子どもの「問い」から発信する授業づくりに向けて
谷 口 映 介

 「読むこと」の学習では、子ども達が文章を読んで疑問に思ったこと(=「問い」)を取り上げながら読み深めていく活動が広く用いられている。こうした「問い」作りを設定した従来の授業実践をみてみると、必ずしも学習者自らの「問い」を追究するのではなく、教師が「〇〇の場面での(人物の)気持ちは?」というものに集約してしまっているという指摘も多く見られる。そこで、決まった型に当てはめた「問い」作りではなく、子ども達の「問い」を生かした授業づくりに向けて、まずは学習者の「問い」の生み出し方を改善することにした。

◎「いざないの言葉」
 物語の読みにおいては、学習者自らが「文章にはたらきかける」ことを大切にしたい。そこで、まずは文章に対する素直な反応を引き出すことが大切になるだろう。その為に、「問い」作りにおける教師の言葉を変えることにした。文章に誘うという意味で「いざないの言葉」と名付けた。例えば、次のような言葉かけである。
 〇じっくり考えてみたい。くわしく知りたいな。
 〇何かおかしいな。
 〇自分の経験したことと違うけれど、ほんとなのかな。
 〇どうして、(人物は)こんなことを言ったのだろう。
 〇どうして、(人物は)こんなことをしたのだろう。
 〇ここは、人物に質問してみたい。
 〇他の友達の意見を聞いてみたい
 〇人物と人物は、どんな関係なのだろう。どんな人なのかな。
 〇これって、自分の経験したあのことかな。
 〇前に読んだあの本(物語)を思い出すなあ。
 〇この部分は、なるほどと思ったよ。
 〇この点(部分)は何か変だなあ。

 これら全てを毎回投げかける必要はないが、「なぜ…なのだろう。」「(この場面の〇〇は)、どんな気持ちなのだろう。」といった特定の型よりは、素直で多様な「問い」を引き出せるのではないかと考えた。実際、子ども達からは、たくさんの「問い」が出された。例えば、『ごんぎつね』(第4学年光村図書)では、「このお話はめでたい(=ごんと兵十は分かり合えた)のかな、悲しい(=分かり合えていない)のかな。」という物語の本質を突く「問い」も学習者自らから生み出された。詳細はここでは割愛するが、教師からの発問としての「問い」ではなく、自らが生み出し、解き明かしたいものとして選択した「問い」であるが故に、それぞれの立場で叙述から根拠を導き出そうとする姿が見られた。今後も、主体的な学びの一歩として教師の言葉を磨いてきたい。
(滋賀大教育学部附属小)