き込むことで整理しやすくなったようだ。しかしながら、一人一台端末を活用する中で、書き込むことと話し合うことのバランスが取りにくいと感じた。また、作家の魅力や作家性について何を書くべきか見出せないようであった。インターネットを活用して、作品の傾向や来歴を見つけていくことはできたが、それは本のそで(カバーの折り返し部分)にも書いてある。知恵袋の意見を参考にする子もおり、それでは他人の意見を鵜呑みにしているのと同じである。便利の中にも、情報を的確に読み取る力が必要だと猛省した。今回得た、作家に着目するという読書の広がりをこれからも意識できるよう働きかけ、ブックリストを綴っていくことが大切だと感じる。
(大津市立小野小)