<授業参観で学ぶ> 授業の基礎基本=「めあて」を持つこと
森 邦 博

 新型コロナ感染防止のため変則時間割を実施しているある日、3年生の国語の授業参観をさせていただいた。物語を読む学習の発展として自分のお話を書く学習。
「お話を読むときに大事にしたことは何でしたか。」
と発問。子どもたちは学習を振り返って「登場人物、場所や時間、その様子、5W1Hを大切に読む」と四つの条件を発表した。それを受けて、先生が、
「四つに気をつけて書いてきました。聞いてください。」
と、自作の作文を読んだ後で、「今皆さんが言ってくれた四つの条件は満足できていましたか、どうですか?」と尋ねる。
 子どもからは、確かに四つの条件が入っていてよいと評価する声や、感想も付け加えてくれる声も。先生も「有難う」の返事。こんな雰囲気で原稿罫紙の配布が始まる。

 書く活動の場面では、「どう書くの、どれだけ書くの。」「何を書くの?分からないよ。」という声が聞かれる教室も少なくないのだが、この教室では、「めあて」がはっきりとしているためだろう、一人一人自分なりの構想を書き込む姿が見られたのだった。書け書けと言うけど、何がよいのか、書くめあてと評価規準がぼんやりとしているのとは大違いだ。
 机間を回り読ませてもらうことにした。すると、「読んでください」と言うように用紙をずらして見せてくれる子、「続きはこうなるの」と説明してくれる子も。
 「ワクワクするね。」「なるほど続きが楽しみだなあ。」と私、「ありがとう。」と子ども、こんな楽しいやりとりが続く中、短縮授業はあっという間にチャイム。
 「残念だけど、読み合いの時間がなくなってしまいました。」と先生。でも、子どもたちは終わりの挨拶の後にも作文を読み合い、感想を話し合っている。その輪は教室の中に何組も見られた。

 そして今日の5年生。メダカを育てるの理科の授業を、途中からだが参観させていただいた。
 黒板には雌雄のメダカの形の違いを図で比較してあった。先生が黒板に正面から見た雌雄二匹のメダカを書いて、
「メダカが受精する時、どんなことが起こるか、図をノートに書きましょう。」
と指示。子どもたちは戸惑い気味で挙手もない。それを確かめた先生は、メダカの受精の場面の動画を二回再生。
 その後、二人が黒板にノートに書いた図を描いて発表した。二人の図は少し違う。
「もう一度確かめましょう。」
と再度再生。今度は「めあて」がはっきりとしていて、子どもの達は先ほどより集中している。すると、雄メダカが背びれと腹びれを雌メダカに巻き付けていることが見つかってきた。同じ映像でもめあてを持って見ると見え方が違ってくることを子どもたちは体験的に学んでいるように思えた。
 そして、先生は、
「雄のひれは雌よりも大きいという雌雄のメダカの違いは、子孫を増やすための大切な特徴だったのですね。」
と解説された。雌雄の形の違いと受精行動のひれの動きとはバラバラな知識でなく意味を持ってつながっていると納得している子どもの表情が見られた。

 3年生と5年生の学ぶ姿から改めて教えられたと思った。「授業の基礎の一つには何ができる・分かるようになればよいのか「めあて」をはっきり持たせることがある」、そのことを。 (京都女子大学・同附属小講師