巻頭言
介護への想い
土 肥 正 典

 私の介護職歴は十五年以上になりますが、一度も他業種に転職したいと考えた事はありません。母親の『世の為人の為になる仕事を。』という遺言と、自分の将来を熟考して介護福祉業界へ転身した決意によるものです。幾つかの老人福祉施設で介護職員や介護リーダーを経験したのち、現在は通所介護施設(デイサービス)で生活相談員として業務に従事しておりますが、一貫してお伝え出来る事は【自分らしく出来る事をやっていく=人生において重要である】という事です。老人ホームを終の棲家として懸命に生きている人、訪問介護や医療等のサービスを受けながら在宅生活の継続を望んでいる人、デイサービスに通いながら社会との関わりを持ち少しでも質の高い生活を目標にしている人等、現代の日本には沢山の高齢者の方々が暮らしています。そこで、どういった関わりを持つべきなのかを考えた時に、決して独りで悩まずに家族が、介護職に従事している者が、行政が一体となってワンチームとなって私たちの人生における大先輩である高齢者の方々の支えとなれる様、ほんの僅かな優しさが有れば良いのです。それが結集すれば大きな力となるのです。これを経験したことで一生涯、介護福祉業界に尽力していくという覚悟に繋がり、自分らしく生きるという人生観の変化が生まれました。今後は更に、介護の問題は誰もが避けて通る事のない社会になっていくでしょう。そして、多かれ少なかれ誰もが将来の介護について不安な気持ちを抱えていくのではないでしょうか。そんな中で仕事としての介護と家族の介護を両立させていかなければならない場面に遭遇した時、先ずは立ち止まりましょう。大いに悩みましょう。特に、自宅での介護は狭い世界になってしまいがちです。その中でストレスに感じてしまう事が出てきた時、周囲に助けを求め、理解が有れば少しでも明るい未来を感じられると、私は信じています。

最後に、少子高齢化や核家族化が加速するこのご時世、介護離職者は増加の一途を辿っています。企業としてだけではなく、社会全体において介護離職者をいかにへらしていくのか、介護離職の防止対策が重要な課題となってきています。長く働き続ける事の出来る環境作りを、家族の介護が閉鎖的にならぬ様、社会全体で考えて明るい未来へと環境整備を進めていきましょう。
(ヒューマンライフケア豊中の湯 生活相談員)