スイミーが主役だと思う理由
川 端 大 介

 「小学校でなぜ、物語文を教えるのですか。」このように問われたら何と答えるだろう。今の私は「人間が幸せに生きていくために必要な心を耕す視点を増やすため。」と答える。
 感染症対策が進む中、人間を脅かす脅威が「感染症」ではなく「人」と伝えるメディアが多い。私も同感である。国中の人たちが幸せに生きるために、多くの議論がなされている。考え方が多様な中、「自分の考えを聴いてもらえる」という事が、重要ではないかと考えるようになった。
 学級にも通じることがある。「自分の考えを友だち聴いてもらうこと」は嬉しい事だ。多様な解釈が生まれた2年生の物語教材『スイミー』の学習の様子を伝える。

 指導計画は、全7時間。第2時での「登場人物、主役の検討」をした時の事。まず、登場人物とは何かをきちんと教えないといけない。登場人物とは、「お話の中で、話したり、動いたり、考えたりする人や動物や物。お話を劇にした時に、役が必要になる。」このように押さえた。「小さな魚のきょうだいたち」「まぐろ」「くらげ」「こんぶ」「わかめ」「うなぎ」等、様々な登場人物が出た。「お話しているからスイミーは登場人物です。」等、登場人物の概念をきちんと踏まえて、意見を出していた。そして、主役の検討に入る。主役は学級三十三人全員が「スイミー」だと答えた。そして、こう問うた。「なぜ、スイミーが主役だと言えるのですか。」この問いに対して児童は様々な解釈を出し合った。  「お話の題名がスイミーだからです。」「お話の初めから終わりまで出てくるからです。」「セリフが一番多いからです。」のように、スイミーが主役だと思う理由は千差万別であった。

 スイミーの主役が「スイミー」であることは、何となく分かるだろう。そこで大切なのは児童一人ひとりの理由の違いに目を向けることだ。解釈の理由を交流することで、「そうか、そんな考えもあるんだ。」や「わたしとこの部分は同じ考えだなぁ。」、「考えが全然ちがうなぁ。」と考えの違いを知ることができる。そうやって、考えを交流できる毎日から、「考えの違い」を大切にすることができる児童が育つ。「自分の考えを聴いてもらえて、学校って楽しいなぁ。」につながり、笑顔の児童が増える  「手段と目的を明確にしなさい。」と先輩教員に何度も教えていただいた。教えたいのは、「スイミー」ではなく、幸せに生きていくために必要な汎用的な力である。

 スイミーの学習が終わった後、ある児童が私の所に寄ってきて、「先生、ドラえもんのお話の主役ってドラえもんかのびたのどちらだろう。」と言った。国語の学習で扱うことは難しいが、クラスで話し合うと、白熱するであろう内容であった。
 これからの世の中、「正解」はないと言われている。「最適解」や「納得解」を見つけていく事が大切だ。子どもたちには「みんなの考えが違う事って楽しい。」という実感を持たせ続けることが大切だと感じた。
(守山市立立入が丘小)