巻頭言
He can play the piano well.
忠 谷 真 有 子

 「子どもたちの目線が変わったように思います。」
 5年生の外国語の学習で,自分や他の人ができることやできないことを紹介する学習をしました。
 第1時で教職員が上手にできることを映像で紹介しました。1人目は副校長先生。スポーツがお得意なのですが披露してくださったのは折り紙です。とても繊細な作品に驚きの声があがりました。2人目は2年生の時の担任。バスケのスリーポイントシュートを華麗にきめてくださいます。先生が得意なことを知っていたので「やっぱり!」ととても嬉しそうでした。3人目は今年度異動されてきた調理員さん。この方は音楽大学のピアノ科を卒業されているのでピアノで今大人気のアニメの曲を弾いていただきました。

 ビデオを見せる前に写真を見せたときには誰も調理員さんを知らず,その上でできることを予想しました。「もちろん料理はお得意だと思う。」「サッカーかなぁ。」「ダンスができそう。」わくわくしながら映像を見て,みんな心底びっくり。「素敵!」「どうして音楽の道ではなく調理のお仕事をされているのか知りたい。」「お話してみたい。」と子どもたちから声が湧き上がりました。そして,その日の給食の返却の時間に作業場におられる調理員さんに向かって「ピアノ聞きました!」「お上手ですね!また聞かせてください。」などと口々に声をかけていました。調理員さんとお話ししたくて給食室前で待っていたり朝の出勤時に声をかけたりする児童も増えました。

 そこで冒頭の言葉です。調理員さんとお話をしたときにおっしゃっていました。授業の後,子どもたちの目線が自分をとらえていると思うようになったということで,私にとってはとても嬉しいことでした。外国語の学習は,もちろん外国語を学ぶということが大切です。しかし私は学習を通して,学校生活が彩豊かなものになってほしいと思っています。友だちや教職員と外国語でやりとりする中で,知らなかった面に気付きもっと知りたい・関わってみたいと思うこと。これまで見えていた世界より少し視界が広がったり見え方が変わったりすること。

 後日談ですが「他の調理員さんのことも知りたいです。」という声があがりました。子どもたちの世界は学習を通して日々広がりつつあります。
(京都市立御所南小学校)