「わたしの読み」を伝える〜「海の命」
西 村 嘉 人

 6年担任から「海の命」の授業を依頼された。若い先生で初めての6年担任だったので、「あなたがする方が…」と話していたのだが、「先生の授業を見る機会はそう多くない…」との説得に負けて、卒業前の貴重な国語の授業時間を担当することになった。

 小さな学校なので、子どもたちとは顔なじみ。多少の緊張感はあるものの、笑顔で授業を始めた。
「学習のねらいは、『わたしの考えをまとめ、伝え合おう』です。『わたしの考え』をまとめる手がかりは、物語を読んで気になったことや表現です。わたしはこう考えたんだけど、みんなの考えを聞きたい、と伝えていきます。」
と学習の大きなねらいを話した後、読む活動を始めた。
 気になる内容や気になる表現を感じるようになるまで読むことを続ける。途中、小グループで話す時間を取ったり、黒板に自由に気になることを書かせたりして、子どもたちの読みの成長を探った。

 子どもたちから挙がってきた内容は、
・「海に帰る」とはどういうことなのか。
・与吉じいさの「千びきに一ぴき」は、太一に何を伝えようとしているのか。
・太一は、クエを殺さなかったことをどう思っているのか。
などである。

 一人読みの時間を1時間設定した後、全員で話し合う時間を取った。交流のポイントは、「自分からつながる 深めながら話を続ける」とした。要求が難しかったからか、子どもたちの口は重かった。
「ぼくは『千びきに一ぴき…』のところで魚たちは海のめぐみだし、そんなに多くとっても食べれないから『千びきに一ぴき…』といってるのかと思って、太一のおとうの言葉とつながるなあと考えました。」
 1人がこのような発言をしても、すぐに続かない。しばらくの沈黙があって次の子どもが発言していく。重苦しい雰囲気のなか、1時間が終わった。しかし、子どもの学習のふり返りには、
「どの部分も『海に感謝』というような部分が共通するのですが、一つだけ太一の「おとう、ここにおられたのですか」という部分と共通しているのかしていないのかイマイチ分からなかったです。なので、次回はそこから考えていきたいです。」
と、1時間考え続けた様子が分かるものが多くあった。
 授業を参観をしていた担任が、子どもたちの真剣な学びの表情を喜んでくれたのが何よりである。
(彦根市立稲枝西小)